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スライムも頑張る5

 のんびりするのもこの状況を乗り切ってから。

 ジは余ったサンドイッチをフィオスにあげる。


 フィオスは食べ物が鉄なんかよりもよっぽど好きでサンドイッチを溶かしながら喜びの感情を感じていることがジにも分かった。


「プクサ、俺たちをここから逃してくれないか?」


「…………」


「無理か?」


「私は望んでこんな風になったのではありません」


「それは知ってるさ」


「だから私はあいつらが嫌いです。


 殺してやりたいとすら思っています。


 なのであいつらに一泡吹かせられるなら、あなたたちを逃しましょう」


「ありがとう。


 逃げられたらここのことは伝えるから解放される時もそう遠くないはずだよ」


「ええ、それは早くお願いしたいですね。


 自分の見た目が好きだったわけじゃないですがこんな骨だけの姿は余計好きになれそうにはありません」


 ジは思わぬところで味方を得た。

 ウダラックと同じく無理矢理リッチにされたと思われるプクサ。


 もう少しプクサから情報を聞きだす。

 ここはビッケルンであるのだがその中でも中心地に近いところにある。


 逃げる先なら近くに町があるらしくそこに行けばよいと教えてくれた。


「また後で来ます」


 あまり長くなりすぎても疑われてしまう。

 外は日も暮れてきているらしく明かりもなく外に出るのは危険だしプクサの方も準備が必要だと言うことでジたちは地下牢に留まることになった。


「どう思う?

 あのプクサってリッチ、信用できると思う?」


 激動の1日だった。

 他の子供たちにとっては初めての実戦で魔物と戦い、こんな出来事に巻き込まれた。


 当然魔物を探し回ったり戦ったりしたのだから疲労もしていて、ぐずっていた子供たちもやがて寝静まってしまった。


 起きているのはジとラとエ。

 奇しくも貧民街で共に過ごした仲間たちがたまたま起きていた。


「分からない。


 正直俺もこんなこと初めてだし、混乱してるし、どうしたらいいかなんて……分からないよ」


「……そうだよな、俺たちだってまだ子供だもんな…………」


 落ち着いているように見えてジも内心どうするべきか分からないでいた。

 鉄格子から出たまではよかったけれどあのローブの男に勝てる気はしないし、子供たちを連れて逃げ回ることにも限界がある。


 想像よりも遥か遠くに来てしまっていることも判明したし、その上ここは王弟側の領地になる。


 良い要素が1つもない。


 これまで運が良く上手くやれてきたけれど今回ばかりは頭が破裂しそうなほど考えても、胸が苦しくなるような結末しか思いつかない。


 プクサに手伝ってもらえることにはなったけれど本当に信頼してよいものか怪しいものだ。


 ジの弱音を聞いてラがハッとする。

 正確な年は貧民な以上はわからないけどラとエとジはそう変わらないはずである。


 教習訓練の時もあまりにも大人びていて頼りきりだったけどジだってまだ子供であることをラは改めて思い知り、またジに頼ろうとしていた自分を恥じた。


「とりあえずはプクサを今は頼るしかない。


 もし適当に上の階にいってローブの男に出会ったら逃げられないと思う」


 まだ希望は捨てていない。

 プクサが本当に協力してくれる可能性も大きいし、どうにかして知り合いにビッケルンにいることを伝えられたら生き延びるチャンスはある。


「……だからエ、お前が頼りだと思ってる」


「えっ、私?」


「そうだ。


 ここから逃げて保護してくれそうなところまで行ける自信がない。

 こういう時は伝言を飛ばすんだよ」


「伝言を飛ばすってことは私のシェルフィーナに?」


「うん。魔力もあって早く飛べる。


 知能も高いし長距離でも問題なく行けるはず。

 出来れば知り合いの誰かに伝えたいけどここからなら最前線の王様側の軍の偉い人に伝えられたら上出来かな?」


 首都まで飛ばすよりも戦場に飛ばす方が早い。

 戦場まで飛ばせられればパージヴェルがいる可能性があり、あのじいさんならリンデランのために飛んできてくれるはずだ。


 怪しい鳥が飛んできてパージヴェルまで話が伝わるかとかどれぐらいで届くのか、方向はとか問題は多い。

 逃げられれば確実だけど何せ10人も子供だけで動くのはリスクが大きすぎる。


 周りから見ても浮いているだろうしリンデランやウルシュナが王様側の貴族であることを考えると表立っても行動できない。


 ただしかしだ、みんなを置いていくことだけは出来ない。

 多分自分だけ助かろうと思えば出来る。


 1人なら隠密に素早く行動してどうにかなる。

 でもそんなことして助かってもジは自分を許せなくなる。


 いや、いざとなれば……


「ラ、エ、危なくなったら俺を置いて逃げてくれ」


「なんで!」


「1番可能性が低いからだ」


 いざとなれば身をていしてみんなを逃す。

 魔力も低く、この中で1番未来がない。


 他の子は王国の兵士かアカデミー出身として少なくともジよりも明るい未来が見えているのだ。

 その時が来ればわずかな時間でも稼いでみんなが逃げられるようにする。


 ジはそんなことを考え始めていた。


「変わったと思ったけど変わんねーな」


 怒りに震えるエの横でラがニヤリと笑った。

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

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評価ポイントをいただけるととても喜びます。


頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


これからもどうぞよろしくお願いします。

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