表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第十九章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第十六章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1078/1290

浅ましきネズミの野望2

「おっと、動くなよ?」


 グルゼイが戦っている間に、と思ったがハビシンの隣にいるネズミの獣人がハビシンにナイフを突きつける。


「ハビシン……! あなた何をするのよ!」


「チッ……分かりやすい人質だな」


 ナルジオンがおかしくなった理由もわかった。

 ハビシンのために戦争を起こそうとしていた人なのだから、ハビシンが人質にされては逆らうことなんてできない。


 脅されて他のハクロウ族のことを倒すように言われたのだろう。

 しかしハビシンを人質に取られて動けないのはジケたちも同じである。


「呪いを止めようとしているようだな? 残念だったな。お前らはここで死ぬんだ」


 ネズミの獣人はニヤリと笑った。

 焦ったような様子もないとジケは思った。


 もしかしたらネズミの獣人は、ジケたちがすでに他のところを回ってきたことを知らない可能性があるかもしれない。


「あり得るな……」


 プクサが町の中心を守っていた。

 ナルジオンは呪いを止めるために動き、ジケたちはリッチを倒して駆けつけたと考えてもおかしなことはないのだ。


 他の呪いを解かれていることを知らないのなら余裕がある態度なことも頷ける。

 ここでナルジオンやジケたちを排除すれば計画通りにいくだろう、とネズミの獣人は思い込んでいるのだ。


 仮にここでジケたちが何もせずにネズミの獣人にいいようにされれば、結果的には相手の狙い通りを招いてしまうかもしれない。


「どどど、どするの?」


 グルゼイとナルジオンの戦いは今のところ拮抗している。

 しかし両者共に強く、何かのきっかけで崩れればあっという間に勝負がついてしまうかもしれない。


「なんでこんなことをする! 目的を言え!」


「目的だと? ……いいだろう、教えてやる」


 時間をかければかけるほど争いによる犠牲者は出る。

 そう思ったネズミの獣人はニヤリと笑ってジケの質問に答えることにした。


「王になる……俺たち一族の願いであり復讐だ!」


「復讐?」


「俺たちトッラ族もかつては獣人の仲間としてこの地に住んでいた。しかし獣人どもは俺たちと一族を追放した! 俺たち一族は各地を放浪し……帝国に流れ着いた」


 ネズミの獣人は少しずつヒートアップしていく。


「俺たちの生活はひどいものだった。奴隷のように生きて何でもして生活していた。いつか俺たちを追放した獣人たちに復讐する……そのことだけを支えに生きてきたんだ!」


「この呪いもお前らがやったのか?」


「そうだ! とあるお方が知恵と力をお貸しくださった! 獣人どもを弱体化させ、帝国が飲み込むのだと! そして成功した暁には俺たちが獣人を支配するのだと約束してくれた!」


 興奮してきたネズミの獣人の目に狂気が見え始めた。


「俺たちが……俺が……王になるんだ。これまで虐げられた分、獣人どもから搾取してやるのさ」


「何だかあの人怖い……」


 ジケたちなら大丈夫そうと恐怖を振り払っていたピコは、ネズミの獣人に得体の知れない恐怖を感じ始めていた。

 復讐と口で言っているが、何だか底知れぬ欲望を感じさせる。


「もう少し……もう少し俺たちの悲願が成就する! 争いによって血に染まったバカな獣人どもは全部俺のモノになるんだよ!」


 何というのか、ネズミの獣人も呪われているみたいだとジケは思った。

 町に呪いが広がった最初の時のように、負の感情を刺激されて増幅されたような目をしている。


「みんな、俺が合図したら一斉にあいつに飛びかかれ」


 一人で語り続けるネズミの獣人に聞こえないように声を抑えて指示を出す。

 動いたらハビシンが危ない。


 ハルフは思わず声を出しそうになったが、今声を出せばそれこそハビシンが危機にさらされる。

 ネズミの獣人は抜け目なくハビシンにナイフを突きつけ続けていて、少しでも怒らせると突き刺してしまいそうな危うさがある。


 ジケには何か考えがあるのだと信じるしかない。


「……今だ!」


 何の脈絡もなくジケは合図を出して走る。

 リアーネ、ユディット、ユダリカもすぐさま反応して動く。


「なっ! ……お前、俺がやらないとでも思ってんのか!」


「ハビシン! どけ!」


「行きたいなら俺を倒してみせろ」


「この……!」


 ジケたちが動き出したことにネズミの獣人は逆上する。

 ナルジオンが刺される前にジケたちを止めようとしたが、グルゼイが割り込んでいかせない。


「死ね!」


「いやー! ハビシン!」


 ネズミの獣人は突きつけていたナイフを一度引いて勢いをつけると脇腹に突き刺した。

 いや、突き刺そうとした。


「な、何だ……?」


 ネズミの獣人に隙はなく、急に動き出すことは一見無謀な賭けのような行動に見える。

 しかしグルゼイにはジケの作戦が見えていた。


「くっ! なんで!」


 ナイフは突き刺さらなかった。

 硬い何かに当たって阻まれたのである。


 もう一度突き刺してみると刺さらない。

 今度は切り裂いてみると服しか切ることができず、中に金属のようなものが見えていることにネズミの獣人は気がついた。


「何だこれ……鎧?」


「それはな……フィオスだよ!」


「うっ……うわああああっ! 腕が!」


 ハビシンにナイフが通じないことに動揺しているネズミの獣人に接近したジケが剣を振る。

 ナイフを持っていた腕が斬り飛ばされて、ネズミの獣人は叫んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
>「いやー! ハビシン!」 この部分 いやー!な部分が棒読み感半端ない
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ