表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第十九章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第十九章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1251/1275

武闘大会!2

「ほっ!」


 応援を受けてジケも戦っていた。

 相手の子の構えは比較的まともだ。


 完全な素人ではなく、どこかで剣は習っていそうな雰囲気がある。

 ただそんなに強くはない。


 ジケが攻め立てると、あっという間に構えが崩れて苦しそうな顔をする。

 相手の実力は把握できた。


 勝負を長引かせてイジメるような趣味もない。


「はあっ!」


「ぐほっ!」


 ジケの下から切り上げるフェイントに相手が釣られる。

 剣を下げて防ごうとしたために、頭がガラ空きになった。


 すかさず剣を上げて、落とすように相手の頭を殴りつける。

 するとまだ勝負も決まっていない戦いの最中なのに、相手は剣を手放して頭を押さえてしまった。


「そこまで!」


 審判が試合を止める。


「ジケの勝利!」


 完璧に一撃が決まった。

 実戦なら頭がかち割られているだろう攻撃に、流石にジケの勝ちだった。


 ひとまず一勝。

 この調子でいけばいい感じだろうとジケは思った。


「きゃー! ジケ君強いです!」


「ふふ、余裕だね」


「ん? おっ、リンデランとウルシュナか」


「あっ、こっち気づいてくれましたよ!」


「おーい! 頑張ってねー!」


 ステージを降りるジケは、ふとリンデランとウルシュナが観客席にいることに気づいた。

 手を振るとリンデランもウルシュナも嬉しそうに手を振りかえす。


「他のみんなはいるのかな?」


 ステージを降りてれば別にうるさく言われることはない。

 ジケはキョロキョロと観客席を見回してみる。


 色々な人がいる。

 貴族席はゆとりがあるので人の顔も見やすいけれど、一般観客の席は細々としていて人の顔もチェックしにくい。


「あっ!」


「ジケ兄〜!」


「ジケ兄ちゃん!」


「ジケ〜! 応援してるよー!」


「ジケ頑張る!」


 目を凝らして見ていると観客席に見知った顔を見つけた。

 タミとケリ、加えてミュコにキーケックまでがニコニコしながら手を振っている。


 保護者代わりにニノサンとリアーネがついていて、シェルハタやメリッサなんかもいる。


「みんな応援しに来てくれてるんだな」


 ジケはみんなの方にも手を振りかえす。

 応援してもらえるのは嬉しい。


 ただ、これだけ応援してもらっては簡単には負けられないなと思う。

 四分割された他のステージでは他の組の試合が行われている。


「ライナスも頑張ってんな」


 観客席を見ている間にも試合が進んでいて、たまたまライナスの試合の番となっていた。


「はん! お前平民か? それとも貧民か? 降参するなら今のうちだぞ!」


 ライナスの相手は貴族だった。

 晴れ舞台だからかしっかり貴族ですと言わんばかりの服装をしていて、早速ライナスのことを見下したような発言をしている。


 離れてみているジケもイラッとするような態度なのだから、ライナスもイラッとするのは当然だ。


「お前こそ恥かかないうちに負けを認めるのは今のうちだぞ」


 ライナスは内心ぶっ飛ばしてやると思いながらも笑顔を浮かべて答える。


「はぁ? お前ごときが何言ってんだよ?」


「こいつ……!」


 ライナスも兵士としてちゃんとした給料もらって、身なりもそれなりに綺麗になった。

 いかにも貧民のクソガキという感じだったが、少しはまともになって見た目で馬鹿に減ることはかなり減っていた。


 しかしまだ何もしていない見た目だけでこんなに見下されたのは久しぶりだと、ライナスは思った。

 完全にブチギレであるが、ここで怒った態度を見せれば相手の挑発に乗ってしまうことになる。


 あくまでも冷静を装いながらライナスは審判にさっさと始めてくれという視線を送る。


「おしゃべりはそこまでにして試合を始めるぞ」


「ふっ、僕の力を見せつけて、王女様とお近づきに……」


「試合始め!」


「……ぶへぇっ!」


「消えろ、ボケカスゥ!」


 一瞬、一撃。

 試合が始まった瞬間ライナスの姿が消え、相手のバカ貴族の顔面に木剣がめり込んでいた。


 全く反応すらできていない。

 相手のバカ貴族は何も分からないままにぶっ飛んでいき、後ろに何回もゴロゴロと転がっていく。


「ふっ、口だけだな」


 そのままステージから落ちて姿が見えなくなり、ライナスはフンと鼻から息を吐き出す。


「……勝者ライナス!」


 文句無しの勝利である。

 相手のバカ貴族は気を失っていて、担架に乗せられて運ばれていく。


 まともに顔面で受けたから鼻ぐらいは折れているかもしれない。

 あの実力差なら怪我しないようにライナスも手加減できただろうが、人のことをバカにするから悪いのだ。


「エニがいる」


 バカ貴族の行方を目で追っていたら、近くに待機していた神官たちのところに運ばれていった。

 そこにエニがいたことにジケは気づいた。


 一瞬目が合った。

 けれどもエニはすぐに仕事の方に行ってしまう。


「何かあってもエニがいるなら大丈夫か」


 怪我するようなつもりはないけれど、たとえ怪我するようなことがあってもエニがいるなら安心である。


「あっちも順調そうだ」


 ライナスがジケに気づいて親指を立てる。

 今のところジケもライナスも苦戦するような要素はない。


 せめてライナスと戦うまで頑張るかとジケも気合を入れるのだった。


 ーーーーー

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ