63話 癌(がん)
「すまん、遅くなった。」
相手の腕を切り離すと三井さんの右足の癌の侵食が止まった。
「掛橋隊長、ありがとうございます。」
掛橋さんは三井さんをすぐさま抱えて金子さんの所まで連れて行った。
「金子さん、すみません。」
「いいや、俺が守れなかった。すまない。そして掛橋、ありがとな。」
「とんでもないです。それに、いくら金子さんでも総合格闘部隊には不利な相手です。ここは俺たち、警剣部隊に任せてください。」
すると他の2人も到着し掛橋の隣へと並んだ。
「掛橋さん早すぎっすよ。」
「桜木、お前はもう少し副隊長の自覚を持て。」
「分かりやしたよ。なら、ここは俺に任せてください。警剣部隊副隊長として。」
桜木さんは腰に担いでいた大きな刀を振りかざすと砂煙が立った。謎の子供は桜木さん目掛けて走ってきた。
「こいつ強そうだな。殺し合おうよ!」
すると、桜木さんは刀を両手で持ち構えた。
「瞬舞の技・梵珠!」
桜木さんは相手を遥かに上回るスピードで近づき刀を思いきり降った。それは謎の子供には想像もつかないスピードだった。
『やばい。早すぎる。避けられな……』
『ズドンッ!!!』
桜木さんは大きな刀の平地の部分で相手を殴りつけ、ビルの中へ突っ込んでいった。俺もそのスピードがまるで見えなかった。
『すげぇ早かった。ホントに見えなかったぞ。これが警剣部隊副隊長。それに瞬舞の技って見たのは登坂の時以来だ。』
桜木さんは吹っ飛ばした相手に近寄って行った。
「残念だがお前を殺せないんだ。お前を生かして帰らないと行けないからな。殺そうと思えば今の一瞬で殺せたけどな。」
「くっ、あまり舐めるなよ!!」
子供の右上の腕が桜木さんの方へ伸びていった。だが、桜木さんは回転しながら避けてその腕までも切り裂いた。
「痛いか?」
「痛い? なんだそれ。僕に痛みなんてない。痛みも悲しみも嬉しさも感じない。ただ殺すだけさ。人間を……」
「何を言ってるんだ。」
すると、残りの2本の左腕で桜木を襲いかかろうとした。その時桜木さんは両手で大きな刀を上へ持ち上げた。
「天山の技・武尊!」
刀を振り下ろしその2本の腕を切り裂いて後ろのビルまでも切り裂いて貫通した。その技に謎の子供は恐怖を覚えた。
『な、何だこの技……。まともにくらってたら体の8割は消し飛んでいた。これが副隊長の強さか。他のエージェントとまるで違う。』
「さぁ、生け捕りだ。話ししながら本部まで行くか。」
桜木さんは謎の子供のフードを取り、首元を掴み連行した。
「なんだ、クソガキじゃねぇか。」
「……。」
「なんか喋れよ。」
「……。」
「なんだコイツ。掛橋さん、捕まえやしたよー。」
「よくやった、桜木。」
「楽勝っすよ。とにかく、本部で色々吐かせますか。」
「っるせ……。」
「ん?」
「うるせぇーんだよ!」
謎の子供は怒りの表情を見せ、体から大量の腕を出し桜木を攻撃した。
「死ねぇーー!」
桜木さんが襲われそうになる瞬間、
『ズドンッ!!』
警剣部隊の吉田が謎の子供の心臓を貫きビルへと打ち付けた。
「ぐっ、こいつも早い! だが、最後にこいつを、えっ……。」
体から出した大量の腕が一瞬にして全て切断されていた。
『な、なんで……。こんな一瞬で……。』
すると掛橋が刀を納めているのを目にした。
『嘘だ。こんな速さ、嘘だ……。』
そお言うと謎の子供は大量に吐血し目を見開いたまま動かなくなった。
「あ〜あ。殺しちゃいましたね。」
桜木さんは少し残念そうにそう言った。
「あいつは痛みを感じないと言っていた。拷問などでは口を割らないだろう。ここまでの大量虐殺を行ったんだ。死んで当然の報いだろうな。」
そう言って掛橋さんは死んでいったエージェント達に向けて目をつぶり敬礼をした。
「三井、大丈夫か!」
金子さんが大声で叫んでいた。皆で近寄ると三井さんが受けた癌の攻撃が広がっている。
「なんだこれ、少しづつ侵食しているのか? とりあえず本部の医療部隊の所へ連れていく。小原、お前は掛橋達と生存者がいないかの救助作業とエージェントの亡骸の回収作業を手伝っていてくれ。」
「はい、分かりました。」
金子さんは三井さんを抱えすぐに本部に戻って行った。俺と警剣部隊の3人と作業を始めると、赤鬼が走ってきた。
「赤鬼、なにやってたんだ。」
「すみません。入る隙が無くて……。」
「んまぁ、無事でよかった。一緒に手伝ってくれ。」
「はい。というか、こいつは一体……。」
「調べたかったが、何も分からず終わっちまった。」
桜木さんが話しに入ってきた。俺はこの謎の子供に、違和感というか人間と少し違った感じを覚えていた。
その頃金子さんは三井さんを医療部隊に連れていっていた。
「はぁはぁ、近くてよかった。誰か!」
医療部隊の医療室の扉を力強く開けた。
「なんだい騒がしいな。」
底にいたのは癒の母親であり医療部隊長の安斎 治美がいた。
「安斎隊長! 三井を治してください!」
「とりあえず見せてみな。」
三井さんをベッドに横たわらせると、安斎隊長は掴まれた右足を見た。
「なんだいこれは、癌細胞か?」
「その様に思えます。」
「ここまであからさまなのは初めてだな。人間の元ある癌細胞を飛躍的に活性化させたといったところか。侵食が足の根本からなっているようだな。」
「それで三井の右足はどうなるんです?」
「命に別状は無いが、おそらく……」
「おそらく?」
「足の切断は免れぬだろうな。」
「そ、そんな冗談を……」
金子さんは苦笑いで冷汗をかいた。
「いな、冗談ではない。一刻も早くこの右足を切り落とさなくては。」
「ちょっと待ってください。他に方法はないんですか!?」
「素人が口挟むんじゃないよ。何年この仕事やってきてると思ってるんだい。こんなの見ただけで判断できる。」
「そんな……。」
「金子、自分を責めるな。そう自分だけで抱え込むな。私も最善の手は尽くす。すぐに復帰できるようにする。」
「復帰、できるんですか?」
「当たり前だろ。三井ほどの者を引退させるのは勿体ないからな。こいつにはたくさん働いてもらわないと困る。」
「よろしくお願いします!」
金子さんは深々と頭を下げて、医療室を後にした。
その頃本部には1枚の手紙が届いていた。
「署長、署長宛に手紙が届いています。」
その手紙を手に取り、中を見た。
「なに!? No.3!?」




