花を連れ帰って4
「にょらああああっ!」
魔物と力比べするのはナンセンスであるとニノサンはため息をつくが、リアーネはそのままトリプルホーンカウの突進を止めてしまった。
「くらえ!」
突進を止めたのならリアーネの方は心配ない。
ニノサンが最後のトリプルホーンカウの方を振り向いた時に目に入ったのは、トリプルホーンカウの背中に乗るソコイの姿であった。
ソコイの気配を消す能力は人間だけでなく、魔物に対しても通じる。
興奮したトリプルホーンカウに近づくなどソコイには朝飯前なのだ。
まるで軽業師のようにトリプルホーンカウの背中に飛び乗って剣を抜いていたのである。
「ほりゃ!」
ソコイは剣をトリプルホーンカウの頭に突き立てた。
気配を消して移動する術はガルガトから習っている。
剣術など戦う術も習っているのだが、気配消しに比べれば圧倒的に未熟であった。
それでも習ったことがある。
相手の弱点を突け、ということだ。
どんな相手にでも弱点は存在している。
たとえ小さなナイフしか手元になくとも正確に弱点をつけば倒すことができる。
相手に気づかれることなく接近できるソコイなら、相手の弱手をつくことも可能である。
頭、首、心臓と狙うべきところは色々とある。
ソコイの力でサッとトリプルホーンカウの首を落とすのは厳しい。
大きな体の中にある心臓も一撃で狙うには経験と力が必要となる。
となれば狙うのは頭だった。
脳天を目掛けて振り下ろした剣は深々と突き刺さった。
「うわっと!?」
頭に剣をブッ刺されてトリプルホーンカウが暴れ、上に乗っていたソコイは投げ出される。
剣を抜こうとしているのか、トリプルホーンカウはその場でジタバタと暴れる。
しかし深く刺さった剣は頭を振るだけじゃ抜けない。
体を跳ねさせるようにして暴れていたトリプルホーンカウだったが、急に動きが止まった。
ぐるんと白目を剥いて、ゆっくりと地面に倒れる。
「よっし!」
ビクビクと痙攣した後、トリプルホーンカウは動かなくなった。
「やったぜ!」
トリプルホーンカウはソコイにとって実力的には倒すことが厳しい相手である。
しかし能力を活かして上手くトリプルホーンカウを倒した。
頭の回転や能力の使い方も成長しているのだなとジケも感心してしまう。
そうしている間にリアーネの方もトリプルホーンカウを倒していた。
「どーだぁー!」
ソコイは意気揚々と馬車に戻ってくる。
「さすがだな。強くなってる」
「ふふん、俺も隠れてるばかりじゃないからな…………なんだよ、二人その目?」
鼻息荒く胸を張るソコイはなんだかジケとシェルハタの目が生暖かい気がした。
「なんでもないよ、アニキ」
「えっ……う、うん」
「ふふ、良い兄弟関係ですね」
「そ、そうだろ?」
シェルハタはクスクスと笑う。
その様子にソコイは誤魔化すのに必死で気づいていないのであった。




