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スライムも頑張る1

「……うぅ…………」


「ジ! 良かった……」


 顔が気持ち悪い。

 流れた鼻血が固まって鼻の下が不快だった。


「ここは……?」


 頭が痛む。

 鼻の下をゴシゴシと拭い起き上がるけどクラクラする。


 ジのすぐそばにはエとリンデランが他にもラやウルシュナ、アユインと他に数人の子供たちがいた。


「牢屋……?」


 なんだか見たことあるシチュエーション。


「分かんないの。


 みんな起きたらここにいるし、あんたは顔中血だらけだし……」


「最後にぶん殴られたからな……


 泣いてるのか?」


「泣いてないし!」


「いでっ!」


 ジは部屋の隅でうつ伏せに倒れていた。

 みんなが魔法が解けて同時に起きる中で1人気絶も混じって長く意識を失っていた。


 顔は鼻血でまみれているし回復魔法をかけてもすぐには起き上がらないジをエは本気で心配していた。


「まだ付いてますよ」


「ん、ありがとう」


 リンデランがハンカチでジの顔を拭う。

 お高そうなハンカチなのにと思ってしまうのは貧乏性がためでしょうがない。


「治したの私だかんね!」


「分かってるって、ありがとう、エ」


「ふん……無事で良かったからいいけど」


 過去にエってこんなにツンツンしたような子だっただろうか。

 そんなことも思いながら状況把握に努める。


 鉄格子、石造りの部屋、窓もなし。

 これまでの経験からいくとここは地下牢だな。


 明かりがあって周りが分かるだけ前よりも親切ではある。


「ジさん……これって」


「そうだな、状況的には前と同じくどっかに閉じ込められたみたいだな」


 町に近い森から一体どこにこんな数の子供たちを運んできたのだろう。

 それにグルゼイとリアーネが黙って見ているはずもなく、またあんな奴らにやられるとも思えない。


 気絶していたのですっぽりと間の記憶がなくて今地下牢にいることしかわからない。

 

 10人ほどいる子供たち。

 こんなに抱えて逃げることなんて難しいだろうからそう遠くに離れて来てはいないだろうとジは思った。


 地下牢は綺麗だ。

 大体埃っぽくて新しいものでない限り手入れがされていなくて古びた感じがするのに掃除がされている。


 鉄格子も錆び付いていないし、壁にかけられた明かりも広く普及した魔道具で上にも埃が溜まっている様子がない。


 綺麗好きな人間がいるのかななんてお気楽なことは思わない。

 このことから思ったのはよくこの地下牢が使われている可能性があるということ。


 それでも地下牢を掃除するのは綺麗好きでもいなきゃしないだろうが使わない地下牢を掃除する物好きはあまりいない。

 多少の綺麗好きがいて、使うから掃除すると考える方が自然である。


 鉄格子の出入り口に手をかける。

 みんなやっただろうけど試すのはタダだ。


 前後、左右、上下。

 しっかりしている。


 ガタつくところもなくてこんなところにも細やかな手入れが行き届いている。

 開く気配も全くないちゃんとした鉄格子である。


「それ魔法も通じないの」


 すでに開けられないかみんな試していた。

 簡単なのは魔法である。


 エやリンデランが鉄格子を破壊しようと魔法を使って攻撃を試みていた。

 しかし鉄格子にはそんな痕跡すら残っていない。


「見て」


 エが小さい炎を鉄格子に放つ。


 鉄格子に当たる寸前に炎がボシュンと消えてしまう。

 エが意識して魔法を消したのではない。


 勝手に消えてしまったのである。


 鉄格子には魔法がかけられてあった。

 その魔法によって他の魔法がかき消されてしまっていた。


「魔獣は?」

 

「あっ、試してない」


「ラ、頼めるか?」


「おう、セントス」


 魔法を打ち消されるのでは魔法系の魔獣は役に立たない。

 純粋なパワーであればもしかしたら鉄格子を壊せるかもしれない。


「……ちっちゃっ!」


 ラの魔獣はサンダーライトタイガー。

 圧倒的な雷属性の魔力と破壊的な膂力を持つトラの魔獣である。


 人よりもはるかに大きいサンダーライトタイガーを呼び出したはずだったのに。


「可愛い〜」


 思わずのんきな感想を口に出してしまうリンデラン。

 まあジも同じ感想を抱いたし、周りもみんなそう思っていた。


 ラの呼び出したサンダーライトタイガーのセントスは手乗りサイズで現れた。

 ミニサイズのサンダーライトタイガーは可愛らしかった。


「えっ……なんで!」


 あれでは鉄格子を壊すのは難しい。

 ラは大きくなるように意識してみるけれど全くセントスは大きくならない。


「なるほどね」


 ラが小さくしたのではない。


「これも魔法だな」


「魔法?」


「うん、きっと魔獣の力を抑制する魔法がここにかけられているんだ。


 だからセントスも力を抑えられてちっちゃくなっちゃったんだと思う」


 鉄格子に魔法を防ぐ魔法をかけるぐらいに用心している人が魔獣を警戒しないわけがない。

 地下牢全体に魔獣を抑制するための魔法がかかっている。


 魔獣は強ければ強いほど力を抑えられて、それに比例して弱くなる。

 体が小さくなるのは弱さにふさわしいぐらいのサイズまで小さくなってしまうのだろう。


 ラのサンダーライトタイガーは強いのでその分力を相当抑えられている。


「じゃあどうしようもないじゃない……」

最後まで読んでいただきましてありがとうございます!


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頂けた分だけ作品で返せるように努力して頑張りたいと思います。


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