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【第十八章完結】スライムは最強たる可能性を秘めている~2回目の人生、ちゃんとスライムと向き合います~  作者: 犬型大
第十六章

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予選会1

 また襲撃があるかもしれない。

 そう思って警戒していたけれど、最初に襲われてからは襲われることもなく時間が過ぎて赤尾祭当日を迎えた。


 ピコのいう通り赤尾祭が迫ると町中に人がどっと増えた。

 多くの人が赤尾祭を目的にしている。


 出場者もいれば観戦に来た人もいる。

 あるいは参加登録して受け取った札狙いなんて人も中に入るのである。


 どこのお店も混んでしまうし人間は色々と危ないかもしれないというピコのアドバイスで、人が増え始める前に食料は買い込んで不要な外出は避けていた。


「エニ、はぐれるなよ?」


「分かってるよ。こうすればいいかな?」


「まあ、いいけど」


 参加者は時間前に広場にいなければならない。

 ジケたちも赤尾祭に向かう人混みの流れに乗って広場に向かっていた。


 不要なトラブルや注目を避けるためにフードを被っているのでやや視界は悪い。

 油断すると他の人に紛れてはぐれてしまいそう。


 最悪ピコは獣人であるし大丈夫だろうけどエニがはぐれると心配である。

 ジケも気をつけるようにしておこうと思ったらエニはそっとジケの服を掴んだ。


 服を掴んでおけばはぐれない。


「ピコちゃんも……へへっ!」


 ピコもエニと逆側でジケの服を掴んだ。

 なんとなくだけどピコに懐かれた感じがあるなとジケは思った。


 誰にでも好かれる人懐こい感じがあって、懐に入るのもうまい。

 ちょっとだけタミとケリのことを思い出すようだ。


 ピコの方がやや計算があるような気はするものの人に好かれる才能があることは間違いない。

 エニが不満そうにしているのはフードに隠れてジケは気づいていない。


「それじゃあエニのことお願いしますね」


「ええ、お任せください」


「はぐれなければいい」


「なんで私だけ?」


「ふふふ、大切にされているのですね」


 広場前に着いた。

 ジケたち出場組と観戦組は別なので別れることになる。


 エニはキノレとグルゼイに任せて、ジケたちは広場に入っていく。


「こんなふうになってるのか」


 広場のど真ん中には大きなステージが出来上がっていた。

 ステージを囲むようにして段々と高くなる観客席まで作られている。

 

 札を狙われるのも面倒で広場には近づかなかったのだけど、こんなことになっているのかと驚いてしまう。


「はい、参加者の方ですね。……この札は」


 受付に札を見せて赤尾祭に参加する。

 札を確認しながらリストでジケの名前を見つけた受付は少し驚いた顔をした。


 登録する最初に部族名を答えさせられた。

 当然部族に所属していないので人間と答えた。


 だからジケが人間だと分かって驚いているのである。


「参加できるよね?」


「ええもちろん」


 札はそのまま使うらしくて返却される。


「子供部門はあっち。大人の女性はあっちです」


 ステージの上三ヶ所に人が余っている。

 見れば子供部門の参加者はわかりやすい。


 チラリと見たところヴィルディガーに来た時に言い争っていた三人もいた。

 コウユウ族の青年もそうだけど、本当に子供かというような体格の子もチラホラといる。


「んー、やっぱり多いね」


「……なんでお前がいるんだ?」


「ピコちゃんですから〜!」


「いや、説明になってないぞ」


 なぜなのか、ステージにはピコも一緒についてきていた。

 本来なら別れてエニたちの方に行くはずだったのに、受付で札を見せて中にまで入ってきているのだ。


 ピコは赤尾祭に参加しないと言っていたのにどういう風の吹き回しだろうか。


「ふふふ、対戦相手解説するって言ったでしょ? でも参加しなきゃここまで来れないからね!」


 赤尾祭についてはざっくりと話を聞いたけれど、話を聞いただけで多くいる参加者を把握することは難しい。

 対戦相手についてはその場で顔を見て、ということになっていた。


 けれどもピコは気づいたのだ。

 観戦しているのみだと戦うジケたちに相手のことを説明できないということを。


 観戦者と参加者は分けられる。

 ジケのそばで相手のことを教えてあげるためには参加者となるしかないとピコはこっそり参加登録していたのである。


「参加者は負けてもステージ近くにいられるからね。それが目的で参加してる人もいるぐらいだよ」


 参加者となれば近くで観戦できるので負けてもそばにいられるのだ。


「なるほどな。戦いは無茶するなよ?」


「もっちろん!」


 自分でも弱い自覚はあるので戦うつもりなど毛頭ない。


「かなりピリピリした空気してますね……」


 赤尾祭はまだ始まっていない。

 しかしステージに集まった獣人たちの空気はピリついている。


 触れれば爆発してしまいそうな雰囲気で、獣人たちの闘争本能が高まっていることを肌に感じられる。

 のほほんとしたピコの方が特殊な感じなのである。


「よく集まってくれた!」


 獣人たちの我慢の限界も近づいてきた頃、ステージの上に一人の獣人が上がってきた。


「あれがナルジオンさんだよ」


 雪を思わせるような真っ白な毛色をしていて大きくて三角のミミを持った凛々しい獣人の男性であった。

 この男性こそジケが会いたいと思っている狼王ナルジオンなのである。

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