48話 楽しい旅行?
俺は本部内ロビーのベンチに下を向きながら座っていると、そこへ金子さんが来てくれた。
「おい、小原! ん? なんだ、まだ落ち込んでいるのか?」
「いいえ、少し考え事を……」
「強くなるしかないぞ。俺も今まで何人もの仲間を失った。でも、自分自身が立ち止まったら、天国で見てる仲間達が良い気分じゃないぞ?」
俺はこの言葉を聞き、少し前向きになれた気がした。
「でも、どうやって強くなるんですか?」
すると、金子さんはポケットから2枚のチケットを出した。
「なんですか? それ。」
「旅行チケットだ! 俺と一緒に旅行へ行こう!」
「えぇぇぇ! 金子さんと2人!? 」
「なんだ? 嫌なのか?」
「いや、嫌というか、なんというか、気まずいというか……」
金子さんは俺に肩を組んだ。
「なんだよ、そんな事気にしてたのか! 同じ部隊の仲じゃないか!別にいいだろ!」
『ただの隊員と隊長の仲ってこんなだったかな……』
「じゃあ早速、明日から行こうなぁ!」
「ちょっと待ってください。場所はどこですか?」
「俺が1度は行ってみたかった場所、箱根さ!」
「箱根!? マジな旅行ですか!? さっきの強くなるとかの話しは無くなったんですか!?」
「いいや、箱根で特訓だ! なんと期間は……」
「……」
「1週間だ!」
「い、1週間……長い……」
「ということで、車で行くから明日の朝6時に本部の従業員用駐車場に集合な!」
「分かりました。」
そう言うと金子さんは走ってどこかへ行ってしまった。俺は金子さんと2人で旅行だなんて、少し楽しみではあるが、考えるだけ気持ちが悪かった。俺は部屋に帰り旅行の支度をすると、山ちゃんが入ってきた。
「山ちゃん、勤務終わったのか?」
「ん? あぁ、終わった。」
山ちゃんは鳳が死んでから少し元気が無いようにも感じた。
「蓮、何してるんだ?」
「あぁ、明日から金子さんと特訓旅行に行くんだよ。なんか誘われてさ。」
「そうか、頑張っれよ。俺も頑張んないとな。」
そう言って山ちゃんは部屋を出ていってしまった。荷造りを済ませ、時刻は翌日の朝6時。季節は冬で、朝6時はまだ少し暗い。吐く息は白く周りを見渡すと霜が降りていた。俺は集合場所である従業員用駐車場に行ったが、金子さんの姿は見られない。
〜30分後〜
「おーい! 小原! 待ったか!」
「はい30分待ちました。」
「よし、じゃあ行こうか!」
「ちょっと待って下さい30分遅刻の事は!?」
俺は金子さんの車に乗り新宿警察署から箱根に向かった。すると、金子さんは運転しながらハンドルを握りしめブルブル震えていた。
「か、金子さん? そんなに寒いですか?」
「いや違う。俺な、実はそんなに運転した事ないんだ……」
「まさか、運転するのが怖いんですか?」
「恥ずかしながらに……」
「ちょっと! あと少しで高速入りますよ! そんな状況で高速入ったら、自分この車乗れません!」
「行くしない!」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」
結構俺が運転する事になった。俺は大学で運転免許を取得していた。金子さんは助手席に乗り寛いでいた。
「金子さん。さっきと全然違うじゃないですか。」
「ん? 何が? 俺はいつでも気楽さ!」
すると金子さんは音楽を聴き始め、大きな声で歌った。そしてその後すぐに寝てしまった。
「あーもー! なんなんだこの人は!」
箱根へ着くと、金子さんは車を出て大きく伸びをした。
「ふぅー。よく寝た!」
「30分遅刻したくせによく隣で寝れましたね!」
「あれ、そうだったっけ? よし、行こうか!」
俺は空いた口が塞がらなかった。まずはチェックインするために旅館へ行った。辺りは自然に溢れていてとても良い場所だった。金子さんは深呼吸した。
「とても良い場所だね。小原にピッタリだな。」
「ピッタリ?」
「これから分かるさ。」
旅館でチェックインを済ませて部屋へ向かった。
「綺麗な部屋だなぁ。んまぁ、そんな事はさておき、荷物を置いて早速外で特訓を開始するか!」
「はい!」
俺と金子さんは外へ出て森の中へ入っていった。
「よし、ここら辺でいいかな。」
「何をするんですか?」
「今回は地力性質についてだ!」
「地力性質?」
「お前、性質を使う時に身体の中にある性質しか使ってないだろ?」
「どういうことですか?」
「本来なら、性質は自分の身体から出すんだが、地力性質は自然の力を借りるんだ。例えば、火の性質を使う人は、そこに火があればその分の火を体力の消費を抑えられるんだ。」
「???」
「簡単に言うとだな、花火やったことあるか?」
「はい、あります。」
「火を付けるのが面倒で隣の人から火を貰ったりするだろ? それと同じだ! ん? ちょっと違うかな? んまぁーとりあえず低コストで性質が出せるわけだ! 水や氷は、近くに水があれば出来る。」
「じゃあ風はどうなるんですか?」
「この自然さ!」
「いや、それは分かりますけど、風を集めるって難しくないですか? 火や水は目に見えるし触ることができます。でも風は無理じゃないですか?」
「確かに風は難しいが、コツさえ覚えれば出来る!」
「そのコツってなんですか?」
「皮膚呼吸さ! 皮膚呼吸で風を集めるんだ。」
「いやいや、それは無理がありますよ!」
「普段から皮膚呼吸を意識してやるんだ。いつもと逆の事をすればいいだけだろ? いつもは風を放出するが、風を吸収するだけだ。簡単だろ?」
「言うのは簡単ですよ!」
「とりあえず小原は練習してくれ! 俺は風の性質じゃないからコツは知らん! だから俺は観光してくるな! じゃあなぁー!」
「え、なにそれ! よく分からないんですけど!」
金子さんは本当に観光に行ってしまった。
「くっそぉ! もうやるしかねぇ! 」
俺はそこから言われた通りに皮膚呼吸を意識して地力性質の特訓をしたが、コツどころかどうすればいいか分からない。昼を過ぎ辺りは少しずつ暗くなりはじめていた。
「ダメだ、出来ない。しかも腹減った……」
俺は疲れ果てて地面に寝転んだ。
「地力性質が出来れば、No.6相手に発動したストームモードが楽にできるな。あれは体力をめちゃくちゃ使うから地力性質を使わないとな。あーもーどうしたらいいんだよ!」
「なんだ、まだ出来てないのか?」
そこへ金子さんがお土産を持って帰ってきた。
「金子さん! どこ行ってたんですか!」
「いやーそれがさぁ、色々道に迷っちゃってさぁ。あ、そうだ、はいこれ、腹減ったろ? お弁当!」
俺は金子さんから袋を渡された。
「うぉ! ありがとうございます! ってこれ、コンビニ弁当ですよね?」
「うん、そうだけど。」
「なんですかね、もうちょい箱根っぽいものがいいって言うか、んまぁ、ありがとうございます。いただきます!」
俺は空腹だったのでコンビニ弁当を頬張った。
「この調子だと、まだ地力性質は出来ていないみたいだね。」
「金子さんは地力性質は使わないんですか?」
「前も言った通り、俺は特異体質で力を伝える能力だ。火や水や、小原の様な風とは違くて自然には無いんだ。もしかしたら何かしらで出来るかもしれない。でも、俺は発動するのにそこまでの体力は使わないから地力性質は必要ないけどね。とりあえず、日も暮れてきたし旅館へ戻ろう。」
俺と金子さんは旅館へ戻り、温泉に浸かった。
「はぁーー」
「はぁーー」
「疲れが取れる、最高だな。」
「金子さんは今日観光してただけですよね。」
「お、そうだ。地力性質は色んな所で使えるんだ。特に風はな。自由自在にコントロール出来るとこういう温泉も身体から出した風でコントロール出来るんだ。それは風の性質だけの特権だ。あ、ちなみに身体から出した性質を自力性質って言うんだ。」
「なんで風だけなんですか?」
「水で火の地力性質を操ろうとすると打ち消しあうだろ? でも風は水をも操れるし、火なんか相性抜群だ。」
「おぉ、すげぇ風属性!」
「んまぁ、俺の能力もこんな風に水を操れるけどな!」
金子さんは俺に向かって水中で拳を振るうと、激しい水圧が俺に押し寄せてきた。俺は温泉の湯船からほおり出された。
「あ……ごめん……」
2人は温泉を出ると豪華な食事が部屋に並んでいた。
「うわぁ、いただきます!」
「明日は1日俺も着いているからな。覚悟しておけよ。」
「そっちの方がいいです! よろしくお願いします!」
2人は食事を終え、明日の特訓に向けて就寝した。翌日、朝から森の中で特訓を始めた。
「よし、今日中にやってやるぜ!」




