50話 自然の力
七魔神が動き始めた為、俺は金子さんと箱根旅行、いや、特訓することになった。特訓内容は地力性質の習得だ。だが、風の性質は地力性質をマスターするのに難易度が高く、1週間のうちの既に5日が経っていた。
「あぁぁー! だめだ、全然できねぇ!」
俺は疲れ果てて地面に寝転んだ。
「2日目なんか、今日中にやってやる〜なんて言ってたのに、全然出来てないじゃないか!」
「いや、1週間でマスターする方が難しいと思うんですけど。」
すると、金子さんのケータイに着信が入った。
「はい、金子です。はい。そうですか、それは残念です。分かりました。失礼します。」
「どうしたんですか?」
「名古屋本部署長の桐島署長が七魔神の1人に捕らえられたそうだ。」
その情報を聞き、俺は下を向きながら立ち上がった。
「強くなるしかないんですよね。」
「あぁ。」
俺は立ち上がりアルファマインドを発動した。
「ならグズグズしてられないですね。」
「じゃ、俺はまだ観光していない場所があるから1人で頑張ってなー。」
「よっしゃ! 今日こそやってやるぜ!」
金子さんはまた観光に行ってしまったと思われた。
「敵の気配がする。どうやら1人の様だな。どこかに隠れている。狙いはきっと小原のアルファマインドだ。危険が及ぶ前に探さないと。」
金子さんは敵の気配に気づいており、観光はせずに俺の周りの森を広範囲に渡って調べ始めた。そして俺は地力性質のコツを掴みつつあった。
「集中だ。皮膚から風を取り込むイメージで。」
すると、自分でも毛穴が開いているのが少し感じ取れた。
「この感覚……もっとだ。風を取り込め。」
その後も集中して風を取り込んだ。だが、だんだんと身体に違和感を覚え始めた。
「何だこの感じ。腕が破裂しそうだ。そうか、風を取り込むにも限界があるのか。」
俺は少しずつ取り込んだ為、暴発する事無く風の性質を限界値まで取り込むことに成功した。
「よし、ここから一気に放出! ストームモード!」
ストームモードを発動した途端、身体から考えられない量の風の性質が発現した。そのせいか、辺りの木々は吹き飛ばされた。
「す、すげぇ。これが地力性質か……」
その風圧は金子さんにも届いていた。
「あの位置は小原のいる場所だ。どうやら地力性質を暴発すること無く成功させたようだな。急展開だな。しかもこの威力、"やっぱり小原は格が違うな"。」
俺は地力性質にかなりの手応えを感じていた。
「前のNo.6とやり合った時より威力が強い。それに全然体力を使わないのが地力性質の1番良い点だ。これは本当にすごいぞ。」
すると、ストームモードが約3分程で弱まってきていた。
「いきなり放出し過ぎたな。最大質力での持続時間は約3分程か。早く決めたい時はいいけど、ここも改善できそうだな。」
その時、俺は気づいていなかったが、黒い影が俺に近づいてきていた。人間離れしたスピードでその影が俺に近づき、首を掴んで地面に叩きつけた。
「ぐはっ! だ、誰だ!」
俺の首を掴んだ者は虎の仮面を被っており、黒い服を着ていた。
「虎の仮面? お前、七魔神のメンバーか?」
「七魔神? あぁ、あの7人組の事か。俺はまた違う組織でな。お前を捕らえに来た。いや、お前というより、その"神の目"をな。」
「どういうことだ……」
「んまぁ、お前はここで死ぬから関係ねぇけどな!」
すると、仮面の男はナイフを取り出し俺の心臓に突きつけたが、その瞬間アルファマインドを発動し、ストームモードで男を吹き飛ばした。
「危なかった。マジで危なかった。」
「さっきの風圧はお前の能力だったのか。少し厄介そうだな。」
仮面の男はまた俺に近づいてきた。
「残念だけど、俺は遠距離型でもある! 風豪波!」
俺は風撃を飛ばすと、仮面の男は左手をかざし、風豪波を素手で受け止めた。
「お前馬鹿だな! 素手で止めるなんて、腕がぶっ壊れちまうぞ! 」
すると、風撃がどんどん小さくなってきている。
「何が起きてる!」
気づいたら風撃が無くなっていた。
「お前の全ての攻撃は効かん!」
仮面の男は左手を俺の方にかざすと、左手から風豪波が飛び出してきた。それも俺の放った風豪波よりも大きい風撃を。
「ぐあぁぁぁ!」
俺は木々を貫きながら吹き飛ばされた。
「くっそ……」
俺は立ち上がり小さな風撃を放つが、手をかざすとまた消えた。俺は倒れ込んでしまった。
「あいつ、俺の能力を吸収してるのか。」
「良い能力だろ? これで神の目は俺のものに……」
「小原ぁー。何かあったのか?」
仮面の男が俺に触れようとした瞬間、金子さんがそのに来た。
「ちっ、邪魔が入ったな。」
仮面の男は吸収した風撃を金子さん目掛けて飛ばし、金子さんも吹き飛ばされてしまった。
「なんだったんだアイツ。でもどこかで見たことあった顔だな。んまぁ、神の目さえ手に入れば関係ないがな。」
すると、金子さんの方から空気圧が飛んできた。
『ズコンッ!』
仮面の男は耐えきれず木々にぶつかりながら地面を這っていき、それにより仮面が割れてしまった。
「ぐっ、なんだ今のは。コイツと違って風の性質ではない何かが飛んできた。それも、力が弱まらずに俺のあばら骨を2本もってかれた。」
金子さんはゆっくりとこちらに歩いてきていた。
「なんだ、ここにいたのか。探すのに苦労したけど、結局直接小原を狙いに来るとはな。」
「そうか、お前、どおりで見たことある訳だ。お前は現新宿本部、総合格闘部隊隊長の金子 亮平じゃないか。ここで金がガッポリ入るな。」
「俺の首にも金がかかってるのか! 嬉しいねぇ! しかもその顔、七魔神に全滅させられた組織の生き残りか。そんなんで俺と小原の首を取るなんてふざけてるよね!」
すると男は一瞬で金子さんの前まで移動し回し蹴りをした。だが金子さんは右手で受け止めた。
「金子さんすげぇ。俺今何も見えなかった。」
「おいおい、こんなんだから七魔神にやられちゃうんだろ? しかも右腕が無いじゃないか。あと、その回し蹴りをした左足の骨、折っておいたから気をつけて!」
男の左足は確かに折れていた。
『なんなんだこいつ! シンプルに強い! こいつの攻撃をまともに食らったら無事じゃ済まない!』
「じゃあ、俺がお前を狩るよ。」
その瞬間、金子さんの左目は青く光った。




