伝説の勇者は旅立てない
なろうラジオ大賞2第十八弾。今回のテーマは『伝説』です。
大抵のファンタジーにはつきものの伝説、簡単なようで結構手こずりました。極端な話、『伝説の』って付ければとりあえず成立しちゃいますからね。『夜の』って付けると大抵のものがエロく感じられるのと同じで。
苦労の跡を感じて頂ければ幸いです。
「復活した魔王により姫は攫われ、国は恐怖に包まれておる。伝説によれば魔王を倒せるのは勇者の血を引くお主のみ。ここに王の命としてお主を」
「ちょっと待てえええぇぇぇ!」
「お、お主は北の魔女!」
「おうそうだよ。皆様ご存知北の魔女様よ」
「え、謁見の間に飛び込んで来るとは、血迷ったか!」
「血迷ってんのはお前の方だろ国王! 大して強くもないガキに魔王討伐の勅命だぁ!?」
「し、しかし伝説では魔王を倒せるのは勇者の一族のみ、と」
「それがおかしいって言ってんだよ! 昔々で誰が言ってたかも分からねぇ話で、よくまぁ国の命運をかけられるなぁ!?」
「だ、だが語り継がれてきた以上、重要な意味が」
「裏取れてんのか?」
「は?」
「勇者しか魔王を倒せないっつー理由の裏付けは取れてんのかって聞いてんだよ!」
「そ、そう言うのは特に……。あ、伝説の剣は勇者にしか使えないと言う伝説が……」
「また伝説か! 伝説大好きか! じゃあ何か! 魔王は国王が裸で三日踊れば死ぬっていう伝説があったら踊るのか!? あぁ!?」
「いや、それはちょっと……」
「勇者の何が魔王に有効かも分からないのに旅立たせて、それで勇者に死なれたらどうするんだよ! 二重の意味で旅立たせる気かてめーは!」
「おぉ、上手い」
「上手かねーよ! 大体支給金も少な過ぎ! 戦って稼がないと満足な武器買えないって殺意の象徴か!?」
「武器を買う為に近場で稼げば、戦いにも慣れるかな、と……」
「姫攫われてんだろ!? 悠長だな!」
「国の、為だ……」
「そういう弱腰な所を魔王に付け込まれてんだろうが! 軍を率いて突っ込めよ!」
「く、国を守らねばならんのだ! お主こそ文句ばかりでなく対案でも出すがいい!」
「出して良いんだな?」
「えっ」
「私の案はこうだ。幸い魔王の城は海を挟んで目視できる。故に魔法で城ごと魔王を殲滅する」
「そんな伝説の魔法が……」
「いい加減伝説から離れな! あたしが自力で編み出した広域殲滅魔法だよ!」
「……しかし、そうすると、姫が……」
「国の為、なんだろ?」
「ぐぅ……。わ、分かった」
「んじゃ国にも協力してもらうよ。いくつか集めないといけない物があるからね」
「……何が必要なのだ」
「まず北の山からウラン鉱石を採掘しな」
「……あの、それ、魔法ですよね?」
一月後、魔王は魔王城ごと消し飛んだ。幸い姫は何故か城から離れた洞窟に運ばれていて、無事救出された。
魔女は『伝説嫌いの魔女』として伝説になった。
読了ありがとうございました。核兵器、ダメ、絶対。
当初のオチでは必要なものを問われて、
魔女「伝説の魔導書と伝説の杖、それと伝説の不死鳥の羽と」
王様「お前も伝説頼みじゃないかぁ!」
とツッコんで終わりでした。どちらのオチが良かったのか、それは伝説のお笑い神にしか分からないのかもしれない……。
お題コンプを目指すあまり迷走している感がなきにしもあらずですが、頑張りますのでまた次回作もよろしくお願いします。