呪い、カエル3
「分かったよ」
可愛らしい追加報酬にジケも応える。
「それでどうなった?」
フリフリとピコの尻尾が振られる中、呪いカエルさんはどうなったのか尋ねる。
「あの変なの、オオグマさんの近くにいた人に黒いの吐き出して……そしたらその人が血を吐いて倒れちゃった!」
とりあえず、ジケが何かしたのだろうことはピコにも分かっている。
ただ人が急に血を吐いて倒れるような何かなんて分からない。
「成功したようだな」
「何をしたの? ピコちゃん、驚いたんだから……」
「何をした……か。あえていうなら自分がしたことの報いを受けたってところかな」
「……ううん?」
「ここで話すのもなんだから、少し静かなところに行こう」
騒がしいので誰も聞いていないように思える。
しかし、騒がしさの中では誰が何を聞いているか分からない。
ジケたちは赤尾祭の会場から離れて、人気のないところに移動する。
「俺が……ていうよりあのカエルが呪い返しだよ」
「呪い返し?」
「そうだよ。ハビシンの中にあった呪いを、呪いの術者に返すのが呪い返し」
「ふぇ〜」
「ハビシンの中にあったってことは、ハビシンの呪いはなくなったのかしら?」
「今のところはそうです」
「今のところは?」
ピコは呪い返しがよく分かっていないようだが、ハルフはジケがやったことをなんとなく理解したようである。
「ひとまず呪いをかけた相手は呪いカエルさんが呪い返ししたので、しばらくは動くことができないでしょう」
「じゃあ後は何が問題なのかしら?」
「後は場所にかける呪いが残っています」
「となると……ハビシンを移したほうがいいってこと?」
「その通りなんですが……」
「何かあるのね?」
場所にかける呪いはそのまま呪いがかけられている場所にいると呪いの効果が及んでしまう。
最も単純な対処としては場所を移動してしまうことだ。
場所にかけられているのだから、違うところに移動してしまえばいい。
しかしそれでは問題がいくつかある。
「おそらく犯人は呪いカエルさんでやられた人だと思うんですけど、単独犯でやってるとはとても思えません」
「その、呪いカエルさんって何?」
「いいから黙ってなさいよ」
平然と呪いカエルさんという固有名詞を出しているが、その不思議な名前はなんなのかとピコは首を傾げる。
けれど今そんなこと説明している雰囲気でもないのでエニに怒られた。
「複数犯なら他にも呪いがかけられる人もいるかもしれませんし、場所の呪いがハビシンという行き先を失うとどうなるのか俺には分かりません」
「ならどうするの?」
「罠を張りました」
「罠?」
「体の不調が呪いによるものだってのは、呪いを使う人なら分かるでしょう。そうなるとハビシンに異常が起きている可能性は考えるはずです。ならきっと、ハビシンの様子を確かめにいくはずです」
あえてハビシンは家から連れていかなかった。
囮にするというと聞こえは悪いが、ハビシンの様子をきっと確かめに来るはずだとジケは考えた。
「じゃあ来たところで……」
「いえ、ひとまず泳がせましょう」
「なぜかしら?」
ハビシンの様子を見にきたところを一網打尽にする。
ハルフをそう考えていたけれど、ジケの考えは違った。
「場所にかけられた呪い。その設置場所を知らなきゃ別の被害者が出るかもしれません」
今はハビシンが狙われているが、本来場所にかけられた呪いは広くその場所にいる人に呪いがかけられる。
ハビシンの対処をするだけでなく、ちゃんと呪いそのものの元を断たねばならない。
「だから罠を張ったんです。きっと相手は呪いが正常に作動しているか確認することでしょうね。とりあえず相手を追いかけるためにも協力してほしいんです」
「なんでもするわよ。呪いなんて卑劣なことするなんて獣人の面汚し生かしておけないわ」
ハルフの目が怒りに燃えている。
「よし、じゃあすぐに行動開始だ」
「おー! ピコちゃんもがんばるぞ!」




