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【第十九章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第十九章

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フィオス、信者を獲得する2

「どうやって……いや、どこでをこれを……」


「……たまたま拾って」


「たまたま?」


 パルンサンの宝物庫から見つけたというと話は少しややこしくなってしまう。

 ジケは笑いながら少し曖昧に誤魔化す。


「……まさか、こちらのスライムは聖杯が生み出した聖水を?」


「多分……」


 セクメルの中でフィオスと聖杯と呪いを解く力が繋がった。

 原理まで理解したわけではないが、フィオスが聖水を飲んだから呪いを解けるようになったのだと考えたのである。


「神のスライム……」


 セクメルは膝をつき、涙を流す。

 ジケはセクメルの行動にギョッとしてしまうが、止めるような行動でもない。


 別にフィオスはクロイーネと違って神の力を持つ魔獣ではない。

 ただのスライムである。


 たまたま聖杯の聖水を飲み干して、聖水もどきを複製できるようになったに過ぎない。


「まあ、多少の神々しさはあるかな」


 聖杯に収まるフィオスは、なんだか偉そうにも見える。

 どう思うのかも個人の自由なので止めはしないが、どことなくフィオスも誇らしげにしている感じがあるような、ないような。


 そんなことをしている間に、聖杯の中に並々とフィオスポーションが注がれた。

 ジケとしては頭から被せるつもりだったけど、エニがポーションなんだから飲めばいいんじゃないかというのでそうすることにした。


「この量……飲めます?」


「全部は必要ないんじゃないかな……?」


 聖杯いっぱいのポーションはジケでも多い。

 どのぐらいの量が必要か分からないので、できるだけたくさん用意してもらったがかなりの量になってしまった。


「とりあえず飲めるだけ飲んでみます」


 もしこの呪いが解けるなら腹が張り裂けようと全部飲むとセクメルは覚悟を決めていた。


「その……口をつけて飲んでもいいのですか?」


「ん? ああ、構わない……まあ、いいでしょ。気になるなら何かコップに移しましょうか」


「そうしていただけると助かります」


「流石にこれは飲みにくいよ、ジケ」


 今のところ聖杯疑いがかなり濃い。

 聖杯だとして、そんなものに口をつけていいのかとセクメルは困惑していた。


 ジケとしては別にいいかなと思うけど、セクメルはちょっとためらっているようだ。

 中身いっぱいの聖杯は重たいし、それならとコップに移して飲むことにする。


「これで……」


 セクメルはコップに移したポーションを見つめる。

 最初は安いポーションを真似たものだった。


 だからポーションと同じく緑色をしていたものだが、今フィオスが出したポーションはうっすらと白く濁っている。

 飲むという決意は揺らがないのだけど、スライムが出した汁だと考えるとほんの少しためらってしまう側面は否めない。


「それでは……いただきます!」


 もしかしたらコップ一杯では終わらない可能性もある。

 ここでためらっている余裕なんか自分にはないのだと、セクメルはフィオスポーションを一気に飲み干した。


「……どう、だ?」


 飲んですぐの変化はない。

 一杯じゃダメなのか、あるいはフィオスポーションの効果がないのか、飲んじゃダメだったのか。


「おっ?」


 色々な考えが頭を巡り始めた瞬間だった。

 セクメルに変化が現れた。


 少しだけセクメルの顔が若くなった。

 枯れてしまいそうだった肌に少し水分が戻る。


「……コップ一杯じゃダメみたいだな」


 起きた変化は小さい。

 それで止まってしまったので、全身の呪いを解くにはコップ一杯じゃ足りないのだ。


「まあ、たくさんあるんで!」


「うっ……」


 そこからはセクメルとフィオスポーションの戦いだった。

 コップにポーションを入れては口に運ぶ。


 飲むたびにセクメルの体に変化は訪れて、少しずつ若返っていた。

 ただ人間、そんなに水分を飲むことはできない。


 コップ三杯も飲めばお腹いっぱいになってしまう。

 しかしそれでも完全に呪いを解くには至らない。


「うぷ……」


 限界を超えて六杯目を飲み干した。

 セクメルの体は目に見えて若くなった。


 老婆が中年女性になっている。

 このままいけば呪いも解けるだろうと思ったのだけど、七杯目を前にしてセクメルはうつろな目をしている。


 そりゃそうだろうなとジケも思ってしまう。

 たとえ味が絶品だとしても六杯も飲めばお腹はチャポチャポになる。


「……やっぱりかけてあげた方がいいんじゃない?」


「今更かよ」


 エニがこっそりとジケに耳打ちする。


「だってこんなことになるって思わなかったんだもん!」


 ちょっと飲めば治るだろうとエニは軽く考えていた。

 だが、コップ一杯で若返るのは数歳といったところで、こんなに何杯も飲まなきゃいけないとは思いもよらなかった。


 これなら最初から聖水をかぶせてあげた方が早かったのかもしれない。


「今からそうしようか」


 セクメルはコップに口をつけて傾けているが、もはやポーズであって一滴も喉を通っていない。


「セクメルさん、やり方変えましょう」


 時間をおくとまた呪いが復活してしまうかもしれない。

 解くなら一気に解いてしまいたい。


 これ以上ポーションを飲むのは諦めて、体にかけることで対処できないか試してみようと思った。

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