表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第十八章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第十九章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1253/1262

武闘大会!4

「そんな相手と戦うなんて……聞いてないよ!」


 周りの子に比べれば獣人の子は強そうだ。

 しかし赤尾祭で優勝候補と言われていたマクベアやトラノスなんかに比べては弱そうである。


 正直、マクベアとの戦いでは真っ当な勝利と言いがたいところもあるけれど、獣人の子からすれば例え手負だったとしでマクベアには勝てる気もしないぐらいだった。

 まさか赤尾祭優勝者とこんなところで当たるとは思っておらず、相手の獣人の子は焦っているのだ。


 勝てるはずがない。

 それに勝てるとしても獣人の友に勝っていいのか、とも考えていた。


 降参したいけど、獣人として戦わずに降参もできないと悩んでいるのが手に取るように分かる顔をしている。


「やろうぜ。勝っても負けても恨みっこなしだ!」


 悩みすぎて若干泣きそうになっている。

 流石に降参しなさいとも言えないので、戦う方向で相手のことを励ます。


 例えジケが獣人にとって大事なお客様だとしても、今は関係ない。

 勝負は勝負である。


「そうだね! やってみればいい! 負けても君に負けたなら言い訳できるもんね!」


 ジケの言葉を聞いて獣人の子が明るい笑顔を浮かべる。

 こうした思考の切り替えの速さは獣人らしさがある。


「勝てばきっと次の赤尾祭では俺が優勝だ!」


 ピッとジケのことを指差して獣人の子は高らかに笑う。

 とりあえず良い子そうではあるとジケは思った。


「いっくぞー!」


「ほっ!」


 獣人の子は迷いも消えたようで、ジケにまっすぐ切り掛かってきた。

 目に迷いはなく、戦いが始まるとコロコロと変わった表情は引き締まったものとなる。


 攻撃もなんとなく剣を習ってきた貴族と違って、獣人の子の一撃は素早く鋭い。

 だがマクベアのようなパワーも、トラノスのようなヒヤリとする鋭さも、アコアンのような素早さもない。


 他の子と比較すると強いが、次の赤尾祭で優勝は難しそうだ。


「でもそういえば……」


 マクベアたちもジケが参加した時が赤尾祭の子供部門最後であった。

 次の年からは大人部門での参加となる。


 優勝候補となる三人が一気に抜けたならチャンスはあるのかもしれないと思った。


「試合中に考え事か!」


「おっと!」


 ジケは獣人の子の剣を防ぐ。

 つい戦いの最中に考え事をしてしまった。


 これじゃあ相手に失礼だなと気を引き締める。


「こっちからもいくぞ!」


 防御ばかりでは相手に勝てない。

 ジケも反撃に出る。


「うっ、くっ!」


 だんだんとジケの攻撃の勢いが増していき、獣人の子は苦しそうな顔をする。

 そのまま気づいたら獣人の子は、防戦を強いられる形になってしまう。


「ぬぐぐ……! このぉ!」


 あまり攻められ慣れてないのか、防御で隙をうかがうようなことをせず獣人の子は無理に状況を打破しようと攻撃を仕掛ける。


「それは流石にダメだぞ!」

 

「あっ! んでっ!?」


 ジケはひょいと獣人の子の攻撃をかわす。

 かわされて無防備になった。


 獣人の子がまずいと思った時には、もうすでにジケは剣を振り下ろしていた。

 ゴンッと頭を殴られて、一瞬の静寂が訪れる。


「はい、そこまで!」


 審判が試合を止める。


「いだい……流石チャンピオン……」


 獣人の子は犬っぽいミミをぺたんとさせて殴られたところをさする。


「君も強かったよ」


「……あなたにそう言ってもらえるなら嬉しいかな」


 獣人の子はニコリと笑う。


「頑張ってね!」


 負けても爽やか。

 いけすかない貴族のガキだと、ジケに対してなんであんなやつが! と恥ずかしげもなく抗議したりする。


 その点あっさりと負けを認めて、相手の次を応援できることの素晴らしさを獣人の子は持っていた。

 貴族の子にも見習ってほしいものだとジケは思う。


「あと一つか」


 ともかくこれで組での優勝は目の前となった。

 ジケがステージから降りることなく、最後の戦いの相手がステージに上がってきた。


「んー……」


 ちょっと強そうだなと相手を見てジケは思った。

 鋭い目つきをした男の子が対戦相手で、子供部門に出場できるギリギリぐらいの年齢だろう。


 背が高くて、体格的にはやや細め。

 体格的なところはいいとして、それよりもまとっている雰囲気がピリッとしている。


 目つきだけではなく、立ち振る舞いに鋭さがある。

 それなりに戦えるような人独特の雰囲気を感じるのだ。


 貴族っぽさはない。

 もしかしたらライナスのような兵士なのかもしれないなとジケは思った。


「よろしくお願いします」


「あっ、よろしくお願いします」


 相手の子が頭を下げる。

 そのまま切り掛かってきそうな雰囲気なのに、丁寧な態度であわててジケも頭を下げ返す。


「準備はいいな? それじゃ試合始め!」


 試合が始まったけれど、互いすぐには動かない。

 それぞれ相手の出方をうかがう。


 無策で突っ込んでこないあたり、やはりできる相手でありそうだ。


「なら……!」


 このまま睨み合っていても試合は進まない。

 相手が動かなそうなので、ジケの方から動き出す。


 ジケが振り下ろした剣を相手の子が防ぎ、反撃に振られた剣をジケが防ぐ。

 そのまま様子見のような攻防が続く。


 お互いに力量を量っているかのようだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ