61話 赤鬼 拳志
「ま、まじかよ! いきなり指名かよ!」
「ほら、行ってこいよ!」
後藤はそう言うと俺の背中を押した。
「小原! 指名じゃ! 前へ!」
署長に呼ばれて走って中央部に出た。俺は急に手合わせをする事になって少々焦っている。するとそこへ金子さんが来た。
「ちょっと失礼しまーす!」
金子さんは俺の肩を組み耳元で話し始めた。
「小原、正直お前はここへ来て半年、No.6を倒したが、周りはどんな目で見ているか分からない。ここでお前の力見せてやれよ。」
「でも、相手は新人ですよ?」
「お前はあいつを下に見ているのか? 国拳、倭国拳法を知っているか?」
「なんか聞いたことあります。」
「あいつは倭国拳法の大学生にして日本チャンピオンになった男だ。下手したら殺されちまうぞ?」
金子さんは笑いながら俺にそう言って俺から離れていった。
「すみませんでした! どうぞ始めてください!」
「それでは、手合わせを始めよ!」
署長がそう言うと、赤鬼は俺の所へ向かってきた。
「え、ちょっ、待って。もう来るの!?」
「よろしくお願いします!」
そう言うと赤鬼は俺に拳を振るってきた。その動きを止めることなく次々と繰り出してきた。
『くそっ、新人とは思えない戦いっぷりだな!』
「小原さん! 避けてるだけでいいんですか?」
みるみる動くスピードが上がってきている。
『流石に早いな! カウンターを入れる隙さえない!』
『ズドンッ!』
「ぐはっ!」
すると、赤鬼は右脚で俺の顎に蹴りを入れ空中へ飛ばした。
『いつ脚が動いた!? 見えなかったぞ! っ!?』
気づいたら目の前に赤鬼がいた。
「呆気なかったですね! これで終わりです!」
赤鬼は右脚を上へ上げ、力いっぱい俺の顔面に振りかざした。
「倭国拳法初技・脚甲!」
俺は空中から地面へと叩きつけられた。その衝撃で地面は割れて、赤鬼も着地すると勝利を確信した。
「なんだ、こんなもんだったのか。本当にこの人がNo.6を倒した人なのか!? まだ初技だぞ? あーあ、つまんなかった。」
他のエージェントも少しガッカリした表情だった。
「なんだ、小原って案外弱いな。」
「何もせずに終わっちまったぞ。」
「本当にNo.6倒したのか?」
赤鬼は俺に背を向け歩いていった。
「ふーっ、あぶねぇ。死ぬところだった。」
赤鬼は振り向き俺を睨みつけた。
「な、なんで普通に喋れるんだ。っ!?」
赤鬼は俺の左目が金色に輝いているのをその目に焼き付けた。
「こ、これが……噂の金のアルファマインド……」
「おい新人、さっきの聞いてたぞ。目上の人にはちゃんと敬う言葉を使えよ……」
赤鬼が瞬きをした一瞬で、俺は赤鬼の目の前まで詰め寄り腹を殴った。赤鬼は演習場端の壁まで吹っ飛ばされてしまった。
「少し風の力を加えた。だいぶ奥深くに入ったろうな。こっちも先輩としての維持があるんだ。」
「がはっがはっがはっ……はぁはぁはぁ……」
『なんだ今のスピードは……全く見えなかったぞ。』
座り込んだ赤鬼が見上げると俺の姿があった。
『まただ……いつのまに……』
「俺のスピードが早く見えたか?」
「………」
「ここにはアルファマインドを持っている人はたくさんいる。俺より強い人がほとんどだ。エージェントを舐めるなよ。」
「舐めてなんか……」
「ん?」
「舐めてなんかいませんよ。ただ、こういう世界を望んでいました!」
「はぁ!?」
「まだ立てます!」
赤鬼は立ち上がりさらに俺に攻撃を繰り出してきた。
『こいつ、さっきの攻撃を受けてもこんなに動けるのかよ!』
だが、アルファマインドを発動している状態では赤鬼の攻撃は遅く見えた。
『だめだ、俺の攻撃が簡単にガードされている!』
俺は赤鬼の右手を掴み背負い投げをした。
「ぐはっ!」
「さっきまでの威勢はどうした!?」
「小原さんに勝ちたい!」
「なんなんだお前は!」
赤鬼は両足で地面を蹴ると、倒立姿勢で上から蹴りの連打を俺に繰り出した。
『こいつ、どんな戦い方しやがる!』
俺は赤鬼の両手を回転しながら右脚で蹴り体制を崩すと、左脚で腹を蹴り飛ばした。
「流石小原です!」
「さっきまでボロくそ言ってなかったか? 急に敬語かよ。」
「行きます! 倭国拳法中技・樺蘭揮!」
すると、赤鬼が歩くとそこにヒビが入る。
『なんだ? 体重を変化させる能力か何かか?』
赤鬼は俺に一発蹴りを入れ、俺はそれを両手で防ぐが違和感を覚えた。
『なんだ、一発が格段に重い! このままだとアルファマインドでも骨が折れる。』
「風豪波!」
俺は距離を取るために風撃を飛ばした。
「ぐはっ! これが風の性質!」
赤鬼は風豪波をまともに食らうがすぐに立ち上がり、構えた。
「絶対に負けない! 倭国拳法上技・迅無。」
すると、赤鬼の身体の筋肉が少し膨張すると姿が一瞬にして消えた。俺も見失ってしまった。
「アルファマインドで追えないくらいの速さなのか!? どこいった!」
『ズバンッ!』
左後ろから左脇を突かれた。
『ぐっ! そんな馬鹿な! 追えたはずだ!』
俺は左脇腹を突かれ吐血した。
「教えてあげますよ。教えても俺を追えないと思いますが、迅無は気配を完全に消すことが出来るんですよ!」
『だから追えなかったのか……』
「倭国拳法中技・重戦車!」
『ズドンッ!』
赤鬼は俺を思い切り体当たりをして吹っ飛ばした。
『ぐっ、避けられない! 目では認識しても気配がないんじゃ脳が危険を察知できないということか!? それにさっきよりスピードが格段に早い!』
俺は着地すると赤鬼は低く構えた。
「初技・円動!」
赤鬼はその場を円を描くように移動し、俺の後ろを取った。
『小原さんはすぐには動けないはずだ! 勝った!』
赤鬼の右の拳が赤く染まっている。
「上技・鬼拳! 20%!」
『背骨ががら空きだ! 折りはしないが、気絶させて勝ちだ!』
赤鬼はその赤く染った拳を俺の背中にぶつけようとするが、その拳は空を切った。
『当たらなかった!? そんなこと……』
その瞬間俺は赤鬼の背後に回った。
「風神の拳!」
俺は赤鬼の顔面を殴り飛ばした。




