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【第十九章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第十九章

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武闘大会!1

 なんやかんやとありながらも武闘大会の予選は終わり、本戦が始まった。

 予選を突破した、できなかったという色々な思いが色んなところで聞こえてきた。


 ジケたちに恩恵は薄かったものの、最終的に札を奪い合うということを起点として多くの人やお金が動いていたらしい。

 序盤でジケたちと逸れてしまったユディットも、しっかりと札を集めて予選を突破していた。


 どれぐらいの人が予選を突破するのか分からなかったけれど、意外と突破した人は多いようである。

 想定していたより多いのか、少ないのかはジケたちには分からないものの、それなりに人数がいれば大会としても見栄えはするだろう。


 武闘大会本戦は子供部門から行われる。

 八つの組に分けられて勝ち抜きトーナメント方式で戦い、八人のトーナメントの優勝者でまたトーナメントが組まれて戦うことになるのだ。


 ざっくりと言ってしまえば、もう一度予選会があるようなものである。

 組み合わせによっては半予選のトーナメントで当たるかもしれないと思っていたけれど、ライナスとは別の組になった。


 良いのか悪いのか分からないけれど、ともかく直接対決はしばらくお預けである。

 ライナスと戦おうと思ったら、まずは自分の組を勝ち抜かねばならなくなった。


「まあボチボチやりますかね」


 控え室では存分に力を発揮してもらうために、食べ物やお菓子なんかも用意してある。

 戦いの前に緊張して喉を通らないなんて子も多いけれど、ジケにはそんな緊張などない。


 食べられる時に食べておくのがジケである。

 流石に満腹では動けないので、そこはちゃんと控えておくぐらいのことはする。


 フィオスはお気に入りの肉料理を見つけたらしく、体の中でお肉をぐるぐるさせながらゆっくりと食べている。


「うーん、特に……強そうなのはいないかな」


 控え室の中には同組の子たちがいる。

 年齢も性別も様々で、貴族っぽい子もいれば平民っぽい子もいる。


 ただ貧民っぽい子供は少ない。

 貧民で戦えるような子は元々少ない上に、札を売ってきた子のように実利を取るような考えもあるのだろう。


 あまり顔を知っている子はいない。

 ただ強そうだなと思うような子もいなかった。


 油断はできないが、ひとまずある程度勝ち抜くことはできそう。


「おっと、呼ばれた」


 ここで目立っても良いことなどない。

 隅の方で大人しくジュースを飲んでいたジケは自分が呼ばれた。


 もう一人男の子も呼ばれて一緒に係員についていく。

 会場の観客席は人で埋め尽くされている。


 子供の戦いだからと人が少ないなんてことはなかった。

 単純な物見客もいれば、自分のところに騎士や兵士として引き抜けないかなんて見に来ている人もいる。


 あるいは子供同士という読めない戦いに期待している人もいるのかもしれない。

 戦いの舞台となるステージは四分割されている。


 元々一つの大きなステージであったが、必要に応じて分けることもできるのだ。

 ステージの内の一つにジケともう一人は上がる。


 見た目的には平民っぽい男の子である。

 ジケよりもちょっと年上ぐらいだろうか。


「武器を選んで」


 今回実力での力を見るためにも武器は木製のものが用意されている。

 形や大きさが異なるものが細かく色々と用意されている。


 木製の武器は武器の性能差による違いを無くすだけでなく、怪我を防止する意味もある。

 大神殿に協力を要請して、神官を派遣してもらっているので怪我人が出てもいいようにはしてある。


 ただ真剣での戦いとなると治すまでもなく死んでしまうことも出てきてしまう。

 そんな事故を避けるという意味合いもあった。


 ジケはごく一般的な大きさの剣を手に取る。

 木剣なので普通の剣よりも軽いが、軽く振ってみた感じでは大きな問題はない。


 相手の男の子も剣を選んでいる。


「それでは試合始め!」


 まだ人数も多くてさっさと進めねばならない。

 多少雑な感じもするなと思いながら試合は始まった。


「ジケくーん! 頑張ってください」


「ジケー! がんばれ!」


 観客席には一般客もいるが、当然ながら貴族もいる。

 貴族用にゆとりを持って作られた観客席の方ではジケの見知った顔もいた。


 リンデランやウルシュナは武闘大会には出ていない。

 観客席で戦いを観戦していた。


 目的はジケである。

 あまり武闘大会に興味はないけれど、ジケが出ると聞いたので観に来ていたのだ。


 ざわざわと騒がしくてジケに声は届いていないかもしれないけれど、二人はキャッキャと応援する。


「エニさんは応援なさらなくてもいいのですか?」


「……応援はしてますよ」


 貴族の席に近いと、リンデランとウルシュナの声も聞こえてくる。

 アルファサスは隣に立ってステージを熱心に観ているエニにそっと声をかけた。


 誰を観ているのかなど分かりきっている。

 明らかにジケを応援している声も聞こえてきていて、エニも同じようにすればいいのにとアルファサスは思っていた。


 ただ声に出さずとも応援はしている。


「それに……頑張りすぎてこっち来られたら困りますからね」


 エニの方に来るということは怪我をしたということになる。

 たとえ軽い怪我であっても、怪我なんかしない方がいい。


 頑張ってほしいけど、頑張りすぎても困る。


「そうですか。ほどほどに頑張っていただければいいですね」


 アルファサスはニコリと笑う。

 若者の思いとはかくも複雑で美しいと思っていた。

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