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【第十九章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第十七章

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花を迎えに行って1

 ソコイのお願いを受けてジケは国の南西にあるブルクスタという都市に向かっていた。

 そこに花がいるらしい。


「最近南の方も物騒だからな」


「そうなのか?」


 揺れない馬車に揺られながらジケはソコイから色々と聞き出していた。

 これまでのジケの行動によって多くのことが変わった。


 知っているような出来事が発生していることもあれば、全く知らない出来事が発生していることもある。

 きっと大きな出来事は、ジケが多少流れを変えようとも発生してしまう大きな力を持っているのだ。


 それでも時期が変わっていたり、発生の仕方が変わっていることもある。

 止めたい出来事が止められなくなる前にその予兆を見抜いて動かなければならない。


 情報は大事である。

 普段から身の回りのことには気をつけているけれど、もっと広い情報を手に入れるのはなかなか大変だ。


 ソコイがいるからとタダで情報が手に入るわけでもないし、こうした機会に情報を仕入れておく。

 お願いを聞くのだから色々情報は話してもらう。


「この国は関係ないけど……南の諸国の中で戦争が起こるかもしれないんだ」


「そうなのか?」


 聞いたことがないし、過去での記憶でも覚えていない話である。


「小国同士の衝突……だけど大規模な戦争にも発展する可能性があるみたいでウチでも注目してる。戦争があればどこかに影響は出ちゃうからね」


 情報ギルドの活動範囲は主に国内であるが、周辺の情報に目を向けないわけではない。

 色々なところにも目を向けていて、特に国内に影響を及ぼしそうな事案は情報を集めている。


 南の諸国の中で戦争が起きそうになっているために、国の南側でも少し警戒が高まっているとソコイは言った。

 当事者はイェルガルではないようだけど、戦争が起こって広がる影響はバカにできない。


「今はどっちの国がベルンシアラっていう国を引き込むかで躍起になってるようだね」


「ベルンシアラ……?」


 どこかで聞いたことがあるような気がするとジケは思い返してみるけれど、どこで聞いたものなのか思い出せない。


「すごい強い軍事力を持っている国だね。他の国に傭兵として軍隊を派遣してお金を稼いでる結構ヤバい国だよ」


「ほぉ〜、よく覚えてるな」


「師匠に全部叩き込まれたんだ」


 ソコイも色々なことを知っている。

 これまで港町のヤンチャ少年だったのに、よくできたものであると感心してしまう。


 どれもこれもソコイの師匠であるガルガトが覚えなきゃ殺す、というレベルでソコイの頭に情報を詰め込んだおかげなのである。

 流石にピコのような記憶力があった、というわけじゃない。


「最後どうなるのか分かんないけど……師匠によるとベルンシアラがいいとこ取りするだろうなって」


「どういうことだ?」


「ベルンシアラを味方につけるには大きなお金を支払わなきゃいけない。逆に味方につけられなかった方は戦うか、降伏するかだ。でも戦って勝てる見込みは少ないだろうね」


 ソコイは目を閉じて師匠の言葉を思い出しながら説明する。


「そうなるとベルンシアラを味方につけた方が勝つ。それで降伏なんてしたらきっと賠償金とか払わされるけど……それもベルンシアラがいくらか持っていく」


「結局儲かるのはベルンシアラっていう国……ってことか」


「その通り」


 話が早くて助かるとソコイは笑顔を浮かべる。


「まだ噂段階だけど、戦争もベルンシアラが仕掛けてるんじゃないかって話もある」


「他国で戦争を誘発してる? そんなことできるのか? それに何が目的で……」


「あくまでも噂だよ。隣と仲が悪いところなんてどこにでもあるからね。悪意を持って突けば無理なことでもないかもしれない」


「そんなんで国の戦争になったらたまったもんじゃないけどな」


 ジケはため息をつく。

 だけど地方の小競り合いから戦争に発展する可能性があることも過去に聞いたことがある話だ。


 ないと言えないのが悲しいところである。


「目的は……お金かな?」


 話にもあったけれど、戦争が起きて一番得をするのがベルンシアラである。

 得をするから他の国で戦争を起こすなんて非道な話であるが、人間の欲なんて計り知れない以上これもまたないとは言えない。


 ただし証拠もなければ理由もお金かどうか分からないので、勝手に批判するわけにもいかない。


「まあ戦争が起きてもベルンシアラが介入する以上はそんなにひどいものにならないと思うけど」


 経緯はどうあれ小国同士の戦争にベルンシアラが介入することがあれば、あっさりと勝負は決まるだろう。

 戦争の影響も最小限にとどまるはずである。


「実は私もそこにスカウトされたことあるんだぜ」


「リアーネが?」


 馬車の御者をしているリアーネの声が聞こえてきた。

 揺れが少なく静かということは、中の会話も外に聞こえやすいということでもある。


 特別気をつけて話していたのではないから、御者台にいるリアーネとニノサンにも会話は丸聞こえだった。

 リアーネがベルンシアラにスカウトされたことがあるという話はジケも初耳である。


「それなりに冒険者として活動してた時にな。うちに来るつもりはないかって」


 リアーネがジケと出会う前、冒険者として脂が乗り始めていた頃にベルンシアラから来たと名乗る人にリアーネはスカウトされたことがあった。

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