第八話……討伐と別れ
「ぐわぁ! 敵だ!」
賊の3人目を倒したところで気づかれ、我々の襲撃に賊が叫ぶ。
「起きろ! 敵襲だ!」
賊たちが寝巻や裸といった態で、テントから急いで出て来る。
それを私は弓で狙い打った。
――ザシュ
「ぐはっ!」
小太りの賊に矢が刺さり、もんどりを打って倒れる。
「でやっ!」
――ザシュ!
私は弓を剣に持ち替え敵を穿つ。
冷たい硬質の刃が、賊の赤い肉体を次々に切り裂いていく。
寝込みを襲われたので、賊たちはろくな武装をしていなかった。
それに対して、ケインズや私はチェインメイルで武装。
アインやハティもレザーメイルを着こみ、4人とも籠手や脛当てをつけていた。
「逃げろ! 領主の討伐隊だ!」
「なんだって! 逃げろ!」
私達の武装が揃っていることもあって、盗賊たちに思いもよらない誤謬がおこる。
私達を正規の討伐軍だと誤解しているのだ。
さらには、明らかにこちらが多勢で襲い掛かっているとの勘違いも起こっている様だった。
「貴様ら、逃げるんじゃねぇ!」
「……ああぅ」
月明かりの中、髭もじゃの男が出てきた。
明らかに賊の長という風貌だった。
……ケインズ!?
ケインズに目をやると、ケインズは左腕に矢を受けて蹲っていた。
アインやハティの期待のまなざしが私を捉える。
ケインズが駄目なら、私が長と戦うべきだとの無言の要請だった。
……やってやる!
私は意を決した。
「うおりゃぁあ!」
私は賊の長に斬りかかる。
……が、鈍い金属音がして、長は長剣を操り、軽々とした仕草で私の斬撃を受け止めていた。
「小童! そんなので俺を倒せると思うなよ!」
私は距離をとり、今度は賊の長の斬撃を受ける立場になった。
こちらの三倍も鋭いであろう太刀筋に、私はタジタジとなってしまう。
――ガキン!
――バシ!
――バシ!
私は次々に繰り出される斬撃を受け流すのに、精一杯となっていたのだった。
明らかに剣の腕は相手が上手だったのだ。
……いかん!
このままではやられる!
相手の剣を受け止め終えた時。
私は仕込んでいた巻物に、召喚の言葉を告げる。
「出でよ、魔界の徒。我を助け給え!」
私は小声で呟いた。
「……フフフ、承ッタ!」
魔界のプリンスの声が聞こえる。
黒いオーラが私の体にまとわりつき、力が湧いてくるのを感じる。
この時点でダークロードの力が私の体に憑依したのだ。
「貴様、何をブツブツと、そんな余裕があるのか!?」
賊の長は咆哮し、上段から重たい剣戟を加えてきた。
それを払おうとする私。
――グワン
金属の音とは想像もしない鈍い音が走る。
よく見ると私の剣は、受け止めた賊の剣をひん曲げていたのだ……。
……まさに、魔界の怪力。
人間の技ではない。
「貴様! 何をした!?」
焦る族長は、手が痺れて剣を手放す。
刹那、私は族長を着ている鎧ごと叩き切った。
――ドカッ!
これにより、なんと賊の体は無残に真っ二つ。
私は凄まじい量の返り血を浴びた。
「もうだめだ! 逃げろぉ!」
「ひぇー!」
私と賊の長の一騎打ちを見ていた賊が一斉に逃げる。
頭目を失えば算を乱すのが理だったのだ。
「武器を捨てろ! 逃げる奴は殺す!」
ケインズが大きな声を張り上げると、賊の大半は観念して降伏。
結果として、8人を惨殺、6人を捕縛、逃亡者多数といった結果となった。
こちらは全員で4名なので、大戦果といっても過言ではなかった。
私達は奪われた多くの家畜や家財を取り戻し、集落へと帰ったのであった。
……内緒だが、4人とも盗賊が蓄えてきた財を、いくらかこっそりとポケットにしまいこんでいた。
なにはともあれ、ジェスターの街に凱旋した我々は、住民たちの歓喜に包まれることになった。
☆★☆★☆
――二日後の晩。
「よくやってくれた!」
「有難き幸せ!」
領主の館で、ジェスター男爵家の家宰から褒美を頂く。
沢山の家畜を取り戻した功績もあって、褒美の銀貨は色が付けられた。
「良ければ、この後一緒に食事でもどうかな?」
私達はお互いの顔を見合う。
答えは是だった。
貴族の食べるご馳走が食べられるのだ。
断る理屈は無かった。
「こちらになります!」
その後、大きめの一室にメイドに案内される。
温かいトウモロコシのスープが運ばれてきて、口の奥から唾が出てきた。
「おお!」
アインもハティも感嘆の声を上げる。
なにしろ、我々のスープと言えば、決まって貧しい粥なのだ。
この黄色い美味な味は麻薬的であった。
「うまい、うまい!」
腕を怪我していたケインズもご機嫌だ。
いつもは固い黒パンだったが、目の前にあったのは柔らかい白パンだったのだ。
「肉だ!」
メインディッシュは羊の塊肉であった。
立ち込める湯気は温かく、バターと香草の匂いが香しい。
羊は貴重な家畜なので、めったに食べられることはない。
貴族の家ならではの晩餐であったのだ。
「……うめぇ!」
羊の肉にかぶつき、ケインズが唸る。
現代の食事に慣れた私でも、それはとても美味しいものであった。
私達はお腹をいっぱいにして、宿に戻った。
「ロバート、実はなぁ……」
その晩。
宿でケインズに話を切りだされる。
それは今回の功績で、ケインズはジェスター男爵のお抱えの正規兵となることが決まったらしい……。
アインもハティも一旦故郷に帰るらしい。
つまりこのパーティーは今夜までとなった。
――その晩。
私達はお互いの未来を称え合い、葡萄酒を酌み交わした。
今になって分かったのは、実はアインはお酒が少し苦手であったとのことだった。
皆に合わせてくれていたのである。
私達は翌朝分かれ、それぞれの道に旅立ったのだった。
☆★☆
お読みいただき有難うございます。
お気に召しましたら、ブックマークやご採点をいただけると大変嬉しいです。
誤字脱字報告も大変感謝です。





