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【第十九章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第十六章

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浅ましきネズミの野望1

「これはこれで変な感じだねぇ〜」


 町中の至る所に人が倒れている。

 そこら中に血の跡もあって、倒れている人はほとんど顔を腫らしている。


 ただなぜなのか、みんなスッキリしたような顔をしていた。


「ジケ!」


「あっ、師匠!」


 町の中央にある広場に向かっていると反対側からグルゼイが走ってきた。


「これでいいのか?」


「あっと……」


 グルゼイは手に持っていたものをジケに投げ渡した。

 ジケがキャッチしてみるとそれは首を刎ねられた人形であった。


 見た目は獣人の女の子風のお人形であり、中にはふわふわとした毛が詰められていたようだ。

 だが表面には黒い何かで不思議な模様が書いてあって、可愛さは首を刎ねられていることも合わせてだいぶ損なわれている。


 これは呪いの魔道具だろうとジケも思った。


「多分これで大丈夫です。他の獣人、気絶しちゃいましたよね?」


「そういえばそうだな。かかってくる相手全て倒していたが……ここに来るまで誰も襲ってこなかったな」


 東に行くまでは結構襲われた。

 なのに広場に帰ってくる時には全く襲われなかったことにグルゼイも気がついた。


「とりあえず合流できてよかったです」


「どこに行くのか聞かなかったからな。とりあえず戻ってきたのだ」


 ナルジオンに対抗するように東に向かってしまった。

 ジケたちがどこに行くとか、どう行動して、合流をどうするかなど何も聞かなかった。


 失敗であったなとグルゼイも反省していた。

 ひとまず広場まで戻ってそこからどうするか考えようと思っていたところ、ジケと合流できたのである。


「これで南と西、それに東が終わった」


「ということは……」


「残るは北だね」


「ナルジオン……大丈夫かしら」


 ジケたちに同行していたハルフが心配そうな顔をする。

 グルゼイが単独で呪いの魔道具を見つけ出したのに、まだナルジオンの方は終わっていないようである。


 何かあったのではないかと不安に思ってしまう。


「分からないけど……とりあえず急ごう!」


 何はともあれ残されたのは北側だけである。

 ジケたちは北に向かう。


「邪魔だ」


 北側に向かうとまだ正気を失って暴れている人がいた。

 グルゼイは容赦なく剣の柄でアゴを殴り飛ばして気絶させる。


 暴れている人も少ない。

 正気を失っているせいで痛みに鈍感になっていても、不死でもないしダメージがないわけでもない。


 呪いにかかっていても限界を迎えれば戦えなくなる。

 あるいは完全に相手に負ければ気絶なんかさせられたりもするだろう。


 もしかしたら他の場所の魔道具が破壊されたために呪いの影響が弱まって、これまで蓄積したダメージによって倒れた可能性だってある。

 何にしてもいまだに争っている人の数は目に見えて少なくなっていた。


 次に争う相手を探してさまようボロボロの風体の獣人はもはやアンデッドとそんなに変わらない。


「さて……どこら辺かな?」


 まだ暴れている人がいるということは呪いの魔道具は無事だということである。

 同時に呪いの魔道具も近いということになる。


 呪いに惹かれた人が呪いの魔道具を守ろうと集まる。

 これまでと同じく人が集まっているところを探せばいい。


「向こうの方に少し開けた場所があるわ」


 南と西では道のど真ん中とかではなく、周りの建物が遠い開けたところに呪いの魔道具は埋めてあった。

 同じように開けた場所にあるかもしれないとハルフは思った。


「誰かいるぞ!」


「あ、あなた……?」


「一体何が……」


 ハルフの案内で向かったところに人が見えた。

 町中のそこら中に人が倒れているので気づいていなかったが、立っている人がナルジオンだと分かるぐらいに接近して気づいたことがある。


 倒れている多くの獣人はハクロウ族だった。

 その真ん中にナルジオンが立っているのだ。

 

 フェデミーを追いかけて町の外にいたハクロウ族たちは呪いの影響を受けていない。

 プクサが呼び出した獣人アンデッドを倒したハクロウ族たちは町中で暴れる人たちの制圧に動いていた。


 仕方なく気絶させるという方向で戦っていて、連携をとって上手く獣人たちを止めていた。

 しかしそんなハクロウ族たちはナルジオンを除いて倒されている。


「やったのはあいつか?」


 ユダリカが視線を向ける先にはプクサに膝をついていた獣人の姿があった。


「ハビシン……? 何であの子が?」


 その獣人の横にはハビシンがいた。

 ハルフは驚いた表情を浮かべている。


 対してハビシンはうつろな目をしていてボーッと視線を地面に落としている。


「何があったんだ……?」


 状況が分からない。

 ハクロウ族が倒れている理由もナルジオンがただぼんやりと立っている理由も。


「ナルジオン!」


「師匠!」


 振り向いたナルジオンは急にジケたちに襲いかかってきた。

 素早く反応を見せたグルゼイが突き出されたナルジオンの拳を剣で受け止めた。


「いきなり何するんですか!」


「悪いな……」


 呪いでおかしくなったのかと思ったが、ナルジオンは理性的な目をしている。

 グルゼイが剣を振ると、ナルジオンは上体を逸らして回避する。


 ナルジオンが反撃で拳を出せば、グルゼイは拳を見切ってかわして、さらに反撃した。

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