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色々な獣人1

「あれがヴィルディガーか」


 山脈の北においては山脈に近いほど雪が深く、離れていけばある程度積もった雪は少なくなる。

 グルゼイに教えてもらった方法で雪の上を歩いていると確かに沈み込まなくなった。


 ただし魔力の少ないジケがコントロールを間違えるとあっという間に魔力がなくなってダウンするということも起きてしまった。

 フィオスソリがあってよかったなんて思いながら道なき道を進んでいたら、普通に歩いても足が沈まないほどに雪が固くなった。


 逆に氷質になってちょっと滑るぐらいまでなってきたぐらいでかなり遠くに町が見え始めた。

 それが目指しているヴィルディガーであった。


「思っていたよりもまともに町なんだな」


 蜘蛛が引く不思議なソリ付きでは獣人たちに警戒されてしまうかもしれない。

 ある程度ヴィルディガーに近づいてきたところで荷物は自ら持つことにした。


 天候も回復して晴天となっている。

 日が出ると真っ白な雪に日の光が反射してなかなかまぶしかったりする。


 ジケは目を細めるようにしてヴィルディガーを眺める。

 まだ遠くに見えるヴィルディガーはかなりしっかりとした町に見えていた。


 北方の蛮族と呼ばれる獣人だからとナメていたわけではない。

 けれども比較的大都市に近い規模があって驚いてしまった。


「なんだか道っぽくなったな」


 ヴィルディガーに近づいていくと真っ直ぐに雪が一段下がった道のようなものが現れた。


「砂利が撒いてあって滑りにくくしてるのか」


 町には細かい小石のようなものが撒いてある。

 地面が見えているわけじゃないので下の地面のものじゃない。


 砂利を撒いて歩くときに滑らないようにしているのだ。

 そのまま特に止められるようなこともなくヴィルディガーの町まで到着することができた。


 寒さ対策のためにフードをしっかりかぶっていれば獣人かどうか判別するのも難しい。

 今のところ人間であると気づかれていないようでジケたちのことをジロジロと見る人は少なかった。


 バルディームによると赤尾祭が近くて色々な部族が集まってきていることもあるのだろうと言っていた。


「なんとか宿は確保できたな」


 赤尾祭が近くて人が集まっている。

 そのせいで二件ほど宿に空きがないと断られてしまった。


 しょうがないので想定していたよりも宿のグレードを上げて探してようやく部屋を確保した。


「これが布団?」


「そうみたいだな」


 部屋の都合でグルゼイ、ユディット、キノレ、バルディームの四人とジケ、エニ、ユダリカ、リアーネの四人で分かれることになった。

 四つ置いてあるベッドの上には布団として毛皮があった。


 いくつかのものを縫って繋げたもののようで触ってみると手触りが良く、撫でていると手のひらがすぐに暖かく感じられ始めてきた。

 北の地では綿や羽毛なんてものが貴重である。


 代わりに取引にも使われるモンスターの毛皮が取れるのでそれを布団として使っている。

 良い宿なので良い毛皮が使われている。


 試しに膝にかけてみたらすぐにあったかくなってきた。

 今ジケはキックコッコ羽毛寝具もコツコツと生産している。


 キックコッコ羽毛寝具はふんわりと暖かくなる感じだが、毛皮はもっと直接的に暖かさが感じられる。

 これはこれで悪くないなとジケは思った。


「よし、とりあえず登録に行こうか」


 宿は確保したので次にやるべきは赤尾祭への参加登録である。

 赤尾祭に参加するためにはちゃんと登録する必要がある。


 忘れるようなことではないが、何があるか分からないので早めに登録してしまうのがいいだろう。


「こうしてみると獣人もあまり変わらないんだな……」


 グルゼイ以外のメンバーで宿を出た。

 町中には獣人があふれている。


 トシュウ族とゲツロウ族で耳など獣のところが大きく違うように町を歩く獣人たちも色々な獣人がいる。

 けれどもどの人もジケたちと何も変わらないように生活をしていた。


 北方の蛮族という言葉が先行させるイメージよりも遥かに文化的である。

 偏見の目で見ていたところがあるとユダリカは自分の認識を恥じた。


「んだ、テメェ!」


「なんだ?」


 ヴィルディガーの中心には大きな広場がある。

 そこで赤尾祭の参加受付をしているので町の中心に向かっていた。


 突如怒声が聞こえてきてジケは足を止めた。

 自分たちに向けられたものではないようだけど、トラブルを避けるためにはちゃんとした状況把握が必要だ。


「あなたの方がぶつかってきたのでしょう?」


「お前がぼんやり歩いてるからだろ!」


「道を歩けば誰しもあなたのために退けてくれるわけではないのですよ?」


 声の方に振り返ってみると二人の若い獣人が言い争っていた。

 赤い毛色をした獣人と青い毛色をした獣人で、赤い獣人はウルフタイプのミミをしていてモフッとした尻尾をしている。


 対して青い獣人の方は赤い獣人のミミよりもやや丸みを帯びていて、尻尾はシュッとしていて長い。


「あいつらは……」


「知ってるのか?」


 バルディームが睨み合う二人の獣人を見て顔をしかめた。


「セキロウ族とソウコ族だ」


「セキロウ族とソウコ族……」


「赤い方がセキロウ族で青い方がソウコ族だ。どちらも大きな部族で強い者も多い。そしてこの二つの部族は仲が悪いんだ」


 どうやら仲の悪い部族の者がかち合ってしまったらしい。

 ぶつかったなどと言っているが、故意にどちらかがぶつかりに行ったのかもしれない。

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