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【第十八章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第十六章

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怪しい気配4

 町の北側にある大きめの家にハビシンは隔離されていた。

 何の病気か分からない以上感染という可能性も考えての隔離措置ではあるが、女の子一人がこんなところにいるのは心細いだろうなとジケは思った。


「首赤くなっていますね」


「ちぇっ……アイツ……」


「聞こえるからやめとけって」


 ナルジオンはジケのお願いを聞くことにした。

 どうせ残された選択肢など戦争ぐらいしかない。


 ダメで元々ぐらいのつもりでジケに治療させてみることにしたのである。

 家の前で一度待たされているのだけど、先ほどナルジオンに掴まれた首は赤くなっていた。


 ジケが悪いことをしたわけでもないのに、話を聞く前に首を掴むなんてどうかしてるとユダリカは唇を尖らせる。

 ジケはフィオスを首に当てる。


 フィオスからポーションが染み出して首のダメージを治してくれる。

 ついでにひんやりとしたフィオスの冷たさも首の熱をとってくれるようだった。


「今は誰もいないようだ。入れ」


 ナルジオンに呼ばれて家の中に入る。

 大きな家なのに誰もいないためか、冷たくて寂しさを感じる。


「ハビシン、入るぞ」


 家の奥の部屋がハビシンのいる部屋であった。


「……似てないな」


「ユダリカ……」


「いい。母親似なのは俺も分かっている」


 ハビシンはベッドの上で体を起こして座っていた。

 美少女だなとジケのみならずユディットや、女性にあまり興味のないユダリカですら思った。


 ナルジオンと同じく三角形のミミが頭から生えていて、目鼻立ちはくっきりとしている。

 毛色は白い。


 雪のように真っ白で肌色も白くて、リンデランのことを思い出してしまう。

 リンデランにもオオカミミミがあったら可愛いかもしれないなとひっそり思ったのは秘密である。


 ナルジオンは切長の涼しい目元をしている。

 対してハビシンはクリクリとした大きな目をしているので、顔立ちとしてはあまり似ていない。


 ユダリカのつぶやきをナルジオンは聞いていたが、似ていないことは自分でも分かっていた。

 ただ今は体の調子が悪くてハビシンの顔色も悪い。

 

「この人たちが……」


「お前を治すと大口を叩いた連中だ」


 どうやらざっくりとした紹介は済んでいるようだった。


「それで……ハビシンの病気は何なんだ?」


「まずはこれを」


「……何だそれは?」


 ジケは荷物の中から棒を取り出した。

 頭の大きさぐらいの長さがあって、材質は何なのか白いもので出来ている。


「怪しいものじゃないですよ? 持ってみますか?」


「……一応確かめよう」


「折らないでくださいね」


 ジケが差し出した棒をナルジオンは受け取る。

 重たくもなく、軽くもない。


 折り曲げようと思えば簡単に折り曲げられそうな雰囲気はある。

 仮にこの棒で人に襲いかかっても、武器として使うのは難しい。


 ひとまず危険物ではないことを確認して棒をジケに返す。


「これを持って」


「これを?」


 次にジケは棒をハビシンに渡す。


「えっ……」


「やっぱり……」


 ハビシンが棒を持った瞬間白かった棒が紫色に変色していく。

 手に持ったところから棒の先まで紫色になって、ジケは思わず眉をひそめてしまった。


「それはなんだ? ハビシンに影響はないのか?」


 ナルジオンから殺気が漏れ出す。


「これは何というか……測定器みたいなものです」


「測定器だと? 何を測定した?」


「これでハビシンの不調の原因がはっきりしました」


「何だと?」


「本当? どうして具合がわかるの?」


「ハビシンは誰かに……呪われています」


 以前使った水晶は広く呪いを感知する魔道具である。

 対してジケが今使った魔道具は、人が呪われているかどうかを判別することができる魔道具であった。


 触れて紫色に変色すると呪いの反応あり。

 その人が何かで呪われているということになるのだ。


 棒の先まで紫色になっているということは呪いもかなり強いものである。


「呪いだと?」


「だから病気の治療は通じなかったんです。病気じゃないですからね」


 ジケが再び棒を受け取ると、棒は元の白い色に戻る。


「…………治せるのか?」


 色々と聞きたいことはあった。

 誰がハビシンを呪って、どうしてジケはそんなことを知っていて、そもそも呪いとは何なのかというも聞きたかった。


 だがそれらの疑問を飲み込んでナルジオンは一つの質問に絞った。

 ハビシンを治せるのか、ということである。


 この際治せるなら何もかもどうでもいい。


「まだ分かりません。病気みたいに呪いも色々あるので」


 一口に呪いといっても簡単に語れるものではない。

 アイツ転べばいいのにな、なんて思いも技術を学んで呪いにすることができる。


 そんな呪いでも成立するもので、この場合は相手が転べば呪いは成立して消える。

 だが例えばアイツが一生不幸になればいいのに、なんて呪いは相手が不幸になっても消えない。


 呪いの種類、呪いのかけ方、呪いの術者の技術など条件によって呪いも様々である。

 単純に恨めしいと思っていても深くて暗い思いを抱き続けたら、それが呪いになってしまったなんてこともあるらしい。


 だから直接会って呪いについて調べたかったのである。

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