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【第十八章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第十六章

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呪われた白い子3

「ちなみに隣の家の人の許可は……」


「ソンナモノナイヨ」


「……まあそうか」


 トシェパが遠い目をする。

 想像以上におてんば娘のようである。


「そろそろ窓も開くはずよ」


 窓から飛び込むのはいいけれど、前提として窓が開いてなきゃいけない。

 見た感じ窓は開いていない。


「窓から伝えたんですか?」


「親子の会話聞くなんてとんでもないって優しくお話ししたら少し離れてくれたのよ」


 ハルフの優しく、はぶん殴らなかったぐらいの意味なんじゃないかとジケは思った。


「開いたよ」


「……本当だ」


 二階の窓が開いて、ハビシンがキョロキョロと周りを見ている。

 トシェパが手を振ると、ハビシンも気づいて手を振りかえす。


「しょうがない……やるか」


 他の方法を考えている時間も惜しい。

 赤尾祭の戦いをしている間に忍び込まねばならないので、ジケは隣の家から飛び降りる覚悟をした。


「にしてもよく登ったな」


 トシェパは前に家の外壁を伝って屋根まで登った。

 手足をかけられそうな場所はあるけれど、よく登れたものだと感心してしまう。


「私がお手伝いいたしましょう」


 ハビシンの家を監視している人たちから見えないところに回り込む。

 キノレが家の壁に背を向けてやや腰を落として手を組む。


「先に俺が登るよ」


「これ使って」


「用意がいいな」


 トシェパがジケにロープを渡した。

 ジケはロープを肩にかけ、フィオスを頭に乗せる。

 

 少し家から距離をとって離れて、フーッと白い息を吐き出す。


「行きますよ」


「いつでもどうぞ」


 ジケは家に向かって走り出す。

 助走で勢いをつけて、キノレの組んだ手に足をかけて一気に飛び上がる。


「ほっ! ……フィオス!」


 二階の窓の出っ張りに手が届いた。

 ジケは頭に乗っかったフィオスを手に取ると壁に張り付ける。


 フィオスが張り付いたまま金属化して手をかける場所となってくれる。


「よいしょ……」


 フィオスを支えにして窓の出っ張りに乗っかる。


「今度は長く……そうそう。それで先っちょを曲げて……いい感じ!」


 フィオスにさらに形を変えてもらう。

 先がフックになった長い金属棒になってもらった。


「ほい!」


 ジケはフックを屋根に引っかけ、フィオスを伝って屋根まで登る。


「流石ジケ君」


 フィオスを巧みに使ってスルスルと上まで登ってしまった。

 下から見ていたピコは思わず拍手してしまいそうになっていた。


「いいぞ!」


 ジケは屋根にフィオスを張り付かせて金属化してもらい、ロープを結びつけた。

 ロープの端を下に垂らして上から合図を送る。


 ピコ、キノレ、ハルフにはそのまま待っていてもらい、エニ、グルゼイ、トシェパがロープを伝って屋根に登ってきた。


「あとはタイミングだな」


 飛び移るのもいつでもいいというわけじゃない。

 隣から飛んで入れば音が鳴ってしまうだろう。


 しかし今は赤尾祭の最中である。

 町の中心から時折歓声が聞こえてくる。


 完成のタイミングで飛び込めばいくらか誤魔化せるはずで、ジケたちは歓声を待つ。


「今だ!」


 戦いが終わったのか一際大きな歓声が聞こえてきた。

 ジケはためらいなく屋根から飛び出した。


「よっ、ほっ、ぐおっ!?」


 あまり大きくもない窓に飛び込むのはなかなか大変だ。

 上手く窓に飛び込めたはいいものの、着地を失敗して転びかける。


 壁に衝突しそうになったジケは、とっさにフィオスを間に挟み込んで事なきを得た。

 危うく顔面を壁にぶつけるところだった。


「あなたは……この間の」


「……だいぶ顔色が悪いな」


 窓のそばにはハビシンがいた。

 窓から顔を出した時には普通に見えていたけれど、近くに来てみるとハビシンの顔色は結構悪かった。


「窓を開けてると冷える。君は先に部屋で休んでて」


「…………分かった」


 体調の悪さはハビシンも自分で感じていた。

 ジケに言われてハビシンはフラフラと部屋に戻っていった。


「はっ!」


「おお、上手いもんだな」


 歓声が聞こえて、次に飛び込んできたのはトシェパだった。

 ジケと違ってバランスを崩すことはなく、綺麗に窓の中に着地した


「大丈夫か?」


「うん。上手いでしょ? ハビシンは?」


「部屋に行ったよ。トシェパも先に行くといい」


「ありがと」


 トシェパは先にハビシンのところに向かう。

 ジケが窓から外を確認する。


 見張りは何も気づいていないようだ。

 次に飛び込んでくるのはエニらしく小さく手を振っていた。


「えいっ!」


 窓に飛び込むのは意外と難しい。

 飛びすぎちゃ逆に窓の上なんかにぶつかるし、飛ばなすぎては窓に届かない。


「わっ!」


「エニ!」


「ん?」


 エニは少し加減しすぎた。

 ギリギリ窓の縁に足が届いたけれど、そのまま外に落ちていきそうになる。


 ジケはエニの手を掴んで中に引っ張りいれる。


「何か物音がしたような……気のせいか」


 見張りがキョロキョロと周りを見回すけれど、エニは落ちなかったし開いている窓にも気づかなかった。


「いてて……」


「大丈夫か、エニ?」


「あっ……うん」


 エニがジケの胸に飛び込むような形で二人とも倒れた。

 顔を上げるとジケの顔が近くてエニは思わず顔を赤くしてしまう。

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