師弟対決1
「ありゃズルいやり方だよなぁ」
現在札一枚。
逃げたふくよかな少年たちがどこに行ったのかも分からないし、探す気もなかった。
ちゃんと札が隠してあることも分かったので、子供たちから聞いた薬屋の方に行ってみた。
そこはなかなかの酷いことになっていたのである。
ジケとライナスがついた時にはもう札は見つかっていた。
それはしょうがないのだけど、それよりも薬屋の前には札を争ったのであろう人たちが転がっていた。
「だけど、賢いやり方ではあるよな」
おそらく薬屋にはまともに札を隠すつもりはなかったのだろう。
人通りのある道で札を見つければ目立つし、他にバレる可能性が大きい。
実際薬屋の札を見つけた人は札を見つけたと見つかってしまった。
その結果どうなったか。
札の奪い合いが始まったのである。
ふくよかな少年たちのように自分の札を持っていない可能性はあるが、札を見つけた人は少なくとも一つの札を持っている。
自分の札も持っていたら二枚だ。
まだまだ自分の札を持っている人は多く、二枚手に入れば三枚揃うなんて人もいるだろう。
戦いが戦いを生む。
薬屋の前では一枚の札をきっかけにして大乱闘が起きた。
最終的に薬屋で見つかった札が誰の手元に行ったのかも分からない。
ただ薬屋は店の前で戦って、怪我した人に薬を売って回り利益を得ていたのである。
つまりたった一枚の札をめぐる戦いで、薬屋は結構儲けたらしいのだ。
薬屋が意図したことなのか、あるいは国がそうなるように仕向けたのか知らないけれど、誰かの作戦通りである気がした。
「次はどうする?」
「うーん……」
焼き菓子はまだある。
他の子供たちに聞いて回ってもいいかもしれない。
「んじゃ、あれは? 一生のなんとかとか……」
「一生の親友と出会った場所だな」
「どこなのか分かんねえけどさ」
「本当に言ってんのか?」
「あっ、ジケはもう分かってんのか?」
「もちろん」
ジケは笑顔を浮かべ、抱えているフィオスのことをチラリと見る。
「お前やエニと出会った貧民街じゃないだろうなってことはわかってんだけどさぁ」
ライナスは頭の後ろで手を組んで空を見上げる。
「ふっ、お前らしいな」
一生の親友と聞いて、ライナスが真っ先に思い浮かべたのがジケとエニだった。
それは間違いなのだけど、一生の親友と考えてくれてるんだなと思うと嬉しさはある。
「んで、どこだよ?」
考えても分からないなら答えを聞いてしまえばいい。
ライナスは一生の親友のことを見る。
「他にも一生の親友がいるだろ?」
すぐに教えちゃつまらない。
ジケはヒントを出す。
「一生の親友? いやまあ、俺は結構色々友達いるけど……」
ライナスは分からないといった顔をする。
「ここに来る時にも手伝ってくれたろ?」
「ここに来る時……あっ!」
ほぼ答えのようなヒントを聞いてライナスはようやく理解した。
「親友って、魔獣のことか!」
「たぶんな」
「じゃあ一生の親友に出会った場所ってのは……」
「契約場のこと、だと俺は思ってる」
「なるほど……魔獣……セントスか。あ、いや、別に忘れてたわけじゃ……親友っていうと人かなって思っただけで……」
こうなるとセントスの方が可哀想になってきてしまう。
慌てて言い訳するライナスだけど、自分に言われてもなとジケは目を細める。
「まあややこしい言い方してるもんな」
親友と言われてまず想像するのは人だろう。
ただ親友と出会った場所なんて人それぞれだし固定の場所なんてものはない。
みんなが共通する場所があるはず。
そんなところもヒントだ。
多くの人にとって魔獣は一生を共にする。
ただ人によって魔獣の認識は違う。
ジケは親友なんて意識もあるが、人によってはパートナーや相棒といっていたり家族だったり、あるいはただの道具のように見ている人もいる。
ジケにとってフィオスは家族であり、パートナーであり、親友でもある。
だから割とすぐにピンときた。
ライナスとしてはセントスは共に戦うパートナーな認識が強い。
だから親友と言われてもピンとこなかったのである。
認識が違う以上多少ややこしい言い方ではあるが、分かりやすすぎず、かつそれなりに分かるようにそんな言い方をしたのだろう。
「この町もそこそこデカいから契約場はあるはずだ」
「行ってみるか?」
「ものは試しだから行ってみようか」
違っていたらまた考えればいい。
ジケとライナスは契約場に行ってみることにした。
「……セントス!」
ライナスはセントスを召喚する。
「お前も親友だからなぁぁぁぁ!」
急に抱きつかれてセントスは困惑したような目をしている。
セントスがジケの方をチラリと見て、フィオスがプルンと震える。
「魔獣をどう思うかは個人次第だからな」
共に戦うパートナー、仲間と思っていても別に変ではない。
親友というヒントだけで契約場に辿り着けない人だっておそらく多くいるだろう。
「セントスゥゥゥ!」
ライナスはセントスのことを撫で回しているが、セントスはスンとした目をしていたのであった。
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