第十九話……戦後の収穫祭
「魔界の徒よ、我に力を与え給え!」
勢いよく突っ込んでくる敵を前に、私は魔界のプリンスの力を憑依させ、体中の筋力増強を図る。
肩は盛り上がり、背中も丸くなるほどの鋼の肉体となる。
敵は騎兵を先頭に、勢いよく突っ込んできた。
「うりゃぁ!」
――ガシッ!
私は両刃の長剣を相手の胴鎧に叩きつけ、一人の騎士を落馬させる。
更に飛んでくる矢を盾で受け止め、槍を構えた騎士の攻撃を剣で躱す。
「せい!」
相手の攻撃をかわしつつ、剣にて馬上の騎士を次々に落馬させていく。
「殺すな! 捕えておけ!」
「はっ!」
騎兵を倒した後は、敵の弓兵部隊に馬を乗り入れ、相手を散々に追い散らした。
さらに余勢を駆って、味方の騎兵と共に歩兵を追い散らしていく。
「貴様、何奴!? 名のある相手とお見受けいたす! 一騎打ちを所望いたす!」
……ん!?
馬上にて奇麗な白銀の甲冑を着た、相手の左翼隊の将と思しき若い貴族に挑戦される。
悪いが、馬上戦闘はゲームで沢山練習してあるのだ。
さらには、今は魔力の付与もあり筋肉増強中だ。
――ドカッ
私は無言のまま長剣を構えたまま突っ込み、相手の槍を打ち払い、相手を馬上から蹴落とした。
「……ぐぁっ!」
地面に叩きつけられ、若い貴族が呻く。
「捕えろ! 手柄首だ!」
私は配下の農兵に指示。
この貴族を丁重に捕縛した。
「旦那様が捕まった! 逃げろ!」
「追撃だ! 相手を逃がすな!」
将を失って逃げる敵。
それを追いかける味方。
敵の左翼は瓦解し、戦の趨勢は決まった……。
もとよりこちらの方が、数が多かったのも理由の一つであったのだが。
「我々も追撃しますか?」
「いや、やめておこう! 捕虜を連れて走ることはできないよ!」
私の部隊は一人の貴族と、二人の騎士を捕縛。
意気揚々と、ジェスター男爵の元へと引き上げたのだった。
☆★☆★☆
――その日の夕刻。
我々の勝ちが決定し、陣中は勝利の宴で盛り上がっていた。
「ロバート殿! よくやってくれた!」
「はっ!」
私は戦で得た捕虜を男爵に引き渡し、金貨と銀貨のたくさん入った袋を受け取った。
自分で言うのもなんだが、私はこの山吹色の貨幣が好きだ。
これがあれば、思う存分領地開発が出来るのだ。
「……ちっ、新参者がデカい顔をしおって!」
「たまたま運がいいだけよな!」
後ろから嫌味な小声が聞こえる。
功を挙げたのが、味方の古参騎士から妬まれたようだ。
……まぁ、わからないでもない。
自分が古参だったら、新入りが手柄を立てるのを素直に喜べるかどうかわからないからだ……。
「ロバート殿も城攻めに加わるかな!?」
この世界の街は、外敵から身を守るために城壁に護られていた。
それを一緒に攻めるかどうかを、ジェスター男爵に聞かれたのだ。
「……いえ、野戦で疲れましたので、今回は引き揚げます!」
「そうかそうか! ご苦労であった!」
私はそれ以上、同僚の騎士の功績を奪わないように戦場を離脱した。
夜には陣を払い、受け取った金銀貨幣を農兵たちにも分け与えたのだった。
☆★☆★☆
「おかえりクマ!」
「ただいま!」
三日の旅程を経て、私は自領にたどり着いた。
集落の入り口で、留守番を任せていたクマ太郎に出迎えられる。
「おかえりなさい!」
「ただいま!」
農兵たちも、次々にそれぞれの家に帰っていった。
今回は味方に死傷者はおらず、得るものだけがあった戦役であり安堵する。
農兵たちも武勇談に華が咲き、その晩は集落がお祭り騒ぎとなった。
☆★☆★☆
――翌日。
「よし、お金も手に入ったし、西の荒れ地を開墾していくぞ!」
「了解です!」
私は行商人にお金を払い、周囲の村々から労働者を紹介してもらった。
大体が農村の次男、三男と言った顔ぶれだった。
……念願の労働力である。
「沢山開発できたら、労働者にも土地を分け与えます!」
「「「おおー!」」」
私の提案に歓声が沸く。
農地を貰えば、長男でもなくとも戸主として独立の道が開けるからであった。
「えっさほっさ!」
私達は木を切り倒し、切り株を掘り起こした。
更には道を作り、水路や井戸も掘っていった。
「頑張るクマ!」
やはりそこでも鎧クマのクマ太郎が怪力を披露。
大木を軽々と担ぎ上げて運んだ。
そうして農地を開拓していったのだが……。
「私にも、畑を貰えませんか?」
魔女のナンシーが、畑を少し欲しいと言ってきた。
聞けば、薬草を植えたいとのことだった。
「いいですよ!」
そういう願いなら万々歳だ。
いろんなものを植えて欲しい。
まぁ、毒草とかは勘弁だが……。
私達はジェスター男爵たちが城攻めをしている時期に、領地の開拓を次々と進めた。
農地は広がり人が増え、商人がよく立ち寄ってくれる地域となっていったのだった。
……こうして実り多き秋が訪れる。
豊作と言うほどでは無かったが、いくらかの実りが領内をほころばせるに十分であった。
その年の収穫祭は大いに盛り上がったのであった……。
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