5話 黄金の宿命
俺は衝撃の事実を告げられた。アルファマインドの持ち主だった。
「なんで自分がアルファマインドの能力があるって言えるんですか?自分自身、そんなことは感じたことありません。」
「じゃーお前はなんでエージェントに推薦で入れたと思う?お前は1度アルファマインドを使っているんだ。お前が推薦したエージェントは俺の先輩なんだ。その人からの強い推薦でな。」
俺はあの時の出来事を思い返していた。あの時俺は犯罪者を軽々しく投げ飛ばしていたのは偶然ではなくアルファマインドの能力だったということ。そしてあの時エージェントが俺の目を見ていたのはそういうことだった。
「そのエージェントは金子さんと言ってな、お前たちもいづれかはお世話になるだろうな。小原、金子さんにあったらお礼言っとけよな。一応言っておくが、金子さんは守護警部の1人だ。」
守護警部とは、総合格闘部隊、特殊格闘部隊、警剣部隊、特別守護部隊、エスパー部隊の各5部隊のリーダーだ。そして署長直々のエージェントで、署長に1番近い存在だ。まささそんな人と会っていたなんて、俺はあんな口調で反抗してとても失礼な事をしていたと思った。
「そして金子さんは言っていた。金の目を見つけたと。」
その時俺はエージェントの中でも特別な方なのかもしれないとも考えていた。そして不意に緊張感が走り鼓動が早くなっていたのも分かった。
「んまぁ少し話しが長くなったがそれだけだ。皆は明日に向けて早く就寝してくれ。あと、小原は残れ。」
皆が会議室から出ていくと颯爽と話を始めた。
「実はアルファマインドの金は希少性とかの話しではなく、世界に1人しか存在しないんだ。その目は次へ、また次へと継承されていると伝えられてきた。つまり、力だけがこの世界で生き続け他の誰かに転移する。その力はあまりに強大すぎて命を狙われやすいんだ。それも踏まえてお前をエージェントにしたんだ。だからお前は人一倍以上に頑張らないといけない。」
俺はそんな事言われても……とも思ったが、世界に1人しか存在しないという事もあり、確信的な特別感と共に動揺も隠せなかった。
「はい。頑張ります。」
俺はそう答えると、次の日から気合いを入れて練習に励んだ。毎日行われる組手でも、どんな能力が相手でも冷静な対応をし、勝率を着々と上げていった。そして1人のメンバーと組手をする事になった。
「次! 山本と小原!」
あの時アルファマインドの持ち主として呼ばれていた山本 諒だった。皆が俺たちの組手に視線を向けて注目していた。
「始め!」
それと同時に山本は即座にアルファマインドを発動。一瞬で消えた。
「どこだ!どこにいる!…上かっ!」
ギリギリで山本の殴打を避けられたが速すぎて目で追えていなかったのでほぼ勘だった。地面は陥没していて、食らっていれば致命傷な威力だった。
『これがアルファマインドか…。』
その後も素早く移動し、俺に攻撃を与えていく。連続攻撃だったので流石に避けきれず次々とダメージを受けていたが、地面の陥没から考えるとこの1発1発が手加減をしているのが目に見えて分かった。だが、普通の人に殴られているよりかは遥かに1発が重かった為、気が飛びそうだった。
「なぜアルファマインドを発動させない!」
山本がそう言ったが、俺は自らの意識で出すことはまだ出来なかった。というか、山本の攻撃で気絶寸前で返事すら出来なかった。と、その時。急に意識が戻り、身体が軽くなった。
『これは、あの時と同じ。自分自信に身の危険を感じた時が発動条件なのか!?』
俺はまだ自分の意思で発動できなかったので、きうちに立たされた時しか発動出来なかった。すると、なぜか山本の動きがそこまで早く感じずに目で追えるだけでなく身体でもその速さに対応できていた。
「やっと発動したか!」
自らでは見えないが、俺の左目は金色に輝いていた。俺は反撃をすべく山本に思い切り踏み込んだ。
「あれ!?」
俺はスピードが早すぎて山本を通り過ぎて奥の壁にぶつかってしまった。壁を突き破ってしまった。でもそこまで痛みは無かった。
「痛てててって、あれ、痛くない。おぉ!すげぇ!アルファマインドすげぇ!」
「大丈夫か!?」
翔と他の皆と指揮官エージェントが駆けつけてくれた。
「今の凄かったよ!」
「早くて見えなかったよ!」
「痛くなかった!?」
皆から色々声をかけてもらった。その時、エージェントとして組手ばかりやってきた相手が、初めて『仲間』と思えた。
「こうやって何回も無理やり発動させて慣れさせていけばアルファマインドの発動は楽になっていくんだ。」
山本が来てそう言った。山本は俺の為にやってくれた事だと思った。
「小原と、一緒に任務をするのが楽しみだよ。」
「俺もお前とエージェントやってくのが楽しみだ!」
山本ともすぐに打ち解けられた。山本は凄く真面目で正義感溢れる男だった。それにとてつもないイケメンというのがとても羨ましく思っていた。関係ないことだが。
「ちっ、くだらねぇな。」
そう言って立ち去ったのは後藤だった。後藤は皆とあまり仲良くしようとせず、相変わらず組手で相手に勝っては睨んでの繰り返しだった。あのエスパーの清水さんでさえ勝てなかったという。
「気を取り直して、続きやろうか!」
山本はそう言って嫌な空気を払拭してくれた。
「そうだな!」
と俺は言うも気が抜けてアルファマインドは停止していた。その日は実践での収穫が多く良い1日になった。そして、翔や山本と夕食を済ませた時、後藤が近寄ってきた。
「小原、少し話ししねぇか?」
俺は覚悟を決め後藤と二人で歩いていった。食堂の裏まで行くと後藤が言った。
「お前ムカつくんだよ。弱いくせにでしゃばりやがって。ってかなんでお前が金のアルファマインド持ちなんだよ。とことんイラつく奴だな。」
「んで、何が言いたいんだよ。」
「入寮から1年経った頃、寮を出て1人前のエージェントになる為の卒業試験ってのがある。それで配属先が決まるんだが……そこで俺と勝負して負けたらエージェントを辞めろ。」
「……分かった。」
なんで俺が、とも思わず俺は返事をした。これが金のアルファマインドを持つ者の宿命であり、人生だと思ったからだった。






