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【第十九章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第十九章

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お祭りの始まり5

「今ゲットしたそれと、お前らが持ってる札……俺らに渡してもらおうか!」


「あー、とうとう姿現しやがったか」


 その子供たちはずっとジケとライナスの後をつけてきていた相手であった。

 どうやらジケとライナスが何かしようとしていることに勘づいたらしく、後をつけていたようである。


 特に気にしていなかったので、バケツの裏から札を取ったことを普通に見られていた。

 今なら確実に札を持っている。


 子供たちはジケとライナスが持っているだろう札も含めて奪いに来たのだ。


「どうする?」


「向こう次第だな」


「おいっ! 無視すんな!」


 五人も少年がいるということは、単純にジケたちの倍以上いるということである。

 数で優っているのだから余裕で勝てると思っている。


 なのにジケとライナスが焦った様子もなくて、少し苛立った顔をしていた。


「逃げないように囲め!」


 真ん中のややふくよかな体型をした少年がリーダーらしく、他四人の少年がジケとライナスを取り囲む。


「どっかの貴族坊ちゃんかな」


「そんな感じするな」


「さっきから何話してんだよ!」


 ふくよかな少年は身なりもいい。

 そこらへんの貧民でないことは確実である。


 それなりに身なりのいい取り巻きの少年たちを見るに、貴族の子息と言ったところだろう。

 きっと取り巻きの少年は貴族が雇う騎士や兵士の子供なのではないかとジケは推測している。


「札を渡さなきゃ痛い目みることになるぞ!」


 少年たちは剣を抜く。

 ふくよかな少年はともかく、取り巻きの少年たちは多少剣の覚えがありそうだ。


 少年たちと睨み合っていると建物の屋根に黒い鳥が止まった。

 戦いを監視しているようである。


「ほら、早く渡せ!」


「なんだかあいつ……ムカつくな」


 一人だけ後ろから大声を張り上げているふくよかな少年に、ライナスの方も苛立ち始める。


「はぁ……そっちこそ逃げるなら今のうちだぞ」


 一応警告はしといてやる。


「な、な、なんだと!? 状況分かってないのか!」


 ため息混じりの警告にふくよかな少年は顔を赤くして怒り出す。

 本当に分かってないのはどちらなのか、それはすぐにわかることだろう。


「ちょっと痛めつけてやれ! 認められてるし怒られることはないからな!」


 もう力による奪い合いは解禁されている。

 少しぐらい暴力を振るってもそれは容認される事である。


 ジケとライナスが言うことを聞かないのなら、多少痛めつけて札を奪い取ろうとふくよかな少年は命令を出す。


「どーする?」


「まあ、売られたケンカは買わなきゃな」


 何回もチャンスはあげたし、何回も横暴な態度を我慢してやった。

 それでもかかってくるというのならもう知らない。


「あいつ、俺やっていい?」


「おう、やってこい!」


「んじゃ……」


「へっ?」


「お前に剣なんて抜きゃしねーよ!」


 一瞬ライナスが消えたとふくよかな少年は思った。

 しかし気づいたら目の前に拳を振りかぶったライナスがいた。


「どっせい!」


「ぶべらっ!」


 ライナスがふくよかな少年の顔面を殴りつける。

 ふくよかな少年は後ろにゴロゴロと転がっていって壁にぶつかる。


「あっ……」


「お前らも、逃げられると思うなよ?」


「あぁ……」


 ジケはフィオスに剣になってもらう。

 刃の立っていない安全な剣だ。


「どりゃ!」


 ふくよかな少年がやられて呆然としている少年たちの頭を、ジケはフィオス剣で殴りつける。

 ゴチンと鈍い音がして、殴られた少年は頭を押さえてへたり込んでいく。


 構えこそしっかりしていたように見えたが、実戦的な経験はあまりなさそうだ。

 残りの子もただ殴られてはたまるものかと抵抗を見せるが、ジケにあっさりと頭を殴られて剣を投げ出してしまう。


「流石の手際だな」


「そっちこそ」


 なんの危なげもない。

 ニッと笑って拳を差し出してくるライナスに応えて、ジケも拳を突き出してぶつける。


「ほら、負けたんだから札出せよ」


 なんにしても勝ったのだから札はジケたちの札はジケたちのものだし、少年たちの札はもらう。


「ふっ、持ってねーよ」


「はぁっ?」


「こんなこともあろうかと札は置いてきたんだよ!」


 殴られて鼻を真っ赤にしたふくよかな少年は笑う。


「出たよ、卑怯パターン」


「お前たち逃げるぞ!」


 ため息をつくライナスを尻目にふくよかな少年は一目散に逃げ出した。

 他の少年たちもふくよかな少年の後を追いかけて走っていく。


「バーカ! お前の母ちゃん、チンゴリウータン!」


「おい! それ悪口なのか!?」


 立派な悪役になりそうな捨て台詞を残して、ふくよかな少年たちは走り去っていった。

 こうなることもあるだろうなとは思っていた。


 札を持っていなきゃ奪われることもない。

 小賢しい作戦だけど、本当にやる人がいるとは呆れて物も言えない。


 札を持っていないなら追いかけても無駄に終わるだけ。

 ジケとライナスは顔を見合わせて肩をすくめたのだった。

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