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【コミカラ二巻出たよ】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第二十章

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全部天然です

「だぁっはぁっ! くやじい!」


「……リアーネさん荒れてるね」


 リアーネが思い出したように大きな声を出してミュコが苦笑いを浮かべる。

 突然リアーネが荒れたりするのには理由がある。


 それは武闘大会でリアーネが負けたからだった。

 大人部門も子供部門と同じく、予選を突破した子供たちをいくつかの組に分けてトーナメントを行った。


 リアーネは半予選のトーナメントを勝ち抜いた。

 それは当然である。


 しかし本戦のトーナメントでリアーネは負けてしまった。

 準決勝まで勝ったのだが、そこで戦うことになった女性が強かったのだ。


 リアーネよりも一回りぐらい年上の女性は、細身の木剣を用いてリアーネを圧倒した。

 女性の中でもリアーネは強い方だと思っていたが、対戦相手の女性はさらに強かったのである。


 最終的にはそのまま優勝してしまったぐらいに強い。

 ちゃんとジケも応援していた。


「多分のあの人には……勝つのは難しいな」


 何者なのかは全然知らない。

 ただリアーネが何回戦っても勝つのは難しいだろうとジケは見ていた。


「あの人、何者なんだろうな」


 ひゎっとしたら武闘大会の優勝者二人を騎士として抱えることになる、なんてことも考えていた。

 実際そう甘くはなかったのだけど、リアーネに勝った人は本当に強かった。


 過去の記憶を辿ってみてもそんなに強い女性に心当たりはない。

 時々戦争もあった。


 強い人は名前が出ていてもおかしくないはずなのに、全く聞いた覚えがないのである。

 リアーネも勝てないことを理解しているのだろう。


 負けた悔しさだけでなく、頭の中で何回も戦って勝てない悔しさが時々噴き出す。


「うぅ〜!」


 リアーネはうなっている。


「どうにかならないの?」


 かなりよくやった方だと思うけど、悔しいものは悔しいのだ。

 ジケだってライナスに負けていたら、今頃悔しさでリアーネと同じようになっていたかもしれない。


 ただ急に大きな声を出されるとびっくりしてしまうとミュコは困り顔だ。


「……まあちょっと慰めてやるか」


 最終的に負けた悔しさは自分で乗り越えねばならない。

 だけど周りが驚くような悔しがり方は、ちょっとどうにかしてもらわねばならない。


「リアーネ」


「……なに?」


 ジケはリアーネの目の前に立って声をかける。

 悔しさに飲まれていたリアーネはハッとしたようにジケのことを見る。


「膝をついて」


「えっ? ……分かった」


「あっ、そうじゃなくて片膝でいいよ」


 リアーネは素直にジケの命令を聞く。

 ただ膝をついてほしいというのは両膝をつくのではなく、カッコよく片膝をつけてほしかったのだ。


 なんだよという顔をしながらもリアーネが片膝を床についてジケのことを軽く見上げる。

 背の高いリアーネも膝をつけば少しジケの方が高い。


「……よくやったな。三位でもすごいぞ」


 スッと手を伸ばしたジケはリアーネの頭に手を乗せた。

 準決勝で負けたリアーネは三位決定戦には勝ったので、三位にはなった。


 色々な人が参加した武闘大会での三位は素晴らしい結果である。

 トーナメントの当たり方によっては準優勝ぐらいまではいけた可能性があるものの、結果としては十分だ。


 頑張ったのだから褒める。

 自分の騎士としてそこまでの結果を残したのは誇らしいと頭を撫でてやる。


 悔しがり方もそうだし、リアーネには子供っぽいところがあるとジケは感じていた。

 なら褒める時もストレートの方がいいだろう。


「ぴおっ……」


 急に頭を撫でられてリアーネは目を丸くした。

 そしてみるみると顔が赤くなる。


「無事に試合を終えてくれた。これだけでも俺は嬉しいよ。それだけじゃなくてあそこまで勝ち上がったんだから、リアーネはすごいよ」


 言い聞かせるような落ち着いた口調。


「リアーネにとっては悔しい結果かもしれないしれないけど、俺はすごいリアーネのことを誇らしく思うよ」


 ニッコリと笑顔を浮かべる。


「ん……あ……うん。ありがと……」


 たとえ優勝できずともジケが文句を言うことがないと分かっている。

 でもこんなふうに褒められるとも思ってなかった。


 乙女な顔をしているとミュコはリアーネのことを見ている。


「なんか欲しいものあったりするか?」


 三位でも賞金なんかもらえたりする。

 ただ雇い主としていいところまで行ったリアーネを労うのも当然のことだ。


「お金でもいいし、休みとか欲しいっていうならそれでもいいし……」


「いらねぇ……」


「えっ?」


 ジケもちょっとしたお金はある。

 リアーネに欲しいものがあるなら大抵のものは用意してあげられる。


 だけどリアーネは耳を赤くしたまま、少し困ったような笑顔を浮かべた。

 予想外の答えにジケは驚く。


「もう……いっぱいもらったからな」


 消え入りそうな声で答えたリアーネは恥ずかしそうに下を向く。

 もう悔しさなんて感じていない。


 ジケに褒められて、撫でられていると胸に渦巻いていた気持ちが溶けるようになくなってしまった。

 まるで孤児院のシスターに褒められた時のような嬉しい気持ちになった。


 ただそれだけではなく、もっと何か胸が熱くなるようなものもある。


「そうだよな……お前が見てくれていたなら、それでいいよな」


 もう少しだけ。

 そんな気持ちでリアーネは少し頭を前に出す。


「むむむむ……」


 どうにかしろと言ったのはミュコである。

 しかしそんな方法でどうにかしろと言ったわけではなく、ジケがまた女性をすけこましていると今度はミュコが悔しい思いをしていたのだった。

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