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【第十九章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第十六章

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呪いを解け!10

「流石に強かったな」


 リアーネはいまだに立ったままのトーギューにチラリと視線を向ける。

 すごく強かった、というのがリアーネの感想である。


 赤尾祭の女性部門では優勝も狙えそうだった。

 だから男性部門でも良いところに行けるのではないかと思っていた。


 しかし、ジケ無しであのままトーギューと戦っていたらリアーネは負けていただろう。

 甘く見ていたつもりはなかったけど、獣人たちはかなり強い。


 女性部門でもまだ優勝候補と当たっていなかったし、少し調子に乗っていたなと反省する。


「どう?」


「うん、良い感じだ」


 治療を終えてリアーネは肩を大きく回す。

 全く痛みもない。


 エニの治療魔法もだいぶ上達したものである。


「問題なきゃ次に行きたいけど……」


 どちらに行くか、ということが問題である。

 ここまで南、西とやってきた。


 北にはナルジオンが向かい、東にはグルゼイが向かった。

 一番危険そうなのは北側である。


 ナルジオンならば問題ないだろうとは思うが確実とは言い切れない。

 それはグルゼイの方も同じだ。


 今いるのは西側であり、単純な距離を考えた時に東にいるグルゼイのところよりも北のナルジオンのところの方が近い。

 どんな状況になっているのか分からない以上、判断も難しい。


 実はもう戦いは終わっていて魔道具を探している段階な可能性や逆に危機的な状況に陥っていることだって考えうる。


 危険度的なことで考えると優先は北である。

 距離も近い。


 ただ先に危険度がより低い西側を終わらせて、グルゼイと合流して北に向かうなんて考え方もある。


「ここでピコちゃんの頭脳が冴え渡る!」


「なんのナレーションだ?」


「ピコちゃんの頭脳の中のナレーションかな」


 判断がつかないジケの頬にピコの指がグニっと突き刺さる。


「ちなみにね、この町は縦に伸びた形してるんだよ」


 戦いはからっきしだが知識は負けない。

 ふふんとピコが胸を張る。


「だからなんだよ?」


「ここから北に行くのと、ここから東に行くのはそんなに変わらないんだね!」


 ピコは頭の中で地図を思い描いていた。

 ジケは綺麗な四角や丸のような形で町を想定しているが、よほど計画して作られた町でもない限りは綺麗な形をしている方が珍しい。


 獣人の町ヴィルディガーは元々も複数の部族が集まったところから始まった町だ。

 今でこそ町の形をしているが、はるか昔はまともな家もなかったのである。


 徐々に大きくなっていったヴィルディガーはやがて町になるのだけど、当然ながら区画を整備したりということはしなかった。

 好きなように部族が集まり、あるいは部族内でも人の数が増えて発展した。


 発展の仕方のためなのか、ヴィルディガーはやや縦に伸びた形をしているのだ。

 だから西から東と西から北の直線的な距離はそんなに変わらない。


「そしてピコちゃんオススメは先に東側!」


「理由聞いてもいいか?」


 こんな時に適当なこと言わないのは分かっている。

 ピコなりの理由があって口を出していることは間違いない。


「北西……ここから北に行こうと思った通るところ道が細くて複雑なんだ。北に行くなら一回真ん中に行ってから行く方がいいんだ。そうすると東に行った方が早いよねって話」


 西から北へ向かおうと思った時に通る町の北西部分は細かな部族が集まっている地域になっている。

 そのために地形としてやや複雑になっていた。


 ピコも細かな町の地形全てを把握してはいない。

 確実に、素早く北に移動するなら町の中央である広場まで行って、そこから北に向かう方が迷わない。


 それなら広場から北に行かないで東に行った方が近くて早いのだった。


「なるほどな。なら先に師匠と合流しようか」


 早くて近いなら東に向かった方がいい。

 ジケたちは東側に向かうことにしたのだった。

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