52話 デート
「そう言えば、今日はどこに行きたいとかあるの?」
「え、その、去年港区に出来た遊園地があるんだけど、そこがいいかなって……」
「そういえば出来たって誰かから聞いたな。よし、そこに行こう! コレ見て!」
俺は癒に車の鍵を見せた。
「それは?」
「金子さんの車の鍵だ! 昨日許可貰ったんだ! 後ろ凹んでるけど気にしないでな!」
俺と癒は金子さんの車に乗り込み遊園地に向かった。
『やべぇ。女の子と2人で遊園地かよ。しかも車で。学生の時はまあまあモテてたけど、実際付き合った子はいないんだよなぁ。』
俺は緊張し過ぎて車のナビを見るのを忘れていた。
「蓮、今のところ右だったよ?」
「あっ……」
道を間違え遠回りをしてしまったが、30分遅れて遊園地に無事到着した。
「いやー、本当にごめん!」
「いいんだよ、気にしないで。」
2人はチケットを買い園内に入っていった。
「うわーすげぇ! 久々の遊園地だ! そうだ、癒って絶叫系とか乗れるの?」
「乗れるけど、少し怖いかな。」
「じゃあ、ジェットコースターとか乗れるか?」
「大丈夫だよ。多分……」
「じゃあ行こうぜ!」
俺は癒の手をギュッと握りしめて前を歩いた。癒の目線からしたら俺の背中が見えていて、少し照れもあった。ジェットコースターを並んでいる時も俺は癒に何度も話しかけた。
「ジェットコースター楽しみだな!」
「うん。」
「いやー楽しみだな! いつぶりだろ、中学生ぶりか?」
癒は話しかけてくれる俺を見て、安心したのか笑みを浮かべていた。
「ん? どうしたんだ? 何か面白かった?」
「え、いいや! なんでもないよ!」
癒は顔を赤めた。それを見て俺も赤面してしまった。そして順番が回ってきた。
「楽しみだな!」
「うん。少し怖いけど。」
ジェットコースターが動き出すと、最初の上り坂に差し掛かった。どんどん上昇していく。
「うぉー高ぇー!」
癒は隣を見ると無邪気に景色を見渡す俺がいた。そして、頂上に達っした時の景色は、No.6と戦った時、俺が癒を抱きかかえて空へ飛んだ景色に似ていて思い出した。
『あの時、蓮や他の皆がいなかったら、私はどうなってたんだろう。死んでたのかな。昔はこんなに高いジェットコースターが苦手だったけど、蓮が隣なら全然恐くない。』
癒はそう思い、ジェットコースターが急降下する直前に俺の手を静かに握った。俺は少しビックリしたが、きっとジェットコースターが恐いんだと思っていた。
ジェットコースターが終わると癒は少し清々しい気分になっていた。
『どうしたんだろう。癒、気分良くなったのかな。』
すると癒はまた俺の手を握った。
「次は何乗る?」
癒が自分から積極的に話しかけてきた。いつもならあまりそういうことは無いが、癒の中では心がどんどん強くなっている。そこから2人は色々なアトラクションに乗った。
「次あれ乗ろ!」
「おぉい、ちょっと待てよ!」
癒はとても楽しそうだった。そこにあったのは今まで何度も救われたその笑顔。癒が笑顔でいてくれて俺は生きている実感が湧くというか、幸せな気持ちになる。
日が暮れて辺りが真っ暗になると、ライトアップされたイルミネーションが綺麗だった。
「うわーすげぇ!」
「綺麗だね。あ、そうだ、次あれ乗ろ?」
癒が指さしたのは観覧車だった。
「いいよ!」
『か、観覧車! 観覧車で男女2人きりってことはまさか……ついにこの時が……』
2人はチケットを買い観覧車に乗った。
「蓮、あそこ綺麗だよ!」
「あ、うん!」
『やべー、これって完全に告白ムードだよなぁ。どーしよ、何も考えて無かったよ。』
観覧車がもうすぐ頂上に達する時、癒がふと口を開いた。
「蓮、言ってなかったけど、私が連れ去られた時、助けに来てくれてありがとね。私これだけは伝えたかったんだ。」
「全然いいよ! ってか、助けに行くのが普通だろ?」
「あと、鳳君が亡くなった時も山本君と2人で励ましてくれてありがとう。凄い心強かった。」
俺は癒の心の内を初めて聞いた気がする。
「あの時、蓮が私のこと下の名前で叫んでくれた時、凄い力が湧いたっていうか、救われたというか、生きる希望をくれたんだよね。」
「いいや、生きる希望をくれたのは癒だよ。癒がいたから強くなれたし、癒が俺の生きる希望なのかもしれない。」
「…………」
「…………」
『何言ってんだ俺! 無意識に告白してんじゃん! やべぇって! 恋愛経験無いのが滲み出てるって!』
「じゃあ、改めて言うけど、私、蓮のこと好きだよ。」
俺は頭が真っ白になっていた。
「お、俺も……」
『ポチャンッ』
「ん?」
俺の真下に血が降ってきた。
「血? 上から降ってきたのか!?」
俺はふと上を見上げると天井があった。
『ど、どういうことだ。なんで血が降ってきたんだ。』
「蓮! その、あの、鼻血、出てるよ?」
「え?」
俺は鼻の下を触ると指に血が付いた。
『げっ! なんでこんな時に鼻血が! 全部ぶち壊した!』
すると、癒はティッシュを渡してくれた。
「マジごめんなぁ。」
『うわー、最悪だよ。俺が女だったらこんなの嫌だもんなぁ。あー終わった。』
「ちょっと待ってね。」
癒が俺の鼻に手を置いた。すると、鼻血がどんどん治まっていった。
『医療術か、癒って本当に凄いな。こんなに早く鼻血止めるなんて。』
「はい、これでいいかな。」
「ありがとう。」
そしてまたさっきのムードになった。
「癒、あの、俺!」
『ポチャンッ』
聞き覚えのある音が聞こえた。下を見ると血が一滴。まさかと思い鼻を触ると、血が付いていた。
「え、嘘でしょ?」
すると癒はクスクスと笑い始めた。
「もう、蓮!」
「ごめんごめん!」
癒はまたティッシュをくれて、医療術で鼻血を止めてくれた。そして自分の情けなさが身に染みた。
『情けねぇ……』
「蓮、また今度、2人でお出かけしようね。」
「お、おう!」
『え、待って、ってことはもう俺たち、付き合ってる!?』
そして観覧車が終わりそうな時、癒が突然立ち上がり俺にキスをした。
「約束だからね!」
癒は顔を赤くしながら不器用なりに自分の意志を伝えた。
「え、そ、え、まって、え、今、口に……」
俺は顔を赤く染め大量の鼻血を噴射した。
「蓮! 大丈夫!? 蓮!」
観覧車を降りると癒は全く別人のように変わっていた。
「じゃあ、帰ろうか。」
「お、おう。そうだな!」
俺は脳内お花畑だった。車に乗り、帰っていると癒は寝てしまった。そんな癒を見ていると、寝ながら一粒の涙流した。
『ん? 癒、どんな夢を見ているのかな。今まで辛いことがあったからな。』
俺は、自分が癒を守らないといけないと思った。そう思わざるを得なかった。本部に戻ると癒は少し悲しそうな顔で俺を見ていた。
「じゃあ、また今度。」
「そうだな。またいつかな!」
2人は自分の部屋に戻っていった。部屋に入ると思い切り服を引っ張られて部屋に入れられた。
「おい! どうだったんだよ!」
そこにいたのは山ちゃんと後藤、そしてなぜか金子さんもいた。
「おぉ、2人か、ってなんで金子さんまでいるんだ!」
「気になるんだよ! で、どうだったんだ!」
俺は顔を赤くした。
「あの、チ……」
「チ?」
「チ……」
「チ?」
「チューしちゃった!」
「チュー!?」
金子さんは鼻血を出し倒れ、山ちゃんと後藤は俺に問いただした。
「おい! なんでそうなった!」
「詳しく聞かせてもらおうか!」
「あーもー! 分かったよ!」
その夜は俺のデートの話しで盛り上がった。




