呪われた白い子8
「それじゃあ動かないで」
ジケはハビシンの頭の上に呪いカエルさんを置く。
なんか触るのが嫌でハビシンはミミを離れさせるように倒して、微妙な渋い顔をした。
「うわっ、なんか動いた!」
ただの置物に見えたのに、呪いカエルさんはカッと目を見開いた。
そして大きく口を開けた。
「な、なになに!?」
コー、と音がして呪いカエルさんは息を吸い込み始めた。
するとハビシンの体から黒いものが染み出すように出てくる。
呪いカエルさんの口の中に黒い何かが吸い込まれていって、呪いカエルさんの体がまるまると膨らんでいく。
「お、重い……」
パンパンに膨らんだ呪いカエルさんはハビシンの頭と同じくらいの大きさになった。
大きくなるのに伴って呪いカエルさんの重さも増大している。
ハビシンは呪いカエルさんが重くなってちょっと辛そうな顔をしていた。
「あれ……どっかいっちゃうよ?」
「アレでいいんだ」
呪いカエルさんはぴょんとハビシンの頭の上からジャンプした。
そのままぴょんぴょんと跳んで部屋を出ていく。
エニはいいのかという視線をジケに向けるけれど、ジケは呪いカエルさんを止める様子もない。
「体どうだ?」
「体……あれ? すごく軽くなってる」
「顔色も良くなったね!」
呪いカエルさんのインパクトのせいで気づくのが遅れたが、ハビシンの体の調子が良くなっていた。
青かった顔色もかなり血色が良くなり、ハビシン自身の実感としても体が軽いぐらいであった。
「呪いカエルさんが呪いを吸い取ってくれたんだよ」
「あの黒いのが呪い?」
「そんなところだな」
「じゃあハビシンは治ったの?」
「んー、治ったといえば治った」
「何そのはっきりしない感じ」
ジケの歯切れの悪い返事にエニもトシェパも怪訝そうな顔をする。
「呪いの何が怖いって元を断たなきゃまた呪われることがあるってことさ」
呪いは病気と違う。
言うなれば毒みたいなものである。
解毒しても、また毒を口にすれば侵されることになる。
治しておしまいということではなく、ハビシンが再び毒に侵されないようにする必要があるのだ。
「じゃあどうするのさ?」
「一つは手を打った。もう一つについては……本当ならここからハビシンを移動させたいんだけどね」
ジケは小さくため息をついた。
人が人にかける呪いについては呪いカエルさんが対処してくれる。
最後に対応すべきは場所にかける呪いである。
ハビシンが軟禁されている家は確実に呪われている。
場所に呪いがかけられているのだから場所を移せばいいのはもちろんなのであるが、ハビシンがいなければ相手にそのことが簡単にバレてしまうだろう。
「だけど対策はある。ついでに相手を罠にかけようと思うんだ」
ジケはニヤッと笑った。
「罠?」
「そうさ。ハビシンは演技と化粧、得意か?」




