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【第十八章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第十六章

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負の感情が生み出す呪い1

「呪いの始まりは雪山だ」


 呪いの力は水のように流れる。

 だから正しい知識を持った術者がいないとコントロールが難しい。


 町の中心である広場はほんのわずかに低くなっている。

 呪いを流してハビシンを苦しめるのに、どこからか呪いを流し始める場所がある。


 低い広場に流すためには高い場所が必要だ。

 町の監視塔は違った。


 ならば町のすぐ脇にある雪捨て場の高く積まれた山の頂上が呪いの始まりとして怪しい。

 ただ確証はなかった。


 けれど、ハビシンがいる家から飛び出してきたフェデミーと数名の獣人が雪山に向かっていて、ジケは間違っていなかったのだなと確信した。


「キバシロの言うことによればあいつらが犯人で間違いない。今すぐに八つ裂きにすべきだ」


「まだですよ」


「なぜだ?」


 キバシロとはトシェパの父親で、ナルジオンの義理の兄となる人だ。

 赤尾祭の会場でハルフと合流できたのでハクロウ族の助けを借りることにした。


 ハルフを伝言役としてナルジオンにも起きたことを伝えてもらい、きっと犯人がハビシンの様子を確認しに行くために監視してほしいとお願いしたのだ。

 キバシロがこっそりと家に入り込み、他のハクロウ族たちは見張りたちに見つからないようにさらに外から監視をしていた。


 オオグマとフェデミーが言い争いながらやってきて家に入り、今度は別れてどこかに行ったので追跡していたところである。

 後から合流したキバシロが家の中での会話をナルジオンに伝えると、ナルジオンは怒り狂った。


 可愛い一人娘に呪いをかけていたのだから怒っても当然である。

 今にもフェデミーを殺しに行ってしまいそうな雰囲気だが、ジケ個人的にはフェデミーやオオグマが真犯人だとは思っていなかった。


 呪いを知っている誰かが後ろにいる。

 加えて呪いの始まりがどこなのかもまだ分かっていない。


 雪山全てを掘り返すなんて面倒なことしたくはないし、フェデミーが呪いの始まりに案内してくれるならこっそりついて行くべきである。


「今ならまだ奇襲できる。あいつの腕をへし折って口を割らせればいい」


 町の外に出て雪山に向かえば身を隠す場所もなくなる。

 そうなれば結局バレてしまうのではないかとナルジオンは言う。


「……まあ確かにそうですけど」


 できるならフェデミーを最後までこっそりつけていって呪いの始まり、つまりは原因となっているものを見つけてしまいたい。

 しかしこれ以上追いかけるともう後はただ後ろをついて行くだけとなる。


 相手が振り返らないように祈るだけで、確実に最後までバレない保証がないどころか、かなりの確率でバレることだろう。

 それならば捕まえて吐かせてしまうのも一つの手である。


「……お任せします」


 結局これは獣人の問題である。

 最終的に呪いの始まりが分かればいいのだからジケはナルジオンに任せることにした。


「それでいい」


「……あいつ! みんな続け!」


 任せるという言葉を聞いた途端にナルジオンはフェデミーに向かって走り出した。

 町の外に向かうほどに足元も雪深くなるのに、そんなことも関係ないほどに速い。


 キバシロたちが慌ててナルジオンを追いかけるけれど、雪の上を走る白い狼は瞬く間にフェデミーに迫っていた。


「なん……」


 ナルジオンの接近に気づいてフェデミーが振り返る。

 ただもうそれは遅かった。


 ナルジオンの拳がフェデミーの横面にぶち当たり、ほんの一瞬フェデミーの顔面が大きく歪んだ。

 フェデミーもかなり体格がいいのに、ナルジオンの一撃によって雪を巻き上げながら吹き飛んでいった。


「強い……」


 ただ君臨しているだけなら王ではないのに王と呼ばれるはずもない。

 ナルジオンが狼王と呼ばれるのは、王と呼んでも差し支えがないほどに圧倒的な力を持っているからだ。


 圧倒的な力はナルジオンがただの力にしておくこともできるし、あるいは望めばそれは権力にもなりうる。

 オオグマの部下たちがナルジオンに襲いかかる。


 赤尾祭と違って刃の立った金属の槍や剣を使って殺す気で攻撃した。

 対してナルジオンは素手だった。


 腰に剣を差しているがそれを抜くこともなく、オオグマの部下たちは次々と殴り飛ばされていった。

 キバシロたちが追いつく頃には相手はもう戦意喪失していた。


「情けない……」


 抵抗するなら最後まで。

 しないのなら最初からしなければいいのにと、ナルジオンは侮蔑の目で武器を投げ捨てたオオグマの部下たちを見る。


「フェデミーは?」


 最初に殴り飛ばされたフェデミーは山を登るようにぶっ飛んでいった。

 力加減も少なくて、どこまで飛んでいったのか分からない。


「あ、あれ!」


 ピコがサッと山の上の方を指差す。

 あんな一撃を受けたのにフェデミーは気も失っていなかった。


 口から血を流しながら雪山を登っていたのである。


「く……くそっ!」


 どうしてバレたのだとフェデミーは考えながらも足を動かす。

 頭の悪い獣人たちに何かを気づかれることなどないだろうと考えていた。


「あの……人間か!」


 ナルジオンが追いかけてこないかと後ろを振り返ってジケのことが見えた。

 計画における変数、急に現れた不安要素。


 そういえばハビシンのところにも行っていたことをフェデミーは思い出した。

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