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【第十九章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第十九章

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始まりましたー!1

「みなさーん! こっちに注目してくださーい!」


 なんやかんやと時間は過ぎ、武闘大会も始まることとなった。

 どんな内容で行われるか。


 それについては噂の域を出ないまま、参加者たちは町の外に集められていた。


「あの子……可愛いな」


「珍しいな」


「まあ俺だって可愛い子は可愛いって普通に思うぜ」


 小さめの高いステージの上にフリフリとしたドレスを着た女の子が立っている。

 手にはラッパのような片方が広がった筒を持っていて、何人か黄色い声援を飛ばしている男もいた。


 ジケの横に立つライナスは可愛いなんていうが、周りに色々な子がいるジケはなんとなくステージの女の子の笑顔が薄っぺらく感じていた。

 女の子の名前はウェザーラ。


 最近話題の演劇女優である。

 歌って踊れると男性からの支持も厚い。


「これから、武闘大会が始まりまーす!」


 ウェザーラは筒の狭い方に口を当てて声を出す。

 すると声は集まっている参加者の端にまで響く。


「不思議なもんだな」


「あれ、魔道具らしいな」


「あのラッパみたいなのが?」


「新しく作ったやつみたいだな。ああやって声を増幅して、遠くまで届けてくれるんだとさ」


 ウェザーラが手に持っている不思議な筒は魔道具であった。

 声がしっかり聞こえているのは魔道具のおかげであったのだ。


「まずみなさんにやっていただくのは……予選でーす!」


「やっぱり予選やるのか」


 予想はしていた。

 集まっている人の中には野次馬も多いが、それを除いても参加者はかなり数がいる。


 大会として見せ物の側面はどうしても否定はできない。

 面白半分で参加した素人同士の戦いは酔った酒場では面白いかもしれないが、盛大な会場で見るには耐えないだろう。


 どうしてもそんな人を振り分けて、ちゃんとしたものにする必要がある。

 だから予選のような形で質を確保するだろうと予想していた。


「予選でやってもらうのは……札の奪い合いでーす」


 ウェザーラは少し悪い顔をして予選の内容を発表した。


「札の奪い合い?」


「大会に登録する時、身分証となる札をもらいましたね? もちろん無くしていないと思います! その札を奪い合っていただきます!」


 ジケは思わず懐の札を触って確認してしまう。


「三枚……自分の札を含めても、あるいは他人の札のみでも三枚の札を集めてください。三枚集めてコロシアムにある受付に届ければ予選突破となります!」


「なかなか面白いこと考えるな……」


 周りの空気が一気に張り詰める。

 札の奪い合いということで、一瞬にして周りの全員が札を狙うライバルになってしまった。


「ただぁーし! ちゃんとルールもありますし、救済措置もあります!」


 わざとらしい大きな身振り手振りは舞台女優だからだろうかとジケは思った。


「戦って相手から札を奪っていいのは三日後からです」


「三日後……?」


「分かります分かります! 三日も何していればいいのかと思いますよね? 戦って相手から札を奪えないなんて人のためにあるのが救済措置です! ここから少し行ったところにあるアドラスとフルクラースという町に札を隠してあります。そちらも一枚分としてカウントされるので上手くいけば戦わずに予選突破もできちゃうかも!」


 ウェザーラは笑顔でスラスラと予選の説明を進めていく。


「アドラスとフルクラース……」


 どちらも急げば二、三日で行ける町である。


「さらに! ‘一生の親友と出会った場所’にて待ち受ける人に親友を見せて、認められれば札がもらえちゃうこともあるかもしれません!」


「なんだよ、その一生の親友と出会った場所って」


「お前と出会ったのは貧民街だな」


「おっ、一生の親友って思ってくれてんのか?」


「もちろんだろ」


「へへっ、照れるけど嬉しいなっ!」


 ジケとライナスは顔を見合わせて笑う。


「ともかくあれだな。三日大人しくしてるか、町に向かうか……ってことか」


 札を町で二枚見つけられれば自分の分と合わせて三枚で予選突破できる。

 さっさと町に行って、さっさと札を見つけることができるなら早いだろう。


 しかし移動時間を考えると、札を見つけた時には奪い合いが始まっている可能性も高い。

 ラグカでやったようにとにかく札をたくさん奪っていればいいというわけでもないし、難しい選択を迫られるものだと思った。


「基本的に何をしてもいいですが……相手は殺さないでくださいね! ちゃんと町中に監視の目がありますから。それと大人が子供の札を奪うのも禁止です。大人と子供の札は違うので子供から奪えば簡単に分かってしまうので、やめましょうねー」


 流石に子供たちを保護する必要がある。

 大人が子供の札を持っていても、それは数にカウントされないので奪う理由がないと守っている。


「さあて、ルールは分かりましたね? 札を三枚。集めてきてください! 期間は十日! それでは……予選会の開始でーす!」


 なんともゆるく、武闘大会は始まった。


「……割とみんな行くようだな」


 互いに顔を色をうかがうようにしていたが、誰かが人混みを外れて走り出した。

 先に町につけば、それだけ札を見つけられる可能性は高くなる。


 一人が動けば、他も動き出す。

 二つの町、どちらかに向けて一斉に人が移動し始めたのだった。

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言ってないだけでスリ盗るとかも違反じゃないやつじゃんこれ
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