第十五話……魔女VS謎のクマ
「掛かれ! 破壊してしまえ!」
「怯むな! 放て!」
アルゴン帝国軍は近隣の農兵100名を動員して攻め寄せるも、ジェスター男爵が手早く手勢を砦に入れたことが功を奏し、砦の防衛に成功する。
残っていた砦の工事も無事に終了し、プロトン王国は貴重な砦を築くのに成功したのだった。
「よくやってくれた! これは褒美じゃ!」
「有難うございます。……というか、こんなに?」
私は驚いた。
男爵から手渡された袋に入っていたのは金貨50枚
現実の世界で500万円に相当する大金であった。
「ああ、とっておけ! じゃがな。この砦はやれぬ話となった……」
……ぇ?
約束が違うじゃん。
「そうしょげた顔をするな。ワシも約束を破りとうはない。これは王陛下のご命令なのだ。代わりにこの地をやろう!」
「……これは」
私は手渡された羊皮紙の内容に驚く。
ジェスター男爵領西部の一角の土地を与えるとの証文であった。
……つまりは領主様。
さらには騎士爵に叙してくれるとのことだった。
「ありがとうございます!」
「うむうむ」
納得してくれて嬉しい男爵。
そしてご褒美に弱い私。
双方の利益が一致したのだった。
「勝鬨じゃ! えいえいおー!」
「えいえいおー!」
ジェスター男爵軍と私は、更にこの後に攻勢に出てきたアルゴン帝国軍をも砦にて打ち破る。
その後、私は勝ち戦の余韻を後にして、新しい領地へと向かったのだった。
☆★☆★☆
「ここかな?」
「さびれた館ポコね」
ポコが残念そうにいうのも仕方ない。
私に与えられた土地はさびれた田舎集落で、家の戸数は20軒と言ったところだった。
集落から外れた山沿いに、壊れかけた領主の屋敷はあった。
「仕方ない、修理して使おう!」
「頑張るポコ!」
私は配下の傭兵4名と屋敷を修繕。
ようやく、雨露をしのぐのには十分な場所を手に入れたのだった。
――翌日。
「新しいご領主さまですか?」
「いかにも」
領民が挨拶に来た。
心なしかエッヘンとする私。
その様子を部下の傭兵たちに少し笑われた。
「これはささやかなものですが……」
「あ、ありがとう!」
私は領民から、籠いっぱいの木の実や果実を受け取った。
その後、ひとしきり談笑が終わった頃。
年長の老人が重々しく口を開く。
「実はお願いがありまして……」
「なんだろう?」
「この屋敷の裏手の山に、大きなクマがでるんですじゃ……、それを何とかして頂きたいですじゃ……」
「いいですよ!」
私は果物をかじりながらに応えた。
今まで帝国軍相手に戦ってきたのだ。
クマ如きに怯えては、領主など勤まらないと思っていたのだった。
☆★☆★☆
――翌日。
「出発!」
「「応!」」
私は部下の傭兵4名を連れて、山狩りに出向いた。
相手はクマ。
大きいと聞いていたが、さほどではないと踏んでいた。
「……くんくん。クマの匂いがするポコ!」
「案内してくれ!」
私達はポコの案内に従いクマの足跡を辿った。
山中の枝葉を薙ぎながら、茂みを踏破していったのだった。
奥へ奥へと進み、もはやポコなしではどこを歩いているか分からなくなった。
早朝から歩き続けで、皆の額に汗がにじむ。
丁度、太陽が真上に達した頃。
林の陰りの中で、大きな影と出くわした。
「……ぇ? これがクマ?」
「クマに間違いないポコ!」
暗がりから出てきた影は二足歩行。
体高約2m。
思ったより大きくはない。
しかし、相手はプレートメイルを着こんでおり、両刃の大剣を構えていたのだ。
「ガォオオオ!」
「ぎゃぁあ!」
クマの雄叫びが天を突く。
すぐに味方の傭兵の一人がクマの刃にかかる。
「さがれ、さがって取り囲め! 相手は一匹だ!」
私は急いで皆に指示をする。
プレートメイルを着こんでいるとはいえ、相手のクマは一匹だった。
けが人を後ろに置き、我々はクマを取り囲んだ。
――ガキキーン。
部下の傭兵が斬りかかるも、鈍い金属音しかしない。
相手のプレートメイルは全身鎧で、籠手やら兜まで完備されていた。
しかもどこやらの貴族の紋が入った名工の品であったのだ。
……しかも、驚くのはそれだけではない。
クマは口から火を噴いた。
……ぇぇぇ!?
マジかよ!?
「ぎゃぁあああ!」
部下の一人が火だるまにされる。
慌てて火を消すも、火傷が酷い。
……こいつただのクマじゃねぇ。
いわゆる化け物の類であった。
「俺様ノ森ヲ荒ラス奴殺ス! 皆殺シ!」
……しかも、しゃべるじゃねぇか。
私は慌てて魔法陣を地面に拡げた。
「魔界の徒よ、我を助けん! 出でよナンシー!」
鈍い光と共に、魔女のナンシーが現れた。
「貴様! タダノ人間デハナイナ!」
クマが咆える。
……余計なお世話だ。
「旦那様の敵は、このケダモノですか!?」
「うん、何とかして!」
「わかりました!」
ナンシーは瓶底眼鏡で弱そうな形だが、れっきとした魔女だ。
何とかしてくれるだろう。
――ガシ!
――バキ!
――ボコ!
激戦の末、魔女はすぐに敗れた。
しかも肉弾戦で……。
「旦那様、助けて~!」
……ぇぇ!?
負けるの?
てか、魔法とか使わないの!?
「……やむを得ない! 出でよ魔界の徒! 我を助け給え!」
私は奥の手。
魔界のプリンスこと、ダークロードを体に憑依させる。
出来ればこれは使いたくなかった。
これをやると、二週間は体が軋むように痛くなるのだ……。
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