かつての友の助け3
「なんでこんなところにいるのよ! そもそもなんで人間が赤尾祭に出てるのよ!」
「そんなこと言われてもな……」
なかなか説明するのもめんどくさいことである。
トシェパが戦争に対してどう考えていて、口が固いかなど事情を説明するためには段階を踏まねばならない。
「私は……勝たなきゃならなかったのに……」
「おい……」
「また泣かせた」
「俺のせい……なのか?」
ブワッとトシェパの目から涙が溢れ出す。
ジケに負けたことが原因ではあるものの、泣くほどの理由にはもっと深い事情がありそうだった。
「どうにかしなきゃハビシンが死んじゃうかもしれないんだよ! あんたのせいで!」
「……おい、流石にそれは言い過ぎなんじゃないか?」
「なによ!」
ハビシンはナルジオンの娘である。
会ったこともないハビシンがジケのせいで死ぬことになるなんて、まったくもって考えられないことである。
要するに言いがかりというやつだ。
流石に黙っていられなくて、ユダリカが殺気立った目でトシェパを睨みつける。
少しビクッとしながらもトシェパはユダリカを睨み返す。
「まあ待て待て……」
今にも戦いが始まりそうなほどに睨み合っている。
赤尾祭としては二人とも脱落したので、町中でケンカしても赤尾祭には影響はない。
その代わりあまり派手にケンカすると町の治安維持をしている人が飛んできて逮捕されることになる。
「どうしてハビシンが俺のせいで死ぬことになるんだ?」
とんだ言いがかりではあるものの、ハビシンに会うことはジケの目的であった。
ハビシンの体調が悪いことが戦争の原因であり、戦争を止めるためにはハビシンに会う必要があるのだ。
ここでハビシンについての話が聞けるのは、むしろありがたいことですらある。
「…………ハビシンは体調が悪いんだ。原因も分かんなくて……」
「原因が分かんないだろ? ならジケのせいで死ぬわけじゃないだろ」
「私は赤尾祭で優勝してハビシンを治すつもりだった」
話し始めるとトシェパは案外あっさりと事情を口にした。
「原因も分かんないだろ? どうやって?」
「人間に診せるつもりだった」
「人間に?」
「私たちじゃ分からないけど、人間なら何か分かるかもしれないし治せるかもしれない。プライドなんていいから、人間にお願いして治してもらってほしいってお願いするつもりだった」
「ほぇ〜」
思わぬ目的があった。
意外と良い子じゃないかとピコも感心してしまう。
獣人たちが願いを叶えてくれる権利で他人を治そうとするとはハビシンとトシェパの関係の深さも窺い知れる。
「でもナルジオンおじさんは……人間と戦争しようとしてる。ハビシンのためだって言うけど……戦争なんかしたって欲しいものはすぐには手に入らない。そんなことしてる間に……」
またしてもトシェパの目に涙が浮かぶ。
「……トシェパ、少し話いいか?」
「話? あなたのせいで私の計画はダメになったんだよ! どうして……」
「ハビシンのためだとしてもか?」
「えっ?」
「きっと俺と君の目的はぶつかり合うものじゃない」
なんとなくだけど、トシェパの人となりが分かった。
ツンケンしてるけど悪い子じゃない。
むしろトシェパの目的はジケたちの目的と同じである。
ハビシンとも仲が良さそうだし、ここは引き入れるのがいいだろうとジケは思った。
「とりあえず……ここじゃなんだから俺たちの宿に行こうか」
「怪しくないから大丈夫だよ」
「あなたが怪しい」
「なんで!」
トシェパがチラリと見たので、ピコは安心しなさいと大きく頷いた。
しかし細目でニヤリと笑っているピコにトシェパは逆に怪しさを感じていたのであった。
「…………少し話を聞くだけだから」




