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第六話……魔法陣の購入

「逃げたやつを探せ!」


「おうよ!」


 夜になって、敵は我々への追撃を再開。

 松明を手にして、集団で追ってくるのが分かる。

 ……捕まったら大変だ。


 私は草むらに隠れながらに逃げた。

 両手をついて獣道を這い上がり、丘陵を一気に駆け降りる。

 足は酷い虫刺されが赤く腫れあがり、膝はすりむいたためにズボンに血が滲んでいた。


 ……ようやく敵をまいたかな?

 と思ったところ、目の前に人影を見つけた。



「誰だ!?」


 こちらに驚いた相手が大声をだす。

 しかし、この相手は聞いたことのある声だった。

 形は味方と思しき、気品のある甲冑を着た貴族の様であった。



「……お味方です!」


「なに!?」


 味方と告げると、相手は兜のマスクを開ける。

 よく顔を見ると、その貴族はジェスター男爵だった。


 味方の大将が警護の兵も連れずに、このようなところを彷徨っているとは危険であった。



「傭兵隊のロバートです! 警護の兵はどうなされたのですか?」


「味方とははぐれてしまった。どうしたものかと思っていたところだ。無事に帰ったら、十分な礼を取らすぞ!」


 ジェスター男爵は、私が彼を敵に売らないように恩賞を提示して説得してきた。


 ……そんなことしやしないのに。

 私は少し腹が立ったが、彼を逃がすことに腐心することにした。



「こっちです!」


「おう、頼んだぞ!」


 私はジェスター男爵を連れ、林の中へと分け入った。

 そこで、魔法陣を描き、使い魔であるタヌキのポコを呼び出した。



「出でよ、魔界の徒。我を助け給え!」


 小さく土煙が舞い、月明かりの下にポコが出でる。



「ポコ!」


 その仕儀を見ていたジェスター男爵は驚く。



「……おぬしは、魔の術を使うのか!?」


「ええ、次は高額での雇用をお願いしますね!」


「……おおう、わかった!」


 今回、私は弓兵として雇用されたが、次は高級な術師として雇用してもらえそうである。

 もし、無事に帰れたらの話ではあるが……。



「ポココ!」


「男爵様、こちらでございます!」


 ポコの先導に従い、男爵を案内する。

 ちなみにポコは、私の理解する魔法語を操る立派な魔族の一員だ。

 獣の姿をするため、獣魔と呼ばれることもある比較的低級な使い魔であった。



「おぬしの仲間はどうなった?」


「それが、私めの方もはぐれまして……」


「……そ、そうか。それは難儀じゃの……」


 道すがら、男爵は私がケインズたちとはぐれたことに同情してくれた。

 本当は彼も衛士がおらずに心細かったであろうに……。


 林を抜けると、一軒の農家が見えた。

 馬小屋や羊小屋も見える。

 そこは少し裕福そうな家であった。



「ごめんくだされ!」


 戸を叩き、中の住人を叩き起こす。

 家の主は白髪の老人であった。



「どちら様で!?」


「こちらはジェスターの街のご領主様じゃ! のちに褒美を取らすゆえ、馬を二頭ほど貸してくれ!」


「ははっ!」


 老人はすぐに馬小屋から二頭の栗毛馬を連れて来た。

 男爵は急いで馬の借用書を書きつけた。



「ありがたい、礼は必ず致すぞ!」


「ははーっ」


 我々は馬を駆り、夜の街道を駆けに駆けた。

 街道は人の目につきやすいが、馬の脚をすれば、人間にそうやすやすと追いつかれる速さでは無かった。


 我々は一昼夜を駆け、次の日の昼間にはジェスターの街へと無事についた。

 やはり、馬を借りることが出来たのが大きかった。



「ポコ!」


 ポコを魔法陣にしまい、街の中へと入る。

 領主の姿を見つけると、すぐに衛士が駆け寄って来る。



「ロバートやら、護衛のほどかたじけない!」


「いえいえ、ご無事でようございました」


 私は領主の館で恩賞の金貨を3枚ほど頂いた後。

 すぐに急いで宿へと帰り、食をとった後、すぐに床にはいり休んだ。

 逃避行で疲れてきっていたからだ。


 そして、鳥のさえずる声で起きたのは、次の日の昼であった。




☆★☆★☆


「ロバート、無事だったか!?」


「はい!」


「よかった、よかった!」


 次の日の夕方には、宿でケインズたちと再会。

 幸運だったことに、ケインズたちは3人とも無事であった。

 汗まみれで、凄く臭かったことが難ではあったのだが……。


 私が領主さまを無事に連れ帰り、恩賞を貰ったことを告げると、



「くそう、凄いな! 俺も金貨が欲しいぜ!」


 悔しがるケインズの後ろから、小柄のハティが巻物を携さえてくる。



「……なぁ、ロバート。金貨一枚に負けとくから、これを買ってくれよ!」


「お前馬鹿をいうな! なんでこんな紙きれ金貨の価値があるんだ?」


 ハティの提案にケインズは『馬鹿だろ?』って言いたげだ。


 私はその巻物の中身を見た。

 そこには、見慣れた魔法陣が描かれていた。


 ……なぜ見覚えがあるのか?

 それは元のチャンネルでの世界で手にしていた高レベルの魔法陣だったのだ。



「ちょっと、流石に多いよ、これは!?」


 私はハティに急いで金貨三枚を握らせた。

 ハティはこの巻物に金貨一枚の価値をつけたのは冗談だと言ったが、冗談ではない……。


 この魔法陣の契約相手は、私が元居たチャンネルでの最強の使い魔。

 魔界の貴公子、ダークロードことガウ=ベルンシュタインのものであったのだ。


☆★☆


お読みいただき有難うございます。

お気に召しましたら、ブックマークやご採点をいただけると大変嬉しいです。

誤字脱字報告も大変感謝です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ガウさん! ガウさんがー! 個人的にテンションが上がりました(笑)。 ガウさんが味方なら百人力ですね♪
[一言] ガウキターーー!!!!(大歓喜) これは心強いぜ( ˘ω˘ )
[一言] 一枚でいいと言われているところを三枚渡すところが誠実。
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