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【第十八章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第十六章

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呪いを解け!3

「よっ!」


 ナルジオンがオオグマを、グルゼイやリアーネが獣人アンデッドを相手してくれている間に、ジケはステージを破壊していた。


「応援は禁止されていないので応援します。頑張ってください」


「それならもうちょい応援してる感じ出してくれよな!」


 プクサの声はかなり平坦で感情が感じられない。

 応援してくれているらしいが、応援してもらっているような声のトーンではないのだ。


「頑張れ、頑張れ」


「これか!」


 プクサの声援を受けてステージを破壊すると、ステージ下から大きな石が出てきた。

 表面には何か文字のような模様が刻んであって、模様はうっすらと青く光っている。


 なんだか見ているだけで嫌なものを感じる。

 プクサに聞くまでもなく呪いに関するものだとジケでも分かる。


「いくぞ、フィオス!」


 ジケはフィオスをつけた剣を振り下ろす。

 ガキンと大きな音がして石が真っ二つに叩き割れる。


 石の模様が放っていた光が消えて、同時に嫌な感じもなくなる。


「お疲れ様です」


 残っていた獣人アンデッドが倒れていく。


「私の命令はこれで終わりです。私はこのまま逃げますので」


「その魔物を逃すつもりなのか?」


 ジケがそばにいる。

 だから機会を窺っていたナルジオンは険しい顔をする。


「ちょっと事情がありまして……」


「そいつはリッチ。魔物であり、この状況を引き起こした張本人だろう!」


 プクサが何者で、どういった話をしたのかナルジオンは知らない。

 プクサを見逃すことはグルゼイですら完全に納得していないのに、経緯を知らないナルジオンが許すはずもない。


 そもそも経緯を知ったところで納得するかも分からない。


「信用できないというのは分かります。ですが俺のことを少しだけ信じてくれませんか?」


「人間の貴様を信じられると思うのか!」


「ハビシンのことだって治しましたし……」


「お前がそのリッチと組んでいるかもしれないだろう」


 言ってしまえばジケたちが特殊なのだ。

 普通の人はリッチなど信用しない。


 リッチを信用するジケのことを信用して任せようなどと考えはしないのである。

 ナルジオンのようにリッチは敵だと思う方が普通といえる。


 ましてリッチを見逃そうとするジケが、人間だということも相まって敵に思えても仕方ない。


「いいんですか?」


「なんだと?」


「今こうしている間にも呪いの影響で争いは広がっています。獣人たちは互いを傷つけて、失う必要のない命が失われていきます」


「お前がやったのだろう! ならばお前を倒せば全てが終わるはずだ!」


「私を倒しても終わりませんよ。呪いはすでに広まっています。発動させたのは私ですが、斜面を転がり落ち始めたボールは勝手に止まらないのと同じですよ。ボールを押しただけの私を倒してもボールは止まらないです」


 ナルジオンの殺気を向けられてジケは苦しいぐらいに感じていたが、プクサは平然としている。


「今はボールを止める時ですよ」


「ならばお前を倒した後にボールを止めればいい」


「その間に何人死にますか?」


「貴様……」


「ナルジオンさん! 今はプクサと争っている場合じゃないんです!」


「黙れ!」


 ナルジオンの気持ちも分かるが、プクサの言う通り言い争っている時間もない。

 どうしたらいいのだとジケは渋い顔をする。


 話の通じないナルジオンにグルゼイも苛立っていることを感じる。

 このままだとプクサとナルジオンどころか、グルゼイとナルジオンの戦いにもなりかねない。


「あなた!」


「ハルフ! どうしたのだ!」


「ごめんなさい……他の部族に助けを求めようとしたのだけど……みんな正気を失っていて……」


 ハルフは顔を大きく腫らしていた。

 プクサを相手にするために他の部族に助けを求めに行ったのだが、他の部族もすでに正気を失って争っていた。


 正気に戻そうと声をかけてハルフも攻撃されてしまったのである。

 仲間内で争い始めたので、その間にハルフは逃げてきたのだった。


「この状況をどうにかしないと……」


「くっ……」


「言ったでしょう? ボールを止めますか? それとも私と戦って時間を浪費しますか?」


 ライフベッセルを破壊しない限り、リッチを倒すことは容易でない。

 プクサが抵抗しないとしても、実際にプクサを倒すまでに時間がかかってしまう。


「どうすれば止められる?」


「この町の東西南北の四カ所に呪いを維持する魔道具があります。それを破壊してください」


「壊せばいいのだな?」


「ただし気をつけてください。呪いに刺激された人たちが魔道具を守ろうとするでしょう。その代わりに行けば大体どのあたりにあるのかは分かり易いでしょう」


 ただ破壊すればいいということでもない。

 呪いの影響で呪いの魔道具を守ろうとする人がいるだろうとプクサは言う。


「どれだけの人が影響を受けているかは分かりません。魔道具に近い人、強い人、欲求の深い人など色々な条件に依りますから」


「ナルジオンさん、俺たちも魔道具の破壊に協力します」


 プクサと戦うことに迷いが生じている。

 畳み掛けるなら今だ。


「……分かった。お前のことを信用してみよう」


 この状況で信用できそうなのが人間だけ、というのは何ともおかしな話であるとナルジオンは思う。

 しかしナルジオンにも他に選択肢がないことは分かる。


 もうジケたちを頼る他に方法はないのである。

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― 新着の感想 ―
ナルジオン、王の器じゃねぇな 大丈夫かこの国
もう止まらんよ。流れ始めたエネルギーと同じだ
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