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【第十八章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第十七章

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花を連れ帰って1

「これ日持ちする?」


「ああ、硬く焼いてるから結構持つよ。しけらないようにしっかり保管しとけばしばらく美味しく食べられる」


 ブルクスタに着いた。

 早速花とやらに会ってみたかったけれど、先にソコイが接触するらしく馬車を降りてどこかに行ってしまった。


 ジケたちはソコイが花を連れてくるまで暇なので、何かお土産になりそうなものはないかと町中に繰り出している。

 身の回りに人が厄介なことがある。


 それはお土産選びも一苦労になるということだ。

 色々な人が周りにいてくれる。


 ジケという共通点に集まってくれているものの、みんな違っている。

 つまりそれだけ趣味嗜好も幅が広い。


 全員分、それぞれが喜ぶお土産を選んで買っていくのはもはや不可能と言わざるを得ないのである。

 となると差をつけずに簡単に買っていけて、喜んでくれる人が多くなるようなものを選ばざるを得ない。


 食べ物は鉄板だ。

 ただ生物は日持ちしない。


 そうなると焼き菓子なんかが日持ちもして候補になる。

 焼き菓子の中でも、より日持ちがするものを選んでジケは購入する。


「ん、悪くないな」


「噛むほどに甘味が出てくるな。意外と当たり」


 宿に戻って一足先にお土産の試食をする。

 いくつか買ったうちの一つを開けてみたけれど、割と良い感じのお菓子で成功を噛み締める。


 フィオスも体の中でお菓子を回しながらちょっとずつ溶かして食べていた。

 硬めの焼き菓子は噛みごたえがある。


 噛んでいると甘味を感じてなかなか美味い。

 適当に選んだけど当たりだった。


「ジケ、いるか?」


「ん、帰ってきたか」


 いつ花が来るのかと待ちわびているとソコイが借りている宿の部屋のドアをノックした。

 ドアを開けて部屋の中を覗き込む。


 入ってこないあたりに連れてきたのだな、とジケはすぐに感じ取った。

 食べかけていた焼き菓子をフィオスにあげて、ジケは立ち上がって服についたカスを払う。


「ようやく会えるか」


「大丈夫そうだから、入って」


 中の様子を確認してソコイはドアの外に手招きする。


「この人たちは信頼できるよ」


「は、はい……」


「ほぅ……」


「うわっ、キレイな顔してんな……」


 部屋の中に女の子が入ってきた。

 白いローブに身を包んだ少女がフードを下ろすとジケは目を丸くした。


 顔の良いガルガトの娘ならば顔が良いだろうという予想はしていた。

 しかし少女の顔は本当に可愛らしかった。


 大きくてうるうるとした目をしていて、薄紫色のウェーブのかかった髪、白く透き通るような肌、髪よりもやや青みがかっている瞳、顔のパーツのバランスもこれ以上ない。

 緊張しているのか伏目がちに立っているが、それもまた庇護欲を掻き立てるかのようである。


 かなりの美少女だ。

 リンデランやウルシュナにも負けないような容姿を誇っていた。


 見た感じでは性格は気弱そうだ。

 小動物を思わせるような雰囲気があって、ほんの少しだけ初めて会った時のリンデランの姿を思い出す。


 リンデランも今では芯を持った女性になりつつある。

 弱いところもあるのだろうが、そうした面を見せない強さも自分の中で培っているのだ。


 対して目の前の少女にはどこか不安げで、儚さがある。

 リンデランが弱いままに成長したかのようである。


「この子はシェルハタ。話をしていた花だよ」


「よ、よろしくお願いします……」


 シェルハタと紹介された少女は深く頭を下げる。

 いまだに目は合わないが、失礼な子ではなく人が得意なタイプではないようである。


「よろしくね。俺はジケ。こっちがリアーネで、こっちがニノサン」


「あ、は、はい……」


 シェルハタはジケたち三人にそれぞれ頭を下げる。

 今のところ人見知りの良い子という感じ。


「で、そちらの方は?」


「アルゼンです」


「シェルハタを守ってくれてる人だよ」


 もう一人部屋に入ってきていた人物がいる。

 剣を背中に差した若い男性はずっと険しい顔をしている。


 シェルハタの印象は悪くないけれど、アルゼンの方はあまり人当たりが良くなさそうだ。

 すぐに人に心を許す護衛もまた信頼できないだろうから、真面目な護衛なんだろうと思うことにした。


「これから……しばらくお世話になります」


 チラリとジケと目が合って、またすぐにそらしてしまう。

 憮然とした態度のガルガトからよくこんな可愛らしい子が生まれたものだなと感心してしまう。


 ソコイが守りたく思っている気持ちも何だか理解できるような子である。


「この人が……ソコイ君の……弟分、なんですか?」


「おっ?」


「あっ! それは、その……」


 思わぬ言葉にソコイが慌てる。


「ふふ、そうです。俺がソコイ兄さんの弟分ですよ」


「あぅ……」


 すぐに状況を理解したジケはペコリと頭を下げた。

 ソコイはシェルハタにバレないように、複雑な感情の視線をジケに向ける。


 別に怒っちゃいないとニヤリと笑顔を浮かべた。

 リアーネもニヤニヤとしているし、ニノサンはジケがそれでいいのならと興味なさげな顔をしている。


 言動の端々からソコイがシェルハタを大事に思っていることは伝わってきている。

 きっと良いところ見せたかったんだろうな、とジケも流れに乗ることにした。

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