55話 男の行方
俺は自分の部屋にいて、渋谷の事件をテレビのライブ放送でみていた。そこに山ちゃんが帰ってきた。
「おい山ちゃん! 現場に行ってたんだろ?」
「ん? あぁ、でも何も出来なかった……」
「いや、テレビで見てたけど、あれば俺達じゃ太刀打ちできないよ。」
「ほんとに見ることしかできなかったんだ。自分の無力さを感じさせられたよ。」
「強くなる方法あるぞ。」
「経験あるのみだろ?」
「それはそうなんだけど、弟子入りするんだ。」
「弟子入り? 誰に。」
「俺はもうほとんど金子さんに弟子入りしたようなもんだ。金子さんはどう思ってるか分からないけどね。」
「じゃあ俺は特殊格闘部隊だから、花川隊長!? 無理だろ! そもそも、そんな簡単に会える人じゃない!」
「金子さんに聞いてみるよ!」
俺は金子さんの所へ行った。金子さんは花川さんと違ってすぐに会える。金子さんはテレビを見ながらコーヒーを飲んでいた。
「失礼します。」
「おぉ、小原! 渋谷の見てたか? 凄かったなぁ! 俺いたら死んでたよ!」
『ほらいた。なんで隊長なのにこんなに暇なんだ。あ、全部三井さんに任せてるから暇なのか。三井さん可哀想に。』
「で、なんだ? また俺に何か教わりにきたのか!?」
「いいえ、違います。」
「なんだ、ちょっと傷つく。」
「すみません、そんなつもりは……あの、花川さんの事なんですけど。」
『ブーーーッ!』
金子さんはびっくりして飲んでいたコーヒーを吹いた。
「な、な、なんだ?」
『この人すげー分かりやすいな。』
「自分の同部屋の人が花川さんの弟子になりたいということなんですけど、会える時間とか確認できませんか?」
「お、おう! 任せろ!」
金子さんは苦笑いをしていたが、どこか嬉しそうな感じも見受けられた。金子さんは守護警部会議でそのことを話そうとしていた。
「では、お願いします!」
俺は金子さんの部屋を出て、自分の部屋に戻った。
「山ちゃん! 金子さんが話ししてくれるって……」
山ちゃんはすでに部屋にはいなかった。
「あれ、いない。浴場にいるのかな。俺も明日から勤務開始だからそろそろ寝るか。」
俺は歯を磨き、電気を消して山ちゃんよりいち早く寝た。朝起きると山ちゃんはいなかった。
「あれ、山ちゃんいない。早く起きて出勤したのか?」
『ガチャ』
そこにドアが開くと山ちゃんが入ってきた。昨日の服のままだった。
「おい、なにしてたんだ?」
「あぁ、七魔神のメンバーの追跡任務に出てたんだ。言ったら夜間勤務だ。いやー、疲れたよ。」
「お疲れ。ぶっ通しじゃないか?」
「あぁ、俺と後藤は第一発見者として扱われているからね。後藤も一緒だった。しかも、全く情報が掴めない。」
「確かに、特殊な能力使うもんな。」
「蓮も会ったことあるのか?」
「あぁ、箱根に特訓に行った時に現れたんだ。もう1人男が現れたんだけど、2人とも強くて金子さんが居なかったらヤバかった。」
「なるほどな。ってかお前、今日から任務開始だろ? 行かなくていいのか?」
「あ、いっけね! じゃあ俺行くわ! お疲れ!」
俺は急いで部屋を飛び出した。本日の集合場所である第3演習場に着くと、もう既に皆着いていた。俺は速やかに1番後ろに着くと、三井さんが話しを始めた。
「本日の任務は七魔神、悪魔の仮面の男の捜査だ。最近の動向は気になる。やつは一般市民を巻き込みならがらもエージェントの首を取っていく。決して生かしてはいけないからな。各自分散して都内全域を捜索するように。」
「はい!」
「おい蓮。」
「おぉ、後藤!」
「俺たちは一応ツーマンセルのコンビだからな。一緒に動向を探るぞ。」
「ツーマンセルなの忘れてた! じゃあ俺たちはどうする? どこを探るか決めないと。」
「あいつは必ず室田署長の首を狙ってくる。新宿近辺を調べた方がいいな。特に本部周辺を重点的に調べるか。」
「そうだな。」
俺と後藤は本部周辺の新宿近辺の捜索を始めた。
「でも、相手はどこから出てくるか分からない。捜索してもあまり意味がない気がするんだけどな。」
「確かにな。でも、捜索しないよりかはマシだ。」
その頃悪魔の仮面の男は、捜索を始めた本部の動きを空から観察していた。
「昨日の今日でこれか。流石に動きが早いな。今この数のエージェントが外に出ているということは少しは数が減るから署長を狩りやすいな。狙うなら今日だ。」
悪魔の仮面の男は真っ暗な空間から出てきて地上へと着地した。周りにエージェントがいないか確認しながら本部へと近づいていった。
「本部の外装はこうなってるのか。防犯カメラに気おつかながら行くか。」
悪魔の仮面の男は防犯カメラに写らないようにカメラの上を飛びながら移動した。
「さて、まずは署長室を探すか。名古屋本部の構造上、新宿本部も中々複雑な構造になってるはずだ。ここから中が見えるかな?」
ガラスから本部の中を見渡すと本部の中にいたエージェントがこちらを見たので顔を背けた。
「おっと、あぶねぇ。いやー相変わらず新宿本部はデカイな。これじゃあ全くわからねぇな。」
すると、そこに総合格闘部隊のエージェントが一人見回りに来た。悪魔の仮面の男に気づき無線を手に取ったが、仮面の男は瞬時にエージェントの首を掴み地面に叩きつけた。
「ぐはっ! 貴様、こんなところにいたのか!」
「本部のエージェントがこんな弱くていいのか?」
『グシャ!』
仮面の男は無線を踏み潰した。
「なら俺とやり合うか? 結果は目に見えてるけどな!」
俺と後藤は悪魔の仮面の男の捜索に苦戦していて、新宿本部の屋上で周りを見渡していた。
「なんか見つかる気がしないな。」
「そうだな。気が抜けるっていうか、いるはずのない人を探してるって感じだな。」
その時俺は、特訓で偶然あみ出した探知技を思い出した。
「ここで試してみるか!」
「何をだ?」
「んまぁ、見てろって!」
俺は胡座をかいて目をつぶり、皮膚呼吸を意識した。呼吸を整え、風を感じる。
『よし、この感じだ。以前より風を集めるのが早くなったか? もう行ける気がする。』
俺は溜まった風の性質を一気に噴出した。
「おい蓮、何やってんだ?」
「風探知さ。俺が噴出した風が触れたものを感じ取ることができる。」
風は広範囲まで広がっていった。そして俺は何かに気づいた。
「ん!? 東の方向、誰かが戦っている? 何があったんだ?」
「行ってみるか?」
「あぁ。」
悪魔の仮面の男はエージェントの胸ぐらを掴んでいた。エージェントは既に血だらけで身体は動く気力すらなくなっていた。
「署長室はどこだ? 早く言え。」
「なんで……お前……なんかに……」
「そうか、言わないのか。残念だな、ここで人生が終わっちまうなんてよ。ただ言えばいいだけの話しなのによぉ。」
「…………」
「もぉ面倒だな。死ね。」
悪魔の仮面の男は右の拳を強く握りエージェントにぶつけようとすると、横に急に現れた男がいた。
『なんだこのスピードは……』
俺は右手に風を集め拳を振るった。
「てめぇ、何やってんだ!」
『スドーーンッ!』
攻撃は避けられてしまったが、その瞬間、後藤は血だらけのエージェントを救出することに成功した。
「大丈夫ですか?」
「なんとかな……すまない……」
後藤は安全な場所へとエージェントを移動させた。
「なんだ、会ったことあるような奴らばかりじゃないか。」
「覚えてくれ光栄だな。署長の首を狙いに来たのか。」
「お前、俺と一対一でいいのか?」
俺はアルファマインドを発動させ、身体中に風を貯めた。
「問題ないね!」
「てめぇ、その目!!」




