呪いを解け!6
「人間……俺は……負けてない!」
「あのガキ……ぶっ殺してやる!」
「ちょ……聞いてないって!」
「ジケ君モテモテ」
「厄介なのにモテてるわね」
戦っていた三人もジケたちに気づいた。
最初に計画していたように、それぞれ相手を引きつける予定だった。
しかしあろうことか、アコアンとマクベアはジケの方に向かったのである。
人間だから、ではない。
ジケだから、追いかけている。
血走った目をした二人に迫られて流石のジケも慌てる。
アコアンは赤尾祭の最中に襲いかかってきたことも記憶に新しい。
ジケの方に向かってきても仕方ないと思えるのだけど、マクベアまで目の色を変えて襲いかかってくるのはちょっと予想外だった。
せっかくヒール的な勝ち方でプライド守ってやったのにとちょっとだけ思う。
トラノスの方はユディットに向かっていっていた。
「ちょ……ユダリカ!」
「お前の相手は俺だよ!」
アコアンとマクベアの激しい攻撃に耐えながら、せめて一人は誰か引き取ってほしいとユダリカを呼ぶ。
追いかけられても面倒だが、やる気満々だったのに無視されてしまうことはかなりムカつく。
ユダリカは思い切り剣をスイングして、マクベアの頭を殴りつけた。
「卑怯な手で戦って勝ったと思うなよ!」
他の獣人と戦って体力を削られていなきゃマクベアにだって勝てていたとユダリカは思っている。
「卑怯だと? 敗者が何を言っている!」
ユダリカの物言いにマクベアが苛立ちをあらわにする。
ジケのことも簡単に忘れてユダリカの方を向いた。
「リアーネ、穴掘り頼む!」
マクベアとユダリカには一度戦ったという前提がある。
しかしリアーネとアコアンの間には何の関係もない。
引きつけることはやはり難しいかもしれないとジケは自分が戦うことに決めた。
「穴掘るったってどうしたら」
「シャベル、使えばいい!」
「シャベル? そんなもの……どっから持ってきた?」
「いつの間に?」
ピコがシャベル片手にドヤ顔をしている。
いつの間にそんなものを持っているのだとリアーネもエニも驚いてしまう。
「雪かきのやーつ。そこにあったから持ってきた!」
ピコちゃん、機転がきく。
頭脳仕事は終えたので、力仕事は任せたとリアーネにシャベルを渡す。
「わーたよ」
リアーネがシャベルで丸く溶けた雪の真ん中を掘り始める。
一瞬三人がピクリとなったけれども、それでもそれぞれ戦いを継続していた。
「そんなに負けたの、悔しかったかよ!」
アコアンは腕がちぎれそうなぐらいの勢いで腕を振り回している。
ジケは回避に専念してアコアンの隙を狙う。
別にジケはアコアンに執着していない。
アコアンを倒せなくとも、リアーネの手が空けば助けに来てくれて止められるだろうなんて考えている。
もしかしたらユディットやユダリカの方も先に戦いが終わるかもしれない。
ジケが無理にアコアンを倒す必要だってなかった。
「ふげっ!」
「隙だらけだな!」
よくよく見るとアコアンの頬は腫れている。
もうすでに三人で一戦交えているところにジケたちがやってきた。
三人の実力は近く、意外と消耗した状態であった。
ジケ憎しで襲いかかってきたものの、すぐに体力的な限界がアコアンに訪れている。
ここがアンデッドと生きている人の違いだ。
疲れるし、どうしても無理は続かない。
ジケにアゴを殴り上げられて、アコアンは大きく後ろに倒れる。
アコアンたち三人の実力は近いけれども、やっぱり比べてみるといくらかの差はある。
今の段階で純粋に実力を比べると一番劣るのはアコアンだった。
三人での殴り合いになれば劣るアコアンの消耗が激しいことは言うまでもない。
加えてジケとの戦いで負った傷も癒えていないのだ。
「ぐっ……くそ…………」
「悪いけど寝ててもらうよ」
目がチカチカとして体に力が入らないと思いながらも、アコアンは体を起こした。
「俺は……一番強い……」
ある程度手加減しながらもジケはアコアンの頭を剣で殴り飛ばした。
殴られたアコアンは手を伸ばしてほんの少しの抵抗を見せたけれど、そのまま白目をむいて糸の切れた人形のように地面に倒れて気絶した。
「強くなりたいなら冷静に。そして相手を見下さないことだな」
アコアンは苛烈ですぐにカッとなる性格をしている。
戦う時には常に頭は冷静であれ、とグルゼイによく言われていた。
怒ったとしても、頭の芯の部分の冷静さを保つことが必要なのである。
ジケとの対戦ではジケを見下した挙句に手痛い攻撃を受けて負けた。
油断するというところと冷静さには繋がってくる。
「そんな性格だから……呪いが影響したのかもな」
ジケが勝った後、赤尾祭の中でアコアンはジケを襲撃した。
尋常じゃない様子をしていたけれど、呪いの影響を受けてる今の様子はその時と似ている。
何かのきっかけでアコアンに呪いが影響を与えて、我慢し切れずにジケを攻撃してきたのかもしれないと思った。
「それにしても意外とあっさり終わっちゃったな」
「おい、ジケ! なんか出てきたぞ!」
アコアンが気を失ったことを確認しているとリアーネが土の中に何かを見つけた。




