スライムも頑張る6
「お前はいっつもそうだ。
自分は後回しで周りのことばっか面倒見て……ちっとは大人になったかと思ったけど、お前はお前だな」
「なんだよそれ、褒めてんのか?」
「褒めてんだよ」
「いい話にしてるんじゃない!」
「いでぇ! なんで俺なんだよ!」
変なことを言うジを怒ろうとしたエだったけど会話をラに取られた。
なんかいい感じに話を持っていってしまったラをエが蹴りつける。
「あんたのこと私が見捨てるわけないでしょ!
なんで、そんなこと言うの……」
「えっ、ちょっと待って……な、泣かないでくれよ」
わーッとなって、ボロボロになって運ばれて死にそうになっていたジを思い出して、エは泣きだしてしまった。
明らかに原因は自分にあるけどジはどうしたらいいのか分からない。
のろけた冒険者は抱きしめて甘い言葉を囁けばそれでいいなんて言って周りの仲間に冷やかされていた。
ラを見るとオマエノセイダという視線をジに向けているしワタワタとジは泣くエの前で困惑する。
「えっと……うっ、エ?」
わたついているとエがジの胸ぐらを掴む。
「私は! 私はあんたのこと見捨ててなんていかない!」
「お、おう……」
「なによ、そのリアクション!」
過去のエは聖女だった。
お淑やかで穏やかでみんなに好かれている人だったのに。
いや、これが本来のエか。
望まれる姿を演じて悲しさを押し殺して生きていた。
優しいことに変わりはないのだけどちょっとだけ粗暴で素直な感じでそれを表に出すことができないのがエだった。
過去では出ていった後はしばらく会わなくて丸くなった後のエのイメージが強い。
ただこんな熱い感じの女の子だったか分からない。
まあ、ジも変わったし、エもそれなりに変わることもあるとは思う。
「……ありがと」
「くぅ……絶対あんたズルくなった!」
そんなに力も入っていないので掴まれていても苦しくはない。
心配してくれることが嬉しくて微笑むような表情のジにエが顔を赤くする。
なんだかジにドキドキすることがある。
たぶん魔獣契約の時から。
いきなり抱きしめてきたりなんかするから変に意識してしまう時が時々ある。
勝手にドキドキさせられてエはジがズルくなったのだと、だからこんなにドキドキするのだと、そう思った。
何がズルいとかそんなものは分からない。
ただ、ズルいのだ。
「俺もエのこと守るからあんまり無茶はすんなよ?」
「ばっ……ばっかじゃないの!」
「あ、ちょ……苦し……」
エの手に力が入り首が締まる。
「……俺も2人を守れるようにならなきゃいけないな」
ラの呟きは誰に聞かれることもなかった。
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