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【第十八章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第十六章

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呪われた白い子2

「それでどうなさるおつもりですか?」


「さっきも言ったけど、あの人はあなたに治療をさせてみるつもりなのよ」


「でも……許してもらえないんですよね?」


 フェデミーの許可が必要なのか怪しいところだが、医者が獣人にとって必要なことは間違いない。

 自分の患者に人間の子供が近づいてきて、呪いが原因だなんて言われたら医者としても面目も傷つけられることも理解はできる。


「許しが得られるまで俺は待機ですか?」


 根比べしたいのなら受けて立つつもりはある。

 ただしずっと獣人のところにはいられない。


「赤尾祭が終われば……ってところだけど、私も娘が苦しんでいるのにただ見てはいられないわ」


「じゃあどうするんですか?」


「忍び込むの」


「トシェパ?」


 ジケの質問に答えたのはトシェパだった。


「会わせてもらえないなら会いに行く。忍び込んじゃえばいいんだよ!」


「なるほどな」


 赤尾祭だからフェデミーの需要が高い。

 今フェデミーに逆らうことはできなくて言うことを聞くしかないのだけども、呪いに苦しむハビシンを放置しておくことなどできない。


 トシェパは一度忍び込んでハビシンに会いに行った。

 牢屋に監禁されているわけでもないので、どうにか監視の目をくぐり抜ければハビシンに会うこともできるはずだ。


 トシェパが連れてこられていたのもコレが理由だ。

 忍び込み経験者であるからだった。


「ただ監視が厳しくなったようですけど……忍び込めますか?」


 ジケは呪いの扱いに手慣れていない。

 ちょっと忍び込んで、ちょっとの時間で治療するというのは無理である。


「これから赤尾祭で男性部門が始まるわ」


 現状では忍び込むことも難しいのはハルフも理解している。


「多くの人は観戦するし、今なら予選会の最中……出場している人も今回はかなり多いわ。もちろん監視の人員にも参加する人はいるでしょうね」


「もしかして……」


「今。今が一番監視が少ないはずよ」


 忍び込むための策は考えてあった。

 最も監視が緩くなる隙を狙う。


 それが赤尾祭において男性部門の予選会が行われている今であった。

 予選会もいつ呼ばれるか分からないので会場で待機しておかねばならない。


 監視役としておかれている獣人にも赤尾祭に参加する人はいるだろう。

 となると監視に割ける人員はどうしても少なくなる。


 もしかしたら赤尾祭を見に行っている人もいるかもしれない。


「うちの部族の人にも派手に暴れてもらうようにお願いしたからフェデミーも手が回らないはずよ」


 予選会は多数での戦いなので怪我人も出やすい。

 フェデミーの注意が向かないよう、万が一を考えてハクロウ族の参加者に暴れるようにもお願いした。


 予選会の戦いの中で怪我人が出ればフェデミーもハビシンの方に行くわけにはいかなくなる。


「行きましょう。今がチャンスよ」


「分かりました。道具を取りに行ってきます」


 流石の行動力であるとジケも感心してしまう。

 ただ、今は呪いのための魔道具を持っていない。


「私は先に行って状況を確認してくるわ。トシェパ、あなたは彼らを手助けしてあげて」


「うん、分かったよ」


 ーーーーー


「見張りは家の前に二人、家の後ろに一人。それに家の近くをウロウロしてる奴が二人いるわね」


 呪いのための魔道具を持って町の北側に向かった。

 先にハビシンが軟禁されている家に向かったハルフと合流した。


 家がどんな状況なのかハルフは調べてくれていた。

 病気の女の子を監視するのにそんなに人がいるのかと思ったけれど、これでも昨日に比べると少ないらしい。


 やはり赤尾祭の男性部門が始まった影響があるようだ。


「中には誰もいないわ」


「中? 中、見たんですか?」


 どうやって中の様子を確認したのだろうとジケは驚く。


「私はハビシンの母親よ? ちょっとお願いしたら中に入れてくれたわよ」


 実際は家の前の監視の胸ぐらを掴んで、ハビシンの部屋の前まで一緒に来ることを条件にして中に入ったのだ。

 だから家の前の一人がげっそりした顔をしているのだなとジケは納得した。


「それで……どう中に入るんですか?」


 表だけでなく、裏口にも人が配置されている。

 見回りの人もいる状況では正面突破なんてしたら、すぐにフェデミーに話が伝わるだろう。


「前はどうやって入ったんだ?」


 ジケはトシェパのことを見る。


「二階の窓から入ったんだ」


「二階の窓から?」


 ジケは家を見る。

 雪に対応するために獣人の家は一階の床が高くなっている。


 そのために二階も普通の家よりも高い位置にある。

 飛び上がって二階に届かせることも大変そうだし、見張りの人たちの目を盗んで窓の位置まで行くのも無理なように見えた。


「どうやって……?」


「ふふ、隣の家から飛び込んだんだ」


「隣の家から?」


「あっちの家、ちょっと距離が近いでしょ?」


 ハビシンが軟禁されている家は周りの家とやや距離がある。

 その中で左隣の家は近い距離にあった。


「家の上にこっそり登って、上から窓に飛び込んだんだよ」


「……なかなかワイルドなことするね」


 忍び込んだと聞いたので、もっとスマートなやり方をしたのかと思っていたけれども、トシェパのやり方は想像よりもワイルドであった。

 流石のピコも驚いている。

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― 新着の感想 ―
王の娘が王の直接的な影響下にない勢力に治療されてるのは解せない
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