57話 悪魔の正体
「ぐはっ!」
『やばい、この前戦った時と全く別人のようだ。』
金子さんは悪魔の仮面の男の腹を殴ると、その後も畳み掛けるように連打を食らわせた。
「二重威連打!」
『ズドドドドドドッ!』
金子さんの放つ連打は目にも止まらぬ速さだ。何より一発一発が重い。
「おらっ!」
最後の一発を顔面に食らわすと、仮面に大きくヒビが入って、男は飛んでいった。
「なんだあの仮面、めちゃくちゃ硬いな!」
男は地面を削りながら飛ばされ、大きな木にぶつかり止まった。身体中にダメージを与えられてすぐには動けなかった。
『ちっ、動けねぇし痛ぇよ。容赦ないな、あいつは。やっぱ日本トップレベルの賞金首ってだけはあるな。』
男の仮面が少しずつ欠け落ちていった。金子さんも男にどんどん近づいてきていた。
「あれだけの攻撃を受けて平気そうだな。」
男は立ち上がると、仮面の左目の辺りまで欠け落ちて、左目がむき出し状態になった。
「形態変化でここまで追い込まれたのはお前が初めてだ。正直ここまで強いと思わなかった。」
「そりゃあどーも。俺も他のエージェントがやられているのを見て何も感じない人間じゃないんでな。」
「お前のその青い左目、新宿本部のやつらは皆アルファマインドを持っているのか? 揃いも揃ってまぁこんなにアルファマインドを持つ者を集めたもんだなぁ。俺にも少し……」
『ズドンッ!』
金子さんは一瞬で男の真下へ移動し、顎を思い切り蹴りあげた。その威力で仮面の口の部分も破壊された。
「ぐっ、マジでやばいなアイツ! 俺も対抗しねーと他のメンバーに申し訳ねぇ。」
男はそのまま空中で大きな翼を開き、地面へと着地した。
『おかしいな、俺の伝撃を食らって骨が折れないとはな。でも折れてる感触もある。何かの再生術か?』
「お前の身体、どうなってるんだ?」
「それ直接聞くか? やっぱお前馬鹿だな。」
すると、男の目が真っ黒に変色した。
『っ!? なんだあれは。目の色が変わった。アルファマインドと同種の能力か? いいや、でも黒い目なんて聞いたことないぞ。』
「どこを見ている!」
金子さんは右から蹴り飛ばされた。
『ぐっ、やはりそうか、アルファマインドと同様に攻撃力やスピードが飛躍的に向上するものだ。飛躍的というより爆発的に向上しているな。』
悪魔の男は右手を金子さんにかざした。
「煌呀。」
すると空から薄暗い色の高重力が降ってきて金子さんごと地面へと叩きつけられた。地面は30メートル程まで凹んだ。地響きの音で俺は目を覚ました。
「っ!? いったい、どうなってる……」
悪魔の男は凹んだ地面を覗きこんだ。だが、金子さんはいない。
「その形態でも背後を取られるのか!?」
金子さんは煌呀をまともに受けて身体はボロボロだった。だが、男の背後を取る事に成功していた。
「限界突破だぁ! 覇王拳!」
『ズドンッ!』
金子さんの覇王拳は周りの地面にはヒビが入り、木々を吹き飛ばし、地盤が歪み地震が起きる程だった。だが悪魔の男は右手でそれを止めてしまった。
『おいおいふざけんなよ。これを止めた奴は今までで誰一人として存在しなかった。それも片手で……』
男は金子さんの手を掴み地面へ叩きつけた。
「がはっ!」
右の拳で金子さんを殴りつけたが、ギリギリで回避した。
『流石にさっきのは焦ったな。アルファマインドで感じるが、俺の覇王拳を止めたあの右手に莫大な魔力というのか!? そんなものを感じた。』
「おい、生身の人間にそこまですることないだろ?」
「なんだ、弱音か? 負けを認めたような言い様だな。」
「ふんっ、確かに俺は負けを認めちまった。一撃で身体はボロボロ、力の差は歴然だ。アルファマインドの左目だけじゃお前は100%倒せない。左目を使った俺は、ちょっと骨が折れるかなぁ〜。」
金子さんの両目が青く輝きニヤリと笑った。
「久々だなぁー、これを使うの。全部が見えるよ。」
『明らかにアイツの意識や感情、自信などが伝わってくる。だが目に見えた能力ではない。派手な能力ではなさそうだな。』
悪魔の男はまたもや金子さんの背後に近づき思い切り足を横に振り、蹴り飛ばそうとした。だが、金子さんは見てもいないのに軽々しく頭を下げて避けた。
『さっきまで避けられなかったスピードを軽々と……』
金子さんは身体を捻り、頭上にある男の足を脇で挟んで回転しながら折り曲げた。
「おっと、こんな簡単に……」
男は折れ曲がった足を治した。
「こんな簡単に治せるぞ? そしてお前の目、何が見えているんだ?」
「俺の目に見えているもの? そんなの分かるだろ。排除しなきゃいけない悪だ。」
「なんだそれ。」
「おーい、今完全に決まったと思ったのに! 完璧な名言だったろーが!」
「ふざけた野郎だ。」
その瞬間男は動く素振りを見せた。金子さんはそれを見逃さなかった。
『左の大腿筋、脹ら脛、体幹筋の膨張により右に動く。この筋肉の膨張率からだと約0.62秒後に俺に到達、俺の左側から攻撃を仕掛けてくる。そして右手の拳を握る筋肉率、そのまま俺の顔面に右ストレートが来る!』
すると、金子は軽くしゃがみ男の右ストレートをかわした。そのまま右手に力を込め構えた。
『俺の攻撃が読まれているのか!? ここまで完璧にかわせるはずがない! その目の能力は一体……』
「腹ががら空きだぜ! 覇王拳!」
『ズドンッ!』
金子さんの力を伝える能力をまともにくらい、男は身体が真っ二つに切れて飛んでいった。また木々を吹き飛ばし地割れで軽い地震が起きた。俺は立ち上がるが、その振動でまた倒れた。
「なんだ、何が起きてる? っ!?」
前を見ると、上半身だけの男の姿があった。
「誰が……」
すると、前から金子さんが歩いてきた。そこに三井さんも合流した。
「金子さん、覇王拳を使うのは久々じゃないですか? 威力が強すぎて近づけませんでした。」
「確かに久々だな。あんまり使わないからな。でも流石に倒したろ! だって胴体ぶった切ったんだぞ!?」
2人は悪魔の男を見ると、上半身から血管が伸び、下半身に繋がると、そのまま引き寄せられ胴体が繋がった。
「え、まって、流石にキモすぎない? あいつ、自分の気持ち悪さに気づいてないよ。三井、教えてやれよ。」
「金子さん、何を言ってるんですか?」
男はすぐに立ち上がり、平然としていた。
「本当に呑気なヤツらだな。」
「おい三井、立ったよ……」
「見れば分かります。」
すると男は俺の存在に気づき、俺の所まで移動して前に立った。
「コイツの目だけでも!!」
男は俺の目に手を近づけてきた。俺は咄嗟に男の顔面に風伝波を放った。それが仮面に直撃し、仮面は全て割れてしまった。俺はその時、信じられないものを目にした。
「え……嘘だろ……なんで……」
「俺の事覚えててくれたのか? 嬉しいな。久しぶりだな、蓮。まさかお前が本当ににエージェントになってるとは思わなかったよ。」
「なんでだ! なんでこんなことしてんだよ!」
「んまぁ、色々あってな。俺はここまでの力を得た。逆に、俺の物を弾く能力、それで気づかなかったのか?」
『っ!? 確かにそうだ。高校の時、この能力を鮮明に覚えている。いや、忘れるわけない。俺はコイツが嫌いだったんだから!』
俺と男が話しているのを金子さんは不思議に見ていた。
「小原、そいつ知り合いか?」
「……はい……こいつは、高校の時の同級生、黒崎 拓也という男です!!」




