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【第十八章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第十六章

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呪いを解け!9

「リアーネ!」


「だ、大丈夫だ!」


 視界の端でリアーネが吹き飛ばされるのが見えた。

 ジケが気を失った人の足をはなして振り向くと、リアーネは慌てて地面から立ち上がりトーギューの攻撃をかわしていた。


 実際に山になっている人を全てトーギューが倒したとは思っていない。

 きっと町中と同じく激しく互いに争い合って、その中でトーギューが残ったのである。


 だとしても戦ったことに変わりはない。

 体力的にも削られていて、理性もだいぶ失われているはずなのにトーギューは強かった。


 殺せないという制約は意外と大きなものである。

 トーギューは強くてリアーネですら手加減をしている余裕がない。


 仮に本気で戦っても勝てるだろうかと疑問を持つような強さをしていた。

 だがここで情けない姿を見せるわけにはいかない。


 ジケたちが呪いの魔道具を見つけて破壊するまでの時間ぐらいは稼いでみせよう。

 そう思いながらリアーネは剣を構えた。


「ガアアアッ!」


 トーギューの太い腕が振り下ろされる。

 あまり経験したことのないような圧倒的なパワーはもはや魔物にも近い。


 リアーネは男性も含めて力のある方だと自負していたが、トーギューの力はさらにそれを上回る。


「はあっ!」


 一瞬の隙をついて振り下ろされたリアーネの剣はトーギューの肩をとらえた。

 けれど防御もしないで受け止めたトーギューはそのままリアーネの肩を反撃で殴りつける。


「ぐぅ! こいつイカれてんのか!」


 肩を殴られてリアーネも大きく後ろに押し戻される。

 鞘をつけたままとはいっても剣で殴られれば無事では済まない。


 けれどトーギューはリアーネの攻撃を耐え抜いて反撃してくるのだ。

 なんとも正気に戻った後の体が怖い戦法である。


「チッ……」


 そんなバカな戦い方でも効果はある。

 肩を殴られたリアーネは顔をしかめている。


 一撃で腕全体に力が入らなくなるほどのダメージがあった。


「こりゃちょっとまずいかもな……」


 リアーネはトーギューの攻撃をかわす。

 片手でも剣は振れるが、トーギューのパワーに対抗するのは難しい。


 両手で振り下ろした攻撃すら無視して反撃したのだから片手の攻撃も反撃のリスクが大きい。

 せめて呪いの魔道具を破壊するまでと思っていたけど、そこまで持つのか怪しくなってきた。


「まあ、やるだけやってやるよ!」


 今更情けなく助けを求めることもできない。

 リアーネはとりあえず回避しながら時間を稼ごうと思った。


「リアーネ!」


「ジケ!」


「うげっ!?」


 ジケがトーギューの頭を後ろから剣で殴りつけた。

 しかし、トーギューはほんの少し怯んだだけですぐに振り返りながら拳を振るう。


 どんな体をしていたら今のが平気なんだと思いながらジケは拳をかわす。


「大丈夫か?」


 ブンブンと振り回される拳をかわして、リアーネの横に立つ。


「……私一人でも…………いや、ちょっと危なかった」


 ジケには全部バレてる。

 変にプライドを持って虚勢を張るよりも素直になった方がいい。


「助けてくれて、あんがと」


「当然に決まってるだろ」


 リアーネのピンチに黙ってなどいられない。


「だいぶ人はどけられたからもう少し耐え抜くぞ」


「お前と一緒ならいくらでも耐え抜けそうだ」


 リアーネがトーギューの正面に立ち、ジケは横に回り込む。

 無理に倒そうとしなくてもいい。


 時間を稼いで呪いの魔道具を見つけられればジケたちの勝ちだといってもいい。

 リアーネが注意を引きつけながらも、ジケが横から攻撃して注意を散らす。


「ジケ! なんかあったよ!」


 人の山をどけて、シャベルで地面を掘った。

 南と同じく土の中から木の箱が出てきた。


「何これ……気持ち悪いね」


 箱の中に入ってきたのは奇妙なお面であった。

 何かの化け物が威嚇するような顔をしている。


 目のところにも穴は開いておらず、装着して使うお面でもなさそうだった。

 奇妙なお面もなんだか嫌なものを感じさせる雰囲気がある。


「こんなもの!」


 ユダリカがシャベルの先でお面を叩き割る。


「どうだ?」


 お面を叩き割ると嫌な感じが無くなっていく。

 ユダリカがジケとリアーネの方に視線を向ける。


「……立ったまま気絶してる?」


「……とんでもねえな」


 呪いのお面が割られた瞬間、トーギューは理性的な目をした。

 しかしトーギューは白目をむいて倒れることなく動きが止まった。


 どうなるのかジケとリアーネは警戒していたが、トーギューは立ったまま動かなくなってしまう。

 なんとトーギューは倒れることなく気を失っていたのだ。


 呪いが解けた反動に加えて、ここまで戦ったダメージもある。

 一気に訪れた衝撃に耐えきれず気絶はしてしまったのだけど、決して倒れないという強い意思を感じさせた。


 赤尾祭の参加登録の時はただ嫌な感じの人だと思ったけど、ここまでくると逆に感心してしまう。


「リアーネ、大丈夫か?」


「ちょっくら肩やられた……」


「エニ!」


 リアーネは肩を押さえて青い顔をしている。

 こんなふうにやられるのはかなり珍しい。


「任せて!」


 まだ町を覆う不穏な気配は晴れていない。

 グルゼイとナルジオンの状況は分からないけれど、どちらか、あるいは両方まだ終わっていない可能性がある。


 次に行かなきゃいけないのでエニがリアーネの治療をする。

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