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【第十九章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第十六章

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呪いを解け!1

 立ち上がったオオグマの胸の傷から血が噴き出す。

 ウツロで何も映し出さない目をしたオオグマはゆっくりとジケたちの方を振り返った。


「魔道具、破壊するんじゃないのか?」


「ええ、その通りです。ですが魔道具を守るのが私に押し付けられた命令。なので早く魔道具を破壊してください」


 今は魔道具を守れという命令を受けていて、魔道具を守らねばならない。

 魔道具を破壊してくれと言いながら魔道具を守るという矛盾をプクサは抱えていた。

 

 ただ魔道具を破壊してもらえば命令は実行不可となり、命令は無くなる。

 だから破壊してほしいということなのだ。


「戦うのは心苦しいですが、頑張ってください。命令なので」


「うぅ……と、とりあえず敵は一体……」


「まだいますよ」


 オオグマだけなら何とかやり過ごして魔道具を破壊できるだろう。

 そう思っていたらステージの外で立ち上がる獣人の姿が見え始めた。


 オオグマと同じヒコクグマ族の人たちだが、オオグマと同じく何も映さない目をしている。


「これって全員……」


「死んでますよ。勘違いしないでいただきたいのは私が殺したわけでないということです」


「じゃあ誰が?」


「先ほど私に膝をついていた人です。私の方が上のように見えますが、あちらの方が上ですよ。悪意も全て」


 そういえば広場に到着した時に誰かがいた。

 すぐにどこか行ってしまったので顔も見ていないが、その人がオオグマを含めて殺したのであった。


「何でそんなことを?」


 オオグマは仲間だろう。

 なのにどうして殺すことがあったのか理解できない。


「血が必要だったのですよ。この呪い発動させるために」


 呪いとは結構特殊なことも多い。

 呪いらしく残酷な行いを始まりにすることもある。


 今回は呪いのために魔力を多く含んだ血が必要だった。

 その犠牲になったのがオオグマなのである。


 血も涙もないことをするものだとジケは顔をしかめた。


「つまりです。この血の下に魔道具があるということです」


 プクサも魔道具の正確な位置は知らなかった。

 けれど血が必要で、オオグマの血が与えられているのなら、今オオグマの血が流れている場所に魔道具があることは簡単に予想できる。


「ジジジジ、ジケ君! 話してる暇なさそうだよ!」


 会話している間にもヒコクグマ族の獣人アンデッドはステージ上に這い上がってきている。

 オオグマこそ動いていないが、このままでは囲まれてしまう。


「……とりあえず魔道具を破壊しよう! 話はそれからだ!」


 分からないことも多く、色々聞きたいが時間もない。


「フィオス!」


 ジケはフィオスを盾にする。


「あのマヌケを叩き斬ればいいのだろう?」


 先に飛び出したのはグルゼイだった。

 獣人を裏切り、そして自身が裏切られて殺された哀れなオオグマに同情する気もない。


 さっさと切り捨ててこの事態を終わらせるつもりで剣を振り下ろした。


「むっ!」


 オオグマはグルゼイの剣をかわした。

 そして反撃で腕を振った。


 離れていたジケたちにも風を切るような轟音がしっかりと聞こえた。


「ただの死体だとは思わないでください。その人、強いので結構大変ですよ」


 オオグマが咆哮した。

 腕を振り回してグルゼイに襲いかかる。


「速いし……割と理性的に戦ってるな」


 空気切り裂く剛腕は乱雑に振り回されているように見えて、ちゃんとグルゼイの行動の先を読んでいる。

 プクサが単に操っているだけではない動きをしている。


「ある程度、私の統制下にありますが戦いそのものは得意でないのでご死体に任せています。生前の経験を元に戦うので人によっては強いですよ」


 全ての死体の動きを制御なんてしていられない。

 戦いは死体に任される。


 実際にどう動くかは死体が持っている戦いの経験による。

 オオグマは生きていた時の経験を元にして戦っている。


 オオグマは部族会に所属している。

 部族会は実力を認められた人しか入ることができない。


 かつて赤尾祭にも優勝したことがあるほどの実力者であるオオグマは、たとえアンデッドになったとしても強かった。


「少しばかり厄介だな」


 それでもオオグマの攻撃はグルゼイにかすりもしない。

 グルゼイはわずかな隙をついてオオグマを斬りつけるが、オオグマは全く意に介さず攻撃を続ける。


 もう死んでいる存在のアンデッドなのだから痛みなど感じない。

 少し切りつけられたところで何の影響もないのだ。


「ユディットとユダリカはエニとピコを守ってくれ! リアーネ、俺と一緒に行くぞ!」


「死んだふり……通じないかな?」


「多分ダメだからやめときなさい」


「じゃあエニちゃんの背中はピコちゃんが守る……!」


 一方でジケたちの方にも獣人アンデッドが迫っていた。

 エニとピコはユディットとユダリカに任せて、ジケはリアーネと一緒に魔道具を狙う。


 この中で最も戦闘力がないピコはエニの背中に隠れるようにして大人しくしていることを決めた。


「邪魔だ、どけ!」


 リアーネが剣を横に振るう。

 赤尾祭を勝ち上がっていたリアーネは、もう少しで決勝だったのに! というちょっとした怒りもあったので結構強めの一撃である。


 生前の経験で戦うといってもアンデッドになった以上、生前の力の全てを発揮できるわけもない。

 ギリギリリアーネの攻撃を防いだ獣人アンデッドは、力を受けきれずにステージの外に吹き飛んでいく。

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