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59話 未来のトップエージェント

拓也は日本から約5000km離れたネパールのヒマラヤ山脈にワープで移動してきた。悪魔の姿のままで身体はボロボロだが、少しづつ再生してきている。


「はぁはぁはぁはぁ……危なかった……」


そこには七魔神のリーダーで蛇の仮面を被ったケテルという男がいた。


「お前、俺がいるのを分かっててここに来たのか?」


「俺は早くケテルさんに認めてもらいたい。俺の強さを、俺の力を……」


「ふっ、借り物の力で良くそこまで言えるな。だが、アバドンの力をそこまで使いこなしているとはな。日本人のくせに大したもんだ。」


「使いこなすにはそこまで時間はいりませんでしたよ。」


「何を強がっている。そんな姿にまでなって。日本人相手にボロボロじゃないか。」


「そうだ、その姿になった理由があるんです。実は日本人に……」


その時、ケテルはいち早く何かに気づきその場を離れた。だが、拓也は弱っていたのでその場からすぐに動くことはできなかった。


『ドカーーーーンッ!』


何かが飛んできて拓也に直撃し、その場一帯の地形を削り陥没させた。拓也はその衝撃で上半身と下半身が真っ二つに飛んでいってしまった。


「ぐっ、一体なにが……」


ケテルは拓也に近寄ったが、拓也は気を失っていた。すると、ケテルは拓也の頭を掴むと生き返ったかのように意識が戻った。


「っ!! はぁはぁはぁ……俺、今……」


「今のは何だったんだ。」


ケテルは飛んできた物を何かと確認した。


「っ!? こ、これは……」


拓也直撃したのは蓮が放った皇神槍(グングニール)だった。


「この時代に皇神槍(グングニール)だと!? 一体どういうことだ。黒崎、お前は誰と戦っていた。」


小原(おばら) (れん)という日本人です。そいつは、金の目を持つ者でした。」


すると、ケテルは急に笑いだした。


「ふっふっふっ、はっはっは! 黒崎、よく見つけてくれた。」


「何か知っているんですか?」


「このヒマラヤ山脈、なんでこんな山々が出来たか分かるか?」


「どういうことですか?」


「昔俺が戦った相手がこの皇神槍(グングニール)を使ってこの地形を削り掘ってしまったんだ。そして(いにしえ)から年月が経ちこのような形になったんだ。俺が前に見た皇神槍(グングニール)はこんな小物ではなかったがな。」


「何を言っているんですか……」


「ん? そうか、まだ20年くらいしか生きていないお前には分からぬ話しだな。とりあえずその男が放った皇神槍(グングニール)は自動追尾攻撃だ。確実に当たるようになっていた。」


「すみません、巻き添えにさせる所でした。」


「お前は再生に集中しろ。アバドンの力を使いこなすんだ。」


「はい。あと、さっきの日本人の話しですが……」


「いいや、お前の言いたい事は分かった。」


そしてケテルは空を見上げた。


『やっと見つかりましたよ。今回は必ずやつの力を……』


一方その頃、俺は医療室にいてすぐに目を覚ました。そこには金子さんも一緒にいた。


「……ここは……」


「おぉ、小原! 良かった、目を覚ました!」


「俺は何を……」


「お前は戦ったんだ。」


「っ、! そうだ! 拓也は、拓也はどこに!」


「逃げられたよ。」


「え、もしかして自分のせいで……」


「いいや、お前のおかげで犠牲が出なかったんだ。」


「でも、拓也に顔面を踏みつけられてからの記憶が無いんです。踏みつけられた瞬間、このベットに……」


「小原、お前は何も気にするな。その心配は上司である俺たちがすることだ。お前はゆっくり休め。」


そういうと金子さんは医療室を後にした。俺はゆっくり休めとは言われたものの特に怪我も無く、逆に身体の調子は絶好調にも思えたので、外に出て少し散歩しようと考えた。


医療室を出ると何だか慌ただしく、建設業や職人の人達が多く本部に集まっていた。


『あ、そうか、拓也が暴れたせいで本部の一部が大きく損傷したのか。面倒なことしてくれたな。』


俺はそう思っていた。そして現場に来ると、俺が気絶する前以上の損害がその目に写った。


「え、何が起きてたんだ? 俺が気絶してる間、何が……」


俺はその時金子さんが言った言葉を思い返していた。


『お前は戦ったんだ。』


「まさか……俺!?」


その時、後ろから俺の右肩をトンと叩かれた。振り向くと、そこには室田さんがいた。


「室田さん!」


「小原、少し話しをしよう。」


俺は室田さんと2人で話しながら本部の裏道を歩いた。


「さっきの損害だが、あれは小原がやったものだ。」


「気絶していたんです。何があったか教えてほしいです。」


「ワシの見る限りだと、アルファマインドの抑えきれない程の力の暴走だな。」


「暴走ですか? 今までに同じような事はあったんですか?」


「金のアルファマインド自体見るのが初めてでな、今までそのような事例が無いんだ。だから本当に暴走かも分からんのだよ。」


俺は自分でもどうすれば良いか分からずに下を向いた。


「だが、いづれかはその膨大な力を小原自信が押さえ込みコントロールしなければならない。」


すると、2人は新宿本部の外部演習場の前に出た。そこにはさっき戦っていたばかりの金子さんが1人で汗を飛ばしながら拳を振るっていた。


『か、金子さん……なんで……』


「小原、金子は強いと思うか?」


「はい。最近は金子さんと一緒にいる事が多いのですが、その強さに驚きます。総合格闘部隊の隊長ですし。」


「確かに、アイツの強さは本物だ。ワシも認めておる。だが、アイツは初めから才能があるにもかかわらず人一倍努力していた。アイツのあの姿勢に心を打たれない奴はいない。まだまだ伸び代のあるエージェントだ。」


「金子さんの100パーセントって一体……」


「小原、金子は100パーセントなんて口にしないよ。前に言っていたな、100パーセントは限界を表すこと、常に99パーセントであり続けるとな。ワシもその思想に心打たれた。人に限界など存在しないのかもしれん。あるいは勝手に作ったものか。そんな上司を持った小原は恵まれているな。」


そう、俺の周りには素晴らしい上司ばかりだった。人として、エージェントとして、お手本になる人が多い。俺はとても恵まれていた。


「今年ももうすぐ終わりだ。来年からはお前達の後輩も配属されるだろう。良いお手本になれるように日本のエージェント界を繋いでより良いものにしてほしい。」


「はい。それは自分たちの指名でもあります。室田さんの期待に応えられる様、精進していきます。」


俺は深々と頭を下げた。その後、室田さんは署長室の方へ戻って行った。


『小原 蓮は未来のトップエージェントになる逸材だ。これからが楽しみだ。』


俺も気合いが入って金子さんの所へ特訓しに行った。


「金子さーん! 自分も一緒に特訓したいでーす!」


「げっ、小原!」


金子さんは何もしていなかったかのような態度をとった。


「と、特訓? なんだ特訓って、俺は何もしてないぞ。」


その日、金子さんは俺との特訓を一晩ずっと見続けてくれた。

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