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【第十八章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第十八章

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君を追いかけて3

「どうだった?」


 大神殿に来たのが一番初めではない。

 先に寄ったところがある。


 ジケが知る、情報を司る組織は二つある。

 こんな状況ではなりふり構っていられないので、どちらにも助けを求めた。


「キュレイストンについて調べたよ」


「悪いな。移動しながら聞かせてくれ」


 立ち止まっているような時間すら惜しい。

 ジケとソコイは足早に移動する。


「赤い髪の子を探してるのはキュレイストンで間違いないよ。オースティン・キュレイストンが当主で、今は母親のルーエンタ・キュレイストンとこの国に来てるみたい。商談じゃなくて、その女の子探しが目的だね」


 急いで歩くと抱えたフィオスがプヨンプヨンと揺れる。


「オースティンは元々海賊で……」


「細かいプロフィールは後でいい。泊まってる宿とか分かるか?」


「ああ、もちろん!」


 オースティンがどんな人間なのか興味はない。

 今はエニがどこにいるかが大事である。


「リアーネ、ユディット、ニノサン!」


 ジケはまずフィオス商会に立ち寄った。

 そこでは着替えを終えたリアーネを始めとした護衛チームがジケを待っていた。


 エニが誘拐されたことは大きな事件だ。

 だが騒ぎ立ててみんなに余計な心配をかけたくないので、貧民街にいるみんなには何も伝えていない。


「ニノサン、そっちは?」


 ニノサンにはリアーネが引きずってきた襲撃者を任せていた。

 どんなお話をしたのか分からないけれども、ただお話ししたわけではないことはジケも分かっている。


「申し訳ありません。特に有用な情報はありませんでした。キュレイストン、という名前は聞き出せたのですが、何も知らない下っ端のようです」


「そっか。まあしょうがない」


 決定的な情報を吐いてくれることはあまり期待していなかった。


「ただキュレイストンという名前が分かったならそれは収穫だ」


 もはやキュレイストンが犯人であることはジケの中で確定である。

 捕らえた下っ端もキュレイストンの名前を口にしたのならもう他に考えようもない。


「これからどうすんだ?」


「ひとまずキュレイストンが犯人だと仮定する。ソコイが泊まってるところを調べてくれたから乗り込むぞ」


「オッケッ!」


 エニを守りきれなかった負い目もある。

 リアーネはやる気を見せる。


「いざとなれば……ソコイ、頼むぞ」


「ああ、任せとけ!」


 ソコイも一緒に行ってくれる。

 たとえ相手がしらを切ろうとも、騒ぎを起こしている間にソコイが調べることもできるだろう。


 ジケたちはキュレイストンが泊まっている宿に向かった。

 キュレイストンが泊まっている宿は貴族街にある高級宿である。


 遠方から来た貴族が泊まるようなお高いところであり、怪しいことをするのにあまり向かない場所だ。


「すいません、こちらにキュレイストンさんご宿泊じゃないですか?」


「ええと……どちら様でしょうか?」


 宿に着いたジケは焦りを隠し、にこやかな顔をして宿の人に声をかけた。


「フィオス商会のジケと申します。取引について問題が発生して少し話をしたいのですが……」


 キュレイストンを出せと騒ぎ立てるだけ逆効果だろう。

 エニを隠されても厄介なので、ここは穏便に接触を図る。


 ここはキュレイストンと取引があることを押し出しておく。

 取引があることも嘘ではないし、問題があることも嘘ではない。


「ああ、そうなのですか。ですがキュレイストン様は少し前に宿を出てしまいました」


「……あっ、そうなんですか」


 宿の人は困ったように答えた。


「それでは失礼します」


 いないのならば粘ったところで意味はない。

 ジケはさっさと宿を出る。


「どうなさいますか?」


 宿にキュレイストンがいない。

 このことは偶然ではないだろう。


「オランゼさんのところに向かう」


 まだ諦めるには早い。

 ジケはオランゼ商会に向かった。


「オランゼさん!」


「ああ、ジケか。少ないが情報はまとめてある。エドセドア」


「はい」


 オランゼ商会に行くと、商会にはオランゼともう一人男性がいた。

 エドセドアという男性は新しくオランゼ商会で雇われている人で、オランゼの遠い親戚に当たる。


 オランゼ商会の仕事も手伝っているのだけど、メインでやっているのは情報管理であった。

 つまり、オランゼ商会の裏の顔の情報屋としての仕事を管理しているのがエドセドアという人だ。


「町中を走り去る馬車の姿が確認されています。その馬車はそのまま町の外に走っていったそうです」


 痩せ型でメガネをかけたエドセドアは抑揚の少ない声でジケに情報を伝えてくれる。

 ジケはソコイにキュレイストンの情報を、そしてオランゼ商会にはエニを誘拐した馬車の追跡をお願いしていた。


 町中にはどうしても人の目がある。

 オランゼ商会はそうした人の目を利用して情報を集めているので怪しい馬車があれば情報が集まる。


 昼間、町中を走る馬車があれば目立つ。


「向かった先は東ですね」


「東……」


「キュレイストンは海上貿易をメインにしてるし、海を挟んだ別の国の人だ。それならメインで使ってるのは……」


「港湾貿易都市ボージェナル……あいつら……エニを連れていくつもりか!」


 全てが一つに繋がった。

 今キュレイストンはエニを誘拐して自分の国に連れて行こうとしている。


「リアーネ! 馬車を出すんだ! ボージェナルに行くぞ!」

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