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【第十九章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第十九章

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武闘大会!3

「どうもー、ピコちゃん特製タミケリ団子だよ〜観戦のお供にいかがですか〜」


「おっ、なんか美味そうだな。一つくれ」


「はい毎度〜!」


 もちろんながらコロシアムにはピコちゃんもいる。

 ただ普通に試合を見ているのではなく、ここでも商売根性をあらわにしていた。


 タミとケリがおやつで作っていた団子が美味しかったピコは、これなら戦いながらも食べられるかもしれないと目をつけていた。

 タミとケリをうまく懐柔して、一緒に団子を作ったピコはコロシアムの観客席を練り歩いて団子を売り飛ばしていた。


 ふと会場を見るとジケがまた一つ勝利を収めていた。

 心の中では応援しているが、今のところ応援するまでもなさそう。


 そんなことより団子を売り上げる方が大事である。


「うんうん。いい感じ」


 減ってきた団子を見て、ピコは笑顔を浮かべる。

 ちょっと疲れたのでこっそり団子を一口。


 口に程よい甘味が広がっていく。


「ジケくんも頑張ってるね。ピコちゃんも頑張るよ〜。ピ、ピ、ピコちゃんだ! ピピピピ、お団子だ!」


「……何してんだろうな」


 わざとだろうか尻尾もミミも丸出しのピコはジケから見てもよく目立っていた。

 つまり目立つためにやってるのだろう。


 何をしても悪いことじゃないならいいかと思いながらステージを降りていく。

 勝ち上がった子たちをみると、やはりジケは年齢的に下の方になる。

 

 そして子供の中で剣を振るといえば、子供同士の遊びの中で棒でも振っていたものが始まりというのも多い。

 ただ子供同士で棒を振って強くなれるかといえば、難しい側面は否めない。

 

 そうなると子供の中で誰が上になるか。

 それは貴族である。

 

 平民や貧民の子供は遊びの中で棒を振り回すぐらいだが、貴族は小さい頃から先生をつける。

 礼儀作法、マナーなんかももちろんであるが、魔法や剣術なんかも学ぶのだ。

 

 そのために貴族の方が平均して剣の実力が高いことになるのだった。

 ついでに貴族の方がいいもの食べるので体格的にもいいとか、子供に限っては貴族の方が有利になる要素が多い。

 

 予選会のやり方の都合上、平民や貧民でも上手くやった子も本戦には出ている。

 けれどもやはり正面から戦うと貴族っぽい子の方が強いことが多かった。


「ははっ! お前みたいなのが相手なら余裕だな!」


 子供部門における年齢ギリギリの子になると、ジケとの体格的な差も大きい。

 貧民、年下、体格不足。


 さらには魔獣スライムで、全く強そうには見えない。

 馬鹿にされることはムカつくが、ジケ自身でも見た目で相手を圧倒できる要素がないのは理解していた。


 だがここまででも何回か勝ち上がってきているのは相手だって同じで、想像力を働かせれば分かるはずなのにジケを見下す奴はなかなかいなくならない。

 他の試合をわざわざ観ている参加者もいないのだろう。


 ジケがちゃんと勝ち上がっていることを理解していないのだ。

 ムカつきはするものの、ジケとしては好都合なところもある。


「ぐほっ!?」


 舐めてかかってきてくれるなら、非常にありがたいのだ。

 どうせ二度と会うこともない相手であるし、舐めてくれている間にさっさと倒してしまう。


 たくさんの人に見られる公式の戦いなので、ジケが卑怯な真似をしたんだと訴えたところでそれが通るはずもない。

 仮に実力を出せずに負けたとしてもそいつが悪いのである。


「あと二つ……結構面倒だな」


 残り二試合勝てば組で優勝というところまできた。

 サクサクと戦いは進んでいって何戦もさせられるので疲れるは疲れる。


 あとちょっとで終わりだなとは思うのだけど、残りの相手も楽には終わらなそうだった。


「次は……獣人族か」


 最初は気づかなかったのだけど、各組に獣人もちょいちょい混じっていた。

 予選から突破したのか知らないが、獣人たちからの刺客ということだろう。


 流石に蓋を開けてみると獣人ばかりというわけにもいかないだろうから、参加している子供たちにも気合が入る。


「ちょっ……えっ!?」


「どうも」


「きけん……いや、えっ……」


 ジケは呼ばれてステージに上がる。

 これまでと違って見下すようなことはなく、気を引き締めなければいけないなと思っていた。


 しかしステージに上がってみると、獣人の子はジケを見て動揺したような顔をしている。

 一瞬棄権するような言葉までチラッと聞こえたような気がする。


 先ほどでは勝ち残ってやると言わんばかりにやる気に満ちた顔をしていた。

 なのに今は明らかに顔色が違う。


 知り合いかなと思って相手の顔を見つめるが、全く記憶にない。

 むしろ見つめるほどに相手は冷や汗をかいて動揺が大きくなってしまう。


「なあ、俺のこと知ってるのか」


「……知らないはずないだろ!」


 どうしても気になって相手に声をかけてみる。


「……俺とお前、知り合いか?」


「いいや違うよ! でも獣人の友……赤尾祭の優勝者なのは俺も知ってるよ!」


「あー、なるほどね」


 ジケが獣人の子を誰か知らなくとも、獣人の子はジケが誰なのか知っている。

 かつてジケは獣人との戦争を止めるために、獣人のところに乗り込んだ。


 話を聞いてもらうために獣人たちの武闘大会のようなものである赤尾祭に参加した。

 そこでジケは子供部門で優勝していたのである。


 ついでに色々な問題を解決して、今や獣人たちの国の王となったナルジオンはジケのことを獣人の友と呼んでいた。

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地元の大会優勝した余所者の本拠地に来ちゃった獣人くん可哀想かわいい
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