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【第十八章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第十九章

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最後の足掻き5

「どーする?」


 タダじゃ通してくれなさそうな雰囲気がある。

 ライナスはジケのことを見る。


「んなもん決まってんだろ?」


 ジケは鞘ごと剣を抜く。


「一気に突破すんだよ」


 コロシアム前の受付周辺は戦闘禁止ゾーンになっている。

 そこまで抜けられれば、ジケたちの勝ちだ。


「じゃあ……昼飯かけて競走だ!」


「あっ、ズリぃ!」


 ジケは一気に走り出す。

 目標はコロシアム前の受付。


 子供のジケは襲えないので、大人たちはサッと道を開ける。


「ライナスの奢りか」


「そうはさせないぞ!」


 リアーネとライナスもジケに少し遅れて走り出す。


「おっと! 札を……」


「チッ……邪魔だ!」


 リアーネは鞘をつけたままの剣を手に振り回す。

 やはり札狙いなのか待ち構えていた人たちが立ちはだかる。


 先頭にいた男はリアーネによって殴り飛ばされてぶっ飛んでいく。


「俺たちだって余裕ないんだ!」


「知るかボケナス!」


 一人派手に倒したものの、もはや残されたチャンスも少ない男たちは意外と怯まなかった。

 このままではジケとライナスに遅れをとってしまう。


「なら……」


「札だ!」


 リアーネは懐から一枚の札を取り出した。

 札が見えて男たちはざわめく。


「とってみやがれってんだ!」


「なっ!?」


 リアーネはそのまま札を明後日の方に投げ飛ばす。


「…………あれは俺のもんだ!」


 一瞬呆気に取られたが、一人が札を追いかけて走り出す。

 すると他の奴らも負けじと札を追いかけ始めて、あっという間に争奪戦になる。


 デカい剣を振り回すリアーネが持っているかも分からない札をよりも、目の前の投げ捨てられた札の方がリスクが少なく確実に見えたのだ。

 一度人が流れて動くと、みんなも同じく流される。


 リアーネを狙う人の多くが投げられた札の方に向かい、自分のだと争っている。


「札よこせ!」


「やだね!」


 一方で大人ほどではなくとも、札を狙う子供の姿もあった。

 飛びかかるように襲いかかってきた子供をかわして、剣で殴る。


「ほっ!」


「なにぃ!?」


「ずるいぞ、ジケ!」


 ジケは魔力感知を活かして子供たちの動きを広く把握する。

 連携をとっているわけでもなく、それぞれ我先にと札を狙っている。


 よく観察してみると抜けられそうなルートが見えた。


「ぶわっ!?」

 

 ジケは邪魔になりそうな子の顔面にフィオスを押し付けて怯ませると、上手く子供たちの隙間を駆け抜けていく。


「どこ行った!」


「あっちだ!」


「ちが……俺じゃないって!」


 子供たちも誰が札を持っていて、誰が札を持っていないのか混乱し始めている。


「この……」


「フィオスパンチ!」


「うわっ! イテ……くない?」


 ジケはフィオスを掴んだ手で飛びかかってきた子を殴り飛ばした。

 ふにょんとした感触に怯んで尻餅をついたけど、殴られた顔は全然痛くなかった。


「一番乗り!」


 白い線が引いてある戦闘禁止ゾーンに最初に飛び込んだのはジケであった。


「ふぅ……危ない危ない」


 札を狙うゾンビのような子供たちの間を駆け抜けた。


「最後の足掻き……ってやつか」


 ジケは後ろを振り返る。

 手を出せなくなったジケのことを見ている人はおらず、もはや札を持っていない子供同士でも髪を引っ張りあったり争っている。


「どけどけどけー!」


「二番目はリアーネか」


 剣で腹を殴られた人が飛んできて転がる。

 直後リアーネが線の内側に入ってきた。


「チェッ、負けちまったか」


 さほど残念でもないという感じでリアーネは笑う。


「ぬおおおおぉぉぉぉ……」


「はい、奢りな」


「くそぉ……」


 最後にライナスが人混みからニュルリと抜け出してくる。

 ジケが先に行ってしまったのでライナスは集中的に狙われた。


 なんとか札を守って抜け出してきたが、ジケたちの中では最後になってしまった。


「札提出するか」


「はい、札三枚確認しました。武闘大会本戦進出おめでとうございます」


 ライナスも来たので受付に札を出した。

 これで本当に予選突破である。


「奢ってもらうぞ」


「ぐぬぬ……何がいい!」


「肉かな」


「肉だな」


「くそぅ……お前の方がお金持ちなのに」


 予選突破したのにライナスはガックリと肩を落とす。

 ジケたちは祝杯がわりにライナスの奢りで肉を食べたのだった。

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