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どんな苦境でも1

 朝ご飯も昨夜と同じものだった。

 地下では分からないけど朝になって、またご飯を持ってきたプクサ。


「上の様子はどう?」


「変わりはありません。


 ですがあまり時間はないようですね」


「というと?」


「このように子供やなんかを誘拐してきたところが何ヶ所かあるみたいです。


 他のところも準備ができつつあると話しているのをこっそり聞きました」


 つまりは他にもこんなところがあって誘拐された人がいる。

 気分が悪くなる話だけど今は自分の身すら安全を確保できていない。


「なのですぐにあなたたちを逃してしまいましょう。


 こういうのはさっさとやるのがいいものです」


「そうだな、それは俺も賛成だ」


 昨日は気絶してしまった子供たちも2日連続で動く骨を見れば多少は慣れてもくる。

 怯えているけれど気絶まではしないで出来るだけプクサから距離をとって朝食を食べている。


「では行きましょうか」


「早いな」


「彼らは朝に弱いので大体まだ寝ています。


 逃げるならこの時間が1番いいのです」


「なるほど、分かった」


「みなさんの武器が置いてあるところもすぐ近くの部屋にありましたのでまず案内します」


 本当に大丈夫なのか。

 そんな疑問を持つ子もいた。


 でもこんなところにいたくはないし、ほかに方法もない。

 それにジが見ていて優秀なことは分かっているので逆らう気もない。


 プクサを先頭にゾロゾロとついていく。

 階段を上がり地下から脱出するとそこは館だった。


 手入れがされていて綺麗。

 だけど人の気配を感じなく、どことなく寂しい感じがする。


 廃墟でないだけマシかとジは思う。


 地下に繋がる階段横の部屋。

 鍵もない部屋の中の机の上に無造作にみんなの武器が置いてあった。


「ありがとな」


 せっかく武器にと思った鉄格子の槍は出番もなくその部屋に置いていかれることになった。


「よかった〜!


 お前にもらったナイフもちゃんとあるぜ!」


 ラはジからもらったナイフを日頃から身につけていた。

 もちろん武器を取り上げられていたのでナイフも取り上げられていた。


 普通の剣なんてどうでも良くてもジからもらったナイフだけは心配だった。


 もっとこっそり出るものかと思ったけれど案外大胆に中を進んでいく。


「こちらから出てください」


「……ありがとう」


 まさかとは思った。

 しかし本当に玄関から堂々と出ることになるなんてジも全く考えていなかった。


「それとこれを」


 プクサはジに折り畳んだ紙を手渡した。


「近くにある町を簡単に地図にしていくつか描いておきました。


 これであいつらがどんな顔をするのか想像すると笑いが止まりません」


 笑っているようにはとても見えない。

 声もずっと平坦に話しているし最後までプクサの感情が分からなかった。


「早く行ってください。


 あいつらの行動は分かりません。

 見に行ってすぐにバレるかもしれませんし、もしかしたら気づかないかもしれません」


「本当にありがとう」


「気をつけてください。


 では」


 感情はわからなくても危険を冒して助けてくれた。

 この事実で十分であり、ジは早くプクサを支配から解放してあげたいと思った。


 まずはこの館から見えるとこから移動する。

 ローブの男が起きて朝日を浴びる習慣があるとはとても考えられないが館を出られた余裕にひたっている場合ではない。


「これからどうするつもり?」


「まずはここがどこなのかちゃんと確認する必要がある。


 それで帰れそうなら帰るし、厳しそうならもっと他の方法を取るよ」


「じゃあどっか町に行くのか?」


「とりあえずはそのつもり」


 ある程度離れたところでジは貰った地図を開く。

 簡単に町と森などの分かりやすい地形が描いてある。


 絵心があって簡略化された地図なのに分かりやすい。


「1番近いのは……ここの町かな?」


 エが地図を指差す。

 館からさほど遠くもないところに1つ町がある。


 地図上じゃ町の規模はまで確認することはできないが人はいるだろう。


「いや、1番近い町には行かない」


「なんで?」


 エが怪訝そうな顔をする。

 早く人に助けを求めるべきで、まともなところで早く休みたい。


「行くのはそうだな……3番目の町にしよう」


 館に近い町はローブの男の仲間がいたり、何かしらの関わりがある可能性がある。

 それに近い町に向かうなんて子供の考えそうなこと、抜け出したことがバレたらまずいそうなところから探すに違いない。


 3つ目の町だと少し遠いが子供たちがいきなり近いところから見て2つ町をすっ飛ばすなんて考えつかないだろう。


 みんなに3つ目の町に行くことを伝えると一様に不満そうな顔をする。

 ジもさっさと人里に行きたいのは同じ気持ちだから怒るような気もない。


 変に知識や体力のある大人同士の集団だったらここで分裂も起きていただろう。

 けれどここにいるのは子供ばかりである。


 何より貴族としての格が高いリンデランやウルシュナがジに従っているので他の子供たちも何も言えずに従っていた。


「絶対に生きて帰るんだ。


 みんな、行こう」


 ジを先頭にして歩いていく。

 方角もわからないので地図と睨めっこしてそれっぽい方向に進んでいく。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

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評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
[一言] 大勢の知らない子供がやってきたらそれだけで町は噂が流れそうだ。
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