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赤尾祭の情報収集2

「まあ多分勝ち残っていくのはいつもの人たちだと思うけどね。いきなりポッと出場して勝てるほど甘くはないからね〜」


 戦争のために人は多いだろう。

 ただ結局最終的に本戦で戦う顔ぶれはそんなに変わらないとピコは見ている。


「いつも誰が常連なのか教えてくれ。ちなみにこっちは子供部門と大人の女性部門だ」


「おっまかせ! 大人の女性部門は分かりやすいよ〜いっつも同じ人だから。コウユウ族のエルデンデさんとハクロウ族のホールフさんが大体強いね、うん」


 ピコは何かの資料を見るわけでもなくサラッと頭の中は情報を引き出す。

 コウユウ族は喧嘩していた獣人の間に割り込んだ体格のいい獣人と同じ部族名である。


 そこから推察するに体の大きな人かもしれないなとジケは思った。

 ハクロウ族は知らない。


「コウユウ族は大きな人が多くてね。力も強くて赤尾祭にも誰かは参加してるような部族だよ。お姉さんも強そうだけどエルデンデさんはもっと大きくてもっと強そうだよ」


「ふーん、腕がなりそうだな」


「ホールフさんのハクロウ族は今一番強いナルジオンさんと同じ部族だよ。体はそんなに大きくないけど力も強いし魔力とかも強いらしいね」


「へぇ」


 つまりホールフはナルジオンと面識があるかもしれないということだ。

 ホールフに近づければナルジオンにも近づける可能性があるとジケはひっそりと考えていた。


「この二人がメインで後はコココさんとかソージャさんとか勝ち残りそうな人は何人かいるね」


「まあ全員ぶっ飛ばせばいいんだろ?」


 どんな相手が来ようともただ倒すだけ。

 団子を口に頬張りながらリアーネはニヤリと笑う。


「細かい特徴は後回しにして……次は子供部門を頼む」


「子供部族はねぇ、ちょっと難しいよね」


「そうなのか?」


「ある程度の年齢になると大人部門に行くからね。絶対的な人っていうのが少ないんだ。それに男女混合だし……一年で変わるような子もいる。とりあえず出とけって人もいるしね」


 子供部門は大人部門と少し事情が違う。

 大人では年齢による熟練の差はあれども体は成熟していて条件的な差は小さい。


 一方で子供部門は下限の年齢と上限の年齢でだいぶ差ができてしまう。

 それに次の時には大人部門という子だって珍しくない。


 前回圧倒的な力でチャンピオンになっても次の時には子供部門にはいないことだって多いのである。

 年齢制限があるために入れ替わりが激しいのだ。


 加えて子供部門は参加者が多い。

 負けられないというプライドから大人部門で参加しないという人もいるが、子供部門では負けてもいいからと子供参加させるのである。


「ただぁ〜し! ピコちゃんのこのお耳は全てをキャッチしてるのさぁ!」


 ピコはミミをピコピコと動かす。


「今回の注目株はセキロウ族、ソウコ族、コウユウ族の同い年三人組だ!」


 ピコの目が薄く開かれる。

 琥珀色の瞳に縦長の瞳孔というやや特徴的な目をしている。


「有名部族の人たちで多分今回が年齢上限。前回、前々回も勝ち残ってきた人たちだから今回も勝ち残ること間違いなし!」


 むふー、と鼻息を吐き出すピコ。


「その三人って……」


「そうだな」


 なんだか聞き覚えのある部族名だ。

 赤尾祭の登録に行く時に町中でケンカ仕掛けていた三人のことだろうとジケたちは思った。


「ハクロウ族はいないのか?」


「ハクロウ族? いると思うよ。でもどうだろう……三人よりも少し若いし……あんまり噂は聞かない。ナルジオンさんの娘は強いって聞くけどジケ君と同じくらいだし、今回は出ないって聞くよ」


「ナルジオンの娘……について聞かせてもらってもいいか?」


 ナルジオンの娘という言葉にジケはピクリと反応を見せた。

 おそらく今回戦争が起こりかけている原因となっている子である。


「私はあんまり知らないけどすごく良い子らしいよ。ナルジオンさんの血を継いでるのか才能もあって、あとすごく可愛いんだよ。綺麗な白い毛色をしていて……尻尾もフッサフサ」


「会ってみたいんだけどどこにいるとか分かるか?」


「前回までだったら赤尾祭に出てきたんだけど……今回は体調が悪いとかで出ないらしいからね。北側にハクロウ族が多く住んでいるからそこらへんで会える可能性はあるよ」


「北側か……ありがとう」


「それにしても本当に色々頭の中に入ってるんだな」


 ユダリカはあまり甘いものが好きじゃないのでデザートを食べずに話に集中していた。

 ピコがあまりにスラスラと情報を言ってくれるものだから知識量に感心している。


「ああ、確かにな」


 オツネがピコを寄越した理由がよく分かる。

 記憶力だけでもかなり優秀であるとジケも認める。


「うへ、ほんと? 嬉しいな」


 褒められてピコは頬をほんのりと赤くする。

 尻尾が激しく揺れていて感情も溢れている。


「俺たちは今教えてもらった人のこと顔も知らないから赤尾祭当日にもっと細かく教えてもらっていいか?」


「もっちろん! ピコちゃんにお任せあれ!」


 褒められてピコもやる気を出している。

 食費はかかりそうだけど情報としては割と良い感じの人を雇えたなとジケも満足であった。

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