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【第十九章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第十九章

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畏怖せよ2

「ライナス!」


「くっ……悪い」


 ふらつくライナスにゾンビマウスが襲いかかり、ギリギリのところでジケが助ける。


「笛の音が聞こえるたびに頭がぼーっとして……」


 流石に悪魔と距離が近く、布を詰めただけは音を防ぎ切れない。

 意識を失うほどではない。


 けれども笛の音が聞こえると、一瞬意識にかすみがかかったようになるのだ。


「お前は平気なのか?」


「……あんまり影響ないかな?」


 頭に被ったフィオス越しにも意外と音は聞こえていたりする。

 ライナスと同じく笛の音が聞こえているはずなのだけど、ジケに意識がどうこうなるような感じはなかった。


 フィオス越しと布越しでは何か違うのかもしれない。

 むしろ全身ザワザワとしていて落ち着かなさがある。


「あまり無理すんな」


「……そうもいかないだろ。師匠が頑張ってんだからさ」


 ビクシムは黒いモヤのドラゴンと戦っている。

 今のところやられるような様子はないが、黒いモヤのドラゴンは切られてもすぐに元通りになっていて倒されるような様子もない。


 師匠が戦っているのに、弟子であるライナスがサボってなんかいられない。


「ネズミもあと少しだし、やったるぜ!」


 リアーネも戦い続けていて、ゾンビマウスも目に見えて減った。

 戦えなくなるにしても、ゾンビマウスを倒し切ってからの方が安全である。


「おりゃー!」


 ライナスは大きく頭を振るとゾンビマウスに斬りかかっていく。

 ジケもライナスに何があってもいいようにライナスのそばで、ライナスのことも意識しながら戦い始めた。


「キリがないな」


 一方で黒いモヤのドラゴンと戦うビクシムは顔をしかめた。

 いくら切ろうとも黒いモヤのドラゴンに効果はない。


 本体である悪魔を倒さねばならないということはうっすらと感じている。


「だが……」


 悪魔は黒いモヤのドラゴンの中にいて姿が見えない。

 黒いモヤの中に入るのだろうが、どこにいるのか分からない。


 手当たり次第に攻撃はしているものの、切られてもそのまま攻撃してくる黒いモヤのドラゴンの反撃を警戒しながらではなかなか踏み込みきれないところがある。


「あのモヤの正体も分からないしな」


 黒いモヤが何なのか分からないのも攻撃に慎重になる理由だ。

 悪魔が操るものを警戒してしすぎることなどない。


 黒いモヤが触れて大丈夫なものなのか分からないのである。

 悪魔を探しに黒いモヤの中に切り込んでいって、逆に危機に陥る可能性を否定できないのだ。


「せめて悪魔の場所を特定できれば……」


 悪魔の位置が正確に分かれば切り込むこともできるだろう。

 しかし笛の音が響くだけで位置を特定できるようなものはない。


「ビクシムさん、ドラゴンの頭です!」


「頭?」


 ゾンビマウスも残り数体になったのでリアーネに任せて、ジケはビクシムの方に走った。

 ジケの魔力感知では悪魔の位置が見えていた。


 モヤも魔力感知で見えているのだけど、目で見るほどに濃くなくて中が透けているのだ。

 だから悪魔の位置も分かる。


「頭か。悪魔らしいな」


 悪魔を殺すためには頭を破壊する必要がある。

 そんな悪魔が黒いモヤのドラゴンの頭に隠れているのは、ある意味で当然なのかもしれない。


「頭をかち割ってやろう」


 振り下ろされた黒いモヤのドラゴンの前足をかわして、ビクシムは飛び上がる。

 ビクシムが剣を振ると黒いモヤのドラゴンの頭が二つに割れる。


 二つに割れた頭の中から悪魔の姿が現れた。


「さっさとこの遊びを終わりにするぞ」


「児戯のつもりはないのだけどね」


 ビクシムの高速の一撃を悪魔は笛で受け止める。

 なんてことはないように防御しているが、簡単なことではない。


「あの子はなぜか影響を受けていない」


 悪魔はジケのことを見る。


「不思議なものだ」


「チッ!」


 黒いモヤが戻ってきてビクシムは悪魔の笛を蹴って飛び退く。


「悪魔移動してます!」


 位置がバレたからか、悪魔が黒いモヤのドラゴンの中を移動する。

 喉を通って胴体の方に向かう。


「おやおや……私のことが分かるのですか」


 悪魔もジケが自分の位置をビクシムに伝えていることを察した。


「えっ!?」


 黒いモヤのドラゴンがジケの方を向いた。


「なっ、なんで!!」


 少し距離をとって狙われないようにもしていたはずなのに、黒いモヤのドラゴンが迫ってきてジケは焦る。


「ジケ殿!」


 黒いモヤのドラゴンはジケに向かって前足を振り下ろす。

 前足を振るうだけで、まるで本物のドラゴンかのような風が巻き起こる。


 ジケが前足をかわすと地面に当たり、振動に体が揺れる。

 当たったら終わりだとジケは走り出す。


 ビクシムのように急に高速で動くことはできない。

 動き続けて攻撃に備える。


「何で急に俺なんだよ!」


 黒いモヤのドラゴンはビクシムのことを無視してジケのことを追いかけて攻撃する。

 突然狙われた理由が分からなくてジケは焦って攻撃をかわす。


「悪魔の位置は分かるか!」


「右足です!」


 黒いモヤのドラゴンを止めようにも、止める方法は悪魔を倒すしかない。

 ジケが逃げながらも魔力感知で悪魔の場所を見抜いてビクシムに伝える。

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― 新着の感想 ―
そりゃ隠れてる場所を指摘してくる奴がいたら狙うだろうに
>何で急に俺なんだよ! 剣聖以上の危険人物に認定されたからに決まってるだろうが!
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